You're My Only Shinin' Star (307) 調査 1 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。


マスコミに発表されたヘジンの証言によると、レストランでテギョンと二人で食事をし、酔ったヘジンをテギョンがホテルまで送ったことになっている。ヘジンの言っていることがウソだと証明する為、その時の状況を従業員の誰かが教えてくれればと、ミニョはレストランへやって来た。

どこへ行っても目立つテギョン。ミニョの知りたい情報はすぐに手に入ると思っていたが、応対に出た支配人は渋い顔を見せた。

ここはもともと芸能人がよく利用している店だった。しかし特にそのことを売りにはしておらず、逆にお客様のプライベートですからとどの席にいたのかすら教えてもらえない。

支配人の無愛想な態度には理由があった。

二人の様子について聞き出そうとマスコミが連日のように押しかけ、店としては迷惑していた。今しがたも不躾な質問をする記者を追い払ったばかりで、そんな時に来てテギョンのことを聞いたミニョに対し、支配人はあからさまに不機嫌な表情を見せると、お帰りくださいとミニョを店から追い出した。

支配人の手がミニョの肩を押す。


「きゃっ。」


靴が段差に引っかかり、バランスを崩したミニョの身体は崩れるように石畳に接近し、膝をついた。転んだミニョを目の前にし、助けようと手を差し伸べるでもなくそのまま踵を返して店の中へ入ろうとする支配人の背中に、強い言葉が投げかけられる。


「ずいぶん乱暴ね、客に暴力をふるう店なんて噂が立ったら、困るんじゃない。」


振り向いた支配人の視線の先にいたのはこの店の常連客であるユ・ヘイ。威嚇するように腕を高い位置で組んでいたヘイは、赤いハイヒールの踵を小気味よく鳴らしながら近づいてきた。


「ヘイさん、どうしてここに?」


「ミナムに頼まれたのよ、ミニョ一人じゃ追い返されるのが目に見えてるから手を貸してやってくれって。私はテギョンに恩を売るつもりで来たんだけど。」


「お兄ちゃんが・・・」


病院で話をした時は、「ふうん・・・」とほとんど無反応だったのにこうして助けてくれる兄に、ミニョはお兄ちゃんらしいとくすりと笑った。


「あの、ユ・ヘイ様のお知り合いの方・・・ですか?」


突然現れたヘイに驚き揺れる支配人の視線がヘイからミニョへ移る。


「・・・・・・妹みたいなもんよ。」


ミニョを見て微かに笑みを浮かべるヘイの姿に、ピンと背筋を伸ばした支配人は、失礼しましたとミニョに向かって深々と頭を下げた。






ヘイの登場に支配人の態度は一変し、ミニョはテギョンが食事をした個室へと案内された。その後、その時のことは従業員の方が詳しいと何人かの従業員が部屋へ呼ばれた。

いつもなら芸能人であろうと一般人であろうとお客様のことを口外してはいけないと言われているが、今はそれが許される。許可が出たからか、もともと誰かに話したくてうずうずしていたのか、ヘイを目の前にし初めは緊張した面持ちだった女性従業員たちの口は次第に緩んでいき、いつしかまるでそこがロッカールームであるかのようにくだけた口調になっていった。

彼女たちの話によると、先に来たのはヘジン。そこへ二、三十分遅れてテギョンが来たという。


「週刊誌に書かれてるような甘い感じじゃなかったよね。」


「テギョンさん機嫌悪そうだった。」


「食事もほとんど手をつけてなかったし、ワイン飲んでたのもヘジンさんだけみたいだったよね。」


「テギョンさんにお水が欲しいって言われて、私運んでったよ。」


彼女たちはあの日のことを口々に話す。


「酔ったヘジンさんをテギョンさんが送ってったって聞いたんですけど、帰る時、二人の様子ってどんな感じでした?」


ミニョの言葉に女性従業員たちは一瞬顔を見合わせ、揃って首を傾げた。


「帰るとこ、見てないんです。いつの間にか姿が消えてて。」


「ここって特別なお客様用に、正面とは別に出入り口があるんです。私たちが知らない間にそこから帰ったとしか・・・」


う~ん・・・と思案顔の女性従業員の後ろでガタンと椅子が大きく鳴った。音を立てたのは若い男性従業員。女性従業員の後ろで一人静かに座っていた彼は、自分が話すのは今だ!と言わんばかりに勢いよく立ち上がり、その拍子に椅子を倒した。

彼は一気に注目を浴びたのと椅子を倒してしまったことが恥ずかしかったのか、赤い顔で椅子を直すと気を取り直すように短い咳払いをした。


「俺、知ってます、ヘジンさんに声かけられました。裏に車を回したんだけど、テギョンさんが酔いつぶれて動かせないから手を貸して欲しいって。」


「テギョンが酔いつぶれた?」


アルコールにはかなり強いテギョン。酔いつぶれるまで飲むにはよほど強い酒か、かなりの量が必要になる筈。しかし先程の女性従業員の話ではテギョンはほとんど・・・または全くワインを飲んでいない。

ヘイに疑惑の眼差しを向けられた男性従業員はその迫力にたじろぎながら、「でも・・・」と話を続けた。


「テギョンさんテーブルに伏せて寝ちゃってたんで、俺がおぶって外の車まで運んだんですけど・・・テギョンさんからは全然アルコールの匂い、しなかったんです。酔ってるって感じじゃなかったですね。」


ミニョとヘイが視線を合わせた。

これは酒は飲んでないというテギョンの言葉が証明されたことになるのではないか。そして同時に、酔ったヘジンをテギョンが送ったというヘジンの言葉がウソだったということになる。

ミニョは立ち上がると大きく頭を下げた。




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