ずっと前から好きだった | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

番外編です。

今回のお話は本編からこぼれ落ちてしまったエピソード・・・どこに入れよう、どこに入れようと悩んでいる間にタイミングを逸してしまったものです。本編の21話前後ということで・・・


     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆


「おはようございま~す。」


ミナムの元気な声が撮影スタジオにこだまする。ヘイと同じドラマに出演することが多くなったミナム。

皆に挨拶を済ませると隅の方で椅子に座り台本を開いているヘイのところへ向かった。


「ヘイさんおはようございます。」


ヘイの前でニッコリ笑って軽く頭を下げると近くにあった椅子をガタガタと動かし、背もたれに腕を乗せるように反対向きにし、跨るように座った。


「ねぇ、ヘイさん、今度一緒にどっか出かけようよ。」


腕の上に顎を乗せ、ニコニコと笑ってヘイを見ているミナムを、ヘイは台本を読むフリをしてチラチラと見る。


「ミナム、あんたってホントに変わってるわよね。私があんたの妹いじめてたって知ってるんでしょ。」


「まあね、ジェルミからちょこっとだけ聞いた。」


「だったら何で私につきまとうのよ・・・怒ってないの?」


「前にも言っただろ、気にしてないって。・・・それに、俺、ヘイさんのこと好きだから。」


じっとヘイの方を見ながらサラッと言うミナム。ヘイは少し赤くなった顔を台本で隠した。


「空港で初めて会って、すぐに私に声かけて来たわよね。何?私に一目惚れでもした?」


「ん~、一目惚れじゃないな・・・それに空港であったのが初めてじゃないし。俺はずっと前からヘイさんのこと好きだった。」


「私は知らないわよ。あんたに会ったのはあの時が初めてなんだから。」


「憶えてない?・・・って、別にあの頃は話もしたことないもんな、俺が勝手に見てただけ・・・知りたい?俺がいつからヘイさんのこと好きだったか。」


ミナムはヘイの方を見ながらフッと口元を緩めた。




「俺は三年前に練習生になった時、マ室長に勉強の為とか言って何度もスタジオに連れていかれたんだ。スタッフに混ざって雑用やらされた。マ室長は出演者、マネージャー、スタッフ達の人間関係を観察する為だって言ってたけど、人手不足だって聞いたマ室長が、ADに頼まれて俺達を使ってただけみたい。そのことは後で知ったんだけどね・・・

その時はそんな裏事情なんて知らないから、言われた通り一生懸命周りの人達を見てた。そこで初めてヘイさんを見たんだ。テレビでは見たことあったけど、目の前で見たのは初めてだった。

みんなの妖精って言われて、スタッフ皆から笑顔で迎えられ、ちやほやされてる姿。

共演者、スタッフ、どんな相手にもニコニコ笑顔で話してる姿。

俺が最初に見たヘイさんは、そんな姿だった。

次に見たのは、共演者に嫌味を言われながらも笑顔を見せるヘイさん。

その後偶然機材置き場の片隅で悪態ついてる姿を見た時には、あまりのギャップに驚いて思わず笑っちゃった。・・・それから何だか気になり始めた。今思うと、あの時もう俺はヘイさんのこと好きになってたんだと思う。

俺達は色んなスタジオに連れて行かれたけど、ヘイさんが同じ建物の中にいるって判った時は、俺は必ず機材置き場をチェックするようになったんだ。

時々ヘイさんの姿が見られた。物陰に隠れて悪態ついたり、周りの物蹴飛ばしたり・・・見ていて面白かった。それから一度だけ、泣いてる姿も見た・・・


周りを観察してると、ヘイさんの悪口を言ってる人が何人もいた。ヘイさんが共演者に、自分より目立ってたと嫌味を言ってたとか、衣装に文句つけてたとか、カメラに映ってる時は笑顔だけど、撮影が終わると凄く不機嫌になるとか・・・。でもそれって変かな?芸能界で生き残っていく為には、それくらいの自己主張は必要だろうし、人間誰だって、二面性を持ってるものじゃない?いつもいい顔なんてできないよ。そんな当たり前のことを批判してる奴らが俺には信じられなかった。

そんな奴ら相手にヘイさんが傷ついてると思うと、腹が立った。

優しいと思ったら悪態ついたり、親切だと思ったら物を蹴飛ばしたり、笑ってると思ったら陰で泣いてたり・・・そういう色んな面を持ってるヘイさんに凄く魅かれた。


俺達が雑用やらされたのは半年くらいだったから、その後はヘイさんを見る機会もなくなって残念だったけど、A.N.JELLに選ばれてまた会えるチャンスが出来た。今度は同じ芸能人として会えると思ったら凄く嬉しかった。絶対に他の男よりも一番近くにいたいと思った。俺が空港で服を脱がされた時、ヘイさんがいて驚いたよ。飾らない、素のヘイさんを見せてくれたことが凄く嬉しかった。


ミニョのこと気にしてないって言ったのはホントだよ。だってヘイさんテギョンヒョンが好きで、テギョンヒョンを手に入れたくて、ミニョにとられたくなくて意地悪してたんだろ?それって別に、特別なことじゃないし、ただ自分に正直だっただけじゃないか。正直な気持ちが、ああいう行動に繋がっただけ。俺の正直な行動は、ヘイさんにつきまとうこと。

どう?ヘイさん。俺って三年も前からずっと好きだったんだよ。」


ミナムは台本で顔を隠したままのヘイを見つめ、ニッコリと笑った。

ずっと黙ったままミナムの話を聞いていたヘイは、バッグの中から一通の封筒をミナムへ差し出す。


「へぇ~、ヘイさんって、意外と古風なんだね。俺にラブレター?」


「バカ!違うわよ!」


慌てて否定するヘイ。


「それは・・・あんたの妹に・・・」


「ええ~っ!ヘイさんって好きな子に意地悪しちゃうタイプ?ヘイさんが好きなのって、テギョンヒョンじゃなくてミニョ?ミニョにラブレター?」


「違うって!!」


ミナムは怒ったように否定するヘイをみてクスクス笑い出した。


「あんたの妹って携帯置いてったんでしょう。遣り取りは手紙だってこの前言ってたじゃない、だから・・・こうでもしないと・・・謝れないじゃない・・・。あんたが手紙出す時でいいから・・・一緒に出してよ・・・」


気まずそうに俯きながらミナムへ手紙を渡す。ミナムは封筒を目の前でひらひらとさせると、ヘイの方を見た。


「俺の告白に対する返事がコレってのは寂しいけど・・・ま、いっか。俺は手紙出さないから、俺の代わりに出しておくよ。」


「あんた妹に手紙も出さないの?」


「他の奴が出すからいいんじゃない?テギョンヒョンなんか仕事のことばっかり書いてるみたいだけど・・・手紙って言うより、活動報告書だね。」


ミナムの言葉にヘイが呆れていると、撮影が始まるからとヘイを呼ぶ声が聞こえた。


「ほら、ヘイさん始まるって。」


「判ってるわよ・・・あんたは?また帰るの?」


今日はミナムの撮影はない筈。この間撮影現場に来た時は、ジェルミに呼ばれ帰って行った。今日は・・・


「今日はヘイさんに会いに来たんだからこのままここにいるよ。言っただろ、俺はつきまとうって。」


ニヤリと笑うミナムにヘイは椅子から立ち上がるとチラリと視線を向ける。


「あんた私を買い被り過ぎてるんじゃない?でも、まあ・・・そんなに言うなら・・・しょうがないわね・・・買い物の荷物持ちなら・・・ついて来てもいいわよ・・・」


ぶっきら棒に言いながらセットの方へ歩いていくヘイの後ろ姿を見ながら、ミナムは満面の笑みを浮かべた。




     *     *     *     *     *     *     *



番外編ということで、オチを期待していた方・・・残念でした。このお話にオチはありません。


ただ単に、うちのミナムはずっと前からヘイのことが好きだったんだよ~というのが書きたかっただけです。

何か説明っぽい話になってしまったけど、今さら三年前を再現する訳にもいかず・・・

今回のお話はミナムが過去の話をしているので、自然にミナムのモノローグ的なものになってしまいました。
本編41話のシヌとの会話で、よく見てるなと言われたミナムが、「シヌヒョン程じゃないよ。俺はヘイさんと、A.N.JELLと・・・時々ミニョかな。」と言ってますが、実は三年も前から見てたんですね。



昨夜、夜中の12時のお知らせにも拘らず、ふと気が付くと、ペタペタペタペタ・・・とたくさんのペタが。

皆さん寝るの何時?と思いながら自分も起きてたんですけどね。

沢山の方が待っていて下さったんだなぁと、凄く嬉しかったです。

ありがとうございました。



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