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Super Elastic ! Super Optimistic !

中央大学ロースクール生が新司法試験合格を目指すブログ。10回受験して、10回合格する力をつけることが目標!

 主観的な出来はまずまず。
 分量は、4ページいっぱい。

 懲戒処分の合理的理由の判断において、年休権の論点を書くべきか、迷いました。
 しかし、①端的に、懲戒処分の適否では企業秩序維持義務違反を認定するべきであること、②設問では、別に年休権の行使について問われていることから、一応、両者を区別して解答しました。
 90%条項については、本来なら労基法24条1項は問題とならないはず(具体的請求権は発生していない)と気付きましたが、現場では、落ち着いて修正することができませんでした。
 全体的には基本的な問題だったと思います。





労働法 第1問 

第1 けん責処分の適法性
1 Y社は、Xをけん責処分に付している。当該懲戒処分は、労働契約法(以下、「労契法」とする。)15条に反し、違法ではないか。
 2 まず、使用者には、企業秩序の維持のために、企業秩序侵犯に対する制裁罰を加える権限が認められる。
   ここで、罪刑法定主義の観点から、「できる場合」(労契法15条)とは、就業規則等に明確な規定がおかれていることを指すと考える。
   本件では、就業規則に懲戒をなす旨の定めがあるため「できる場合」を満たす。
 3 次に、「客観的に合理的な理由」が認められるか。具体的には。企業秩序の侵犯があるかが問題となる。
   本件では、後述するように、適法な年休権の行使がなされていないにも拘わらず、Xは無断欠席をしている。
   また、Y社は他社に先んじて、B社との新築マンションのインテリアデザイン設計の案件につき、交渉を続けてきた経緯がある。そして、Y社では、設計担当として10年以上勤務していた正社員が転職してしまい、設計に精通した社員はXしか存在しない状況であった(新卒採用のAは十分な実務経験がなかった)。このような状況の中で、XがB社との交渉の重要な時期である最終段階(9月15日から30日)に欠勤することで、前記案件を発注できなかったものである。
   たしかに、Xは人材の補充をY社に求めていたものの、適切な人材がいなかったためにY社の対応が遅れたものであり、この事情はXの帰責性を低減させるものではない。
   よって、Xの無断欠席はY社の企業秩序を犯すもので、「客観的に合理的な理由」は認められる。
 4 最後に、「社会通念上相当であること」を満たすか。
   本件では、Y社は、Xの年休権の時季指定に対して、同年10月中に相当する年次有給休暇を取得するように取りはからう旨述べており、代替措置を講じている。
   さらに、けん責処分は、注意をうながす性質のもので、減給等の不利益を生じさせないため、労働者に与える打撃も比較的小さいといえる。
   よって、「社会通念上相当であること」の要件を満たす。
 5 したがって、本件けん責処分は懲戒権乱用法理に反せず、有効である。
第2 10日分の賃金の控除の適法性
 1 本件では、9月15日から30日を対象とするXからの年次有給休暇(以下、「年休」とする)の時季指定に対して、Yは、これを承認していない。
   このような時季変更権の行使が適法か。
2(1)そもそも、年休権(労働基準法(以下、「労基法」とする。)39条)の行使に労働者の「請求」を要するか。年休権の法的性質が問題となる。
     この点,労基法は、年休権の発生(39条1項、2項)と行使方法(同5項、6項)を別個に定めている。
また、使用者には時季変更権が認められており、年休取得に使用者の承諾を要する実益もない。
そうすると,年休権は39条1項2項の要件を満たせば法律上当然に発生すると考える。
(2)そして、Yの時季変更権は適法といえるか。「事業の正当な運営を妨げる場合」(労基法39条5項ただし書)の意義が問題となる。
この点,年休権は労基法が特別に認めた権利であり,その実効性を確保するために付加金および刑罰の制度が設けられている(労基法114条,119条1項)。また,休暇の時期の選択権が第一次的に労働者に与えられている。
そうすると,使用者は可能な限り,労働者が指定した時期に休暇を取れるように配慮をすべきであるといえる。
よって,「事業の正常な運営を妨げる場合」とは,①当該労働者の年休取得日の労働がその者の担当業務を含む相当な単位の業務の運営にとって必要不可欠であり、②代替要員を確保することが困難であることをいうと考える。
  本件では、①前述のように、Xが9月15日から30日の期間につき、休暇とることで、B社との交渉の最終段階に、インテリアデザインについての実務経験を有する社員が欠けることになる。これにより、Bからの案件が受注できず、Yに得られるはずであった利益が得られないという結果を生じる。そうすると、上記期間におけるXの労働は、インテリアデザインを担当する部門にとって必要不可欠であったといえる。
  また、②Yのインテリアデザイン部門には、X以外には、平成23年4月にデザイン学校を卒業し、採用されたばかりの実務経験の乏しいAがいるのみで、Bとの交渉にあたる代替要員は存在しない。
  よって、①②を満たすため、Yの時季変更権は適法に行使されたといえる。
 3 したがって、本件賃金控除はノーワーク・ノーペイの原則(民法623条、労契法6条)通りの扱いであり、適法である。
第3 賞与の全額不支給の適法性
 1 本件では、対象期間(5月の初勤務日から10月の最終勤務日まで)について90%の出勤率を満たさない者について賞与を全額支給しない旨の就業規則がある。
   当該規定は、賃金全額払いの原則(労基法24条1項)ないし、公序(民法90条)に反し違法・無効ではないか。
 2(1)まず、賞与については、恩恵的給付にすぎない場合は賃金とはいえないが,支給基準が定められていて,使用者に支払義務が認められる場合には,賃金と認められる。
そして、賞与は,賃金の後払的性格を有すると共に,意欲向上策としての機能を有する。
 (2)次に、賞与の支給基準を出勤率が90%以上の者とし,産前産後休業した日数は欠勤として取扱うことは適法か。
    この点、産休期間について法は特に有給であることを保障していないから,不就労期間を出勤として扱うかどうかは原則として労使間の合意に委ねられている。
    そして、出勤率の低下防止のための措置には一定の経済的合理性が認められる。
しかし、①労働者が失う経済的利益の程度、②産前産後休業の取得に対する事実上の抑止力の程度を考慮して,産前産後休業を取得する権利を抑制し,労基法等が上記権利を保障した趣旨を実質的に失わせる場合に限り,公序に反して無効となると考える。
本件では,①従業員の年間総収入額に占める賞与の比重は月額基本給の3カ月分と相当大きいので,賞与が支給されない者の受ける経済的不利益は大きい。
また、②本件90%条項において基準とされている90%という出勤率の数値からすれば,従業員が産前産後休業を取得すれば賞与の支給を受けられなくなる可能性が高い。
具体的には、所定労働日の124日のうち、112日以上の出勤が支給要件となるため、労働者は賞与支給を受けるためには、わずか12日以内の育児休暇をとれるにすぎない。
よって、産前産後休業をとる権利の行使に対する事実上の抑止力は相当強い。
    そうすると,産前産後休業を欠勤扱いにしたことは,産前産後休業を取る権利を抑制し,労基法が労働者にこのような権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものといえるので,公序に反する。
したがって,出勤率90%を算定するにあたり,産前産後休業を欠勤扱いとする規定は無効である。
 3 以上より、本件就業規則は、無効となり、YにはXに対する賞与支払義務が生じる。
第4 欠勤日数
 1 本件では、育児休業及び年休期間も欠勤扱いとする就業規則が存在する。
   このような就業規則は労基法に反し無効ではないか。
 2 まず、育児休業期間(合計43日)については、前述の通り、法は無給とすることを認容しているといえるから、欠勤扱いとすることは労基法に反するとはいえない。
 3 また、Xが、年休として適法に取得していない9月15日から30日の期間については、無断欠勤として、欠勤日数に含むことも問題がない。
 4 では、Xが適法に年休権を行使した9月1日から14日の期間についてはどうか。
   この点、労基法39条の趣旨は、労働者を労働から解放させることで、最低限度の文化的な生活を営めるようにする点にある。  
   そうすると、適法に取得された年休期間を賞与算定において不利益に扱うことは、年休権の行使を阻害するもので、労基法39条の趣旨を没却する。
   本件では、9月1日から14日の期間を欠勤日数に算入することは、労基法に反し、無効となると考える。
 5 よって、育児休業(43日)と、9月15日から30日(15日)の合計58日を欠勤日数として扱うべきである。
以上