「おにいちゃん、たこ焼き楽しみだね」
「自分たちで作るのなんて初めてだな」
今日は青原家でたこ焼きパーティーをやる。
なぜかいつもジャンケンで負ける俺は、柚子に頼まれたお使いを済ませ、みんなが待っているであろう青原家へ向かっていた。
まだひとりで外を歩くことに慣れていないハニーは、俺のせいでお使いに付き合うはめになってしまったが嫌な顔ひとつせず、むしろ一緒に買い物ができて嬉しいと言ってくれるとてもいい妹だ。
「材料頼まれてないのもいっぱい買っちゃったね」
「食いきれるかな」
とある学園の前を通りかかった時、桜の木が目に止まった。
「もうすぐ咲きそうだな」
中学生活最初の1年が過ぎた。ここで出会ったたくさんの出来事を思い出す。きっと次の1年は今までよりもっとたくさんの人と出会い、特別な経験をする。花開く時を夢見て膨らむ桜のつぼみが、俺にそんな期待感を抱かせる。
「おにいちゃん?」
風で飛びそうになる帽子をおさえながら俺を見上げるハニーに自然と顔がほころぶ。
「行こうか」
あんまり遅くなると、お腹を空かせたレモンやユズにボコボコにされかねない。