(×相葉雅紀)
「コーヒーでよかった?」
『え~、まぁ、いいや~』
「なんだよ~」
雅紀に渡された
温かなコーヒーを持って、
二人ベンチに座った
仲の良い二人
幼なじみというか、
小学校の同級生
中学からは、
別々の学校だったけど、
二人でよくこうやって
会っておしゃべりもした
結構、喧嘩もしたり
笑いあったり
喜怒哀楽がはっきりする
二人かな
『コーヒー熱いよ、雅紀』
「えー、
冷ましてきたらよかったの?」
『そんなのしなくていいけど、
熱いから気をつけなよ、
って言ってくれれば、
よかったのに』
「なんだよ、それ~」
『ま、コーヒー、
奢ってくれてるから、
いっかぁ~』
「なんだよそれ、
火傷しちまえ!」
『ひっどぉい、雅紀
これでほんとに火傷したら、
雅紀のせいだからね!』
「いいよ、
火傷する勇気もないくせに」
『はぁ~!?
言ったね~!
火傷してやるんだから!』
「あ!やめて!
ごめんごめん!やめて!」
『…なんかもったいないね、
雅紀、せっかく優しいのに
なんか、優しいのに、
モテないよね』
「優しいとモテるは、
直結しないの、
あと、別にモテたくて
人に優しくしてるわけじゃないし」
『そうなん?
女の子に特別優しいのは?
モテたいからでしょ?
正直に答えなさいよー』
「そんな、特別とか、
してねぇよ」
『嘘つきー』
そう言って、
コーヒーを一口飲む
『あっつ』
なんでも言い合える関係に
なっちゃうと、
逆に、
言えなくなることもある
例えば、
…好き
とか
「嘘つきとか、言うなよ
俺、嘘ついたつもりないよ」
『そう?
雅紀、結構、嘘つきだと思うけど』
「は?」
『今日の服可愛いとか、
思ってもないこと言うし、
私をわざと傷つけるようなこと、
しょっちゅう言うし、
私には、
優しくないよね
意地悪ばっかするし
女の子として、
見てくれてないよね、
私のこと
なに?幼なじみってやつ?
私、大っ嫌い、
そういうの
幼なじみの特別とか
大っ嫌い、いらない!』
大嫌いは、少し言いすぎ
私だけに見せてくれる
雅紀がいっぱいいるから
そういう特別は、
正直、嬉しい
嬉しいけど
なんか、やだ
優しくないも、嘘
雅紀は、いつでも、
私にも、優しい
でも、そんな素直に言えないよ
言えなくなったの
「ねぇ」
そう言って、
私の肩をつかむ雅紀
「嘘なんて、
ついたつもりない
お前を、
傷つけたつもりもない
そりゃ、意地悪はするけど、
傷つけるようなこと、
してない
するわけない
あと、お前だけに
優しくないわけない
そんなはずないだろ?
絶対ないの、
それが、わからない?」
なに…?
雅紀…
怖いよ
肩、痛いし
力強いよ
なんで、そんなに怒ってるの…?
『…わからない…よ』
「本気で…、
わからないの?」
真っ直ぐ見つめる
雅紀の瞳
ふざけてない
真剣に言ってるんだ…
ぎゅって肩をつかむ
雅紀の手に、
さらに力が加わる
「今日、呼び出したのは、
告白しようと思ったんだ
お前に、
告白しようと思ったんだ
こんなに大切にしたいって
思ったのは、
はじめてだったから、
恋人として、
お前を守りたかった
でも、伝わってなかったんだね
こんなに大切にしてたのに
そんなこと、
言うんだもんね
もう、いいよ」
最後に、私の肩をぐっと押して、
背を向けて歩き出した雅紀
その力で、
尻もちをついてしまった私
『痛いよ…雅紀…っ』
雅紀に聞こえないくらい
小さな声で言った
大切にされてるのは
分かってた
その大切は、
他の人と、形が違うことも
他の人を、
こんな風に押し倒したり、
しないでしょ
私だから、
できるの
しても、
大切にしてるの
分かってたのに
分からないと答えた…
憧れてたのかな…
雅紀にお姫様みたいに、
大切にしてもらいたかったのかな
意地悪もされないで、
いつも優しく見つめられて、
そんな風にされたかったのかな
でも、
そんなの、
私の好きな雅紀じゃないじゃん…
なにをしたかったの?
わたし
大好きな、雅紀なのに
意地悪ばっかしたけど、
私も、大切にしてた
雅紀を傷つけたくなんて
ないよ
雅紀も、こんな気持ちだったのかな
『ま…って
待って!』
遠くなる後ろ姿に叫んだ
『雅紀!』
立ち止まった雅紀
聞こえたみたい
立ち上がろうとしても、
足を挫いたみたいで
うまく身体が動かなかった
『っ…
雅紀!待って!』
それでも、なんとか、
立ち上がって、
雅紀の方に走った
どうやって走ってるのか、
分からない
ただ、雅紀を追いかけるのに、
必死だった
好きって気持ちが、
私の中ではじけた
雅紀は振り返って、
私を見て、
驚いた顔をする
少し差し出した手
それを抑えるように、
パーカーのポケットに手をいれた
『雅紀…、ごめん
私、雅紀のこと、
好き
好きなの
大切にされてるのも
分かってる
雅紀が、
私を傷つけたことなんて
一度もないよ
あんなこと言って、
ほんとにごめん…
雅紀に見られると、
あんなことしか言えなくなるの
いつからだろう…
言えなくなってた
大好きって
小さい頃は、
毎日のように言ってたのにね
好き…
好きだよ
これを言うのに、
こんなに心臓が鳴るなんてね
どうしてだろうね
雅紀…好き
好き
…好き…だよぉ…』
溢れ出すまま心で叫んだ
心はいつでも素直なのにね、
それを口に出せないでいた
その時、ふわって、
身体が軽くなった
雅紀が、
私の肩を支えていた
「足、大丈夫…?」
『あ……、
ちょっと挫いたみたい』
「…嘘つきだよ、俺
傷つけてる、
南美の身体
南美の心
大切にしてないよ」
『ほんと…嘘つき…
大切にしてるのに、
そんなこと言って…
そこが優しいんだよ、
雅紀
知ってる…
分かってる…』
そう言うと、
雅紀の指先が、
私の頬に触れた
「色んな感情があるんだ
南美に触れてたい、
俺の南美にしちゃいたい
って感情
俺なんかと、
付き合わない方がいい
こんな最低な男
南美にはだめだって感情
南美の前では
かっこよくありたいって感情」
『…私も…あるよ…?』
「…うん、
その中から、
俺に正直に話したいって感情を
選んでくれたんだよね?
だから、俺も、
素直になって話す
俺は、南美が好き
大好きだよ
ずっと素直でいれるなら、
俺は南美を傷つけなんかしない」
『…うん』
「でも、照れ臭いよね
俺、多分、
いつもみたいに、
意地悪たくさんすると思う
南美を傷つけるかもしれない
それでも、…いい?」
『…やだ』
「…だよな……」
『…うそ、
そういう雅紀が好きなの
意地悪な雅紀も、
ひどいこと言う雅紀も、
でもね、どの雅紀も、
ちゃんと優しいの
分かるよ、
雅紀の優しさ
だから、そんな雅紀でいて?
私の大好きな雅紀でいて?』
「…うん」
そう優しく返事した雅紀は、
私を力強く抱きしめた
『痛いよ、雅紀…
力が強いよぉ…』
「あ…、ごめん…、
でも、やだ、
離さねぇから」
またドキドキする
私の心臓
雅紀のばか
不器用な二人だけど
素直になれない二人だけど
全部ひっくるめて
大好きだよ
こんなに好きになれるのは、
あなただけ
雅紀だけだから
…fin