
鬼女 [出現地] 各地
鬼女(きじょ)とは、人間の女性が宿業(前世での行い)や怨念によって鬼と化した妖怪で、若ければ「鬼女」、年老いていれば「鬼婆(おにばば)」と呼ばれる。
古くは奈良時代、人を襲ってはその肉を喰らうという安達ヶ原の鬼婆の伝説が残っており、福島県二本松市にはこの鬼婆を葬ったとされる塚「黒塚」も残されている。
「人を喰らう」というと何とも恐ろしいが、奈良時代の庶民の生活は非常に貧しく、重い税に苦しみ、粗末な食事さえ食べられないようなものであった為、カニバリズム(食人)の歴史を見てもこれが実際に起こっていた事である可能性は否定できない。
貧困が引き起こした事件が、その恐ろしさゆえ妖怪の仕業として後世に伝わったとも考えられる。
では生活が豊かになった現代、鬼女はもう現れないのだろうか。
いや、そんな事はない。
今日でも我々はしばしば鬼女を目にする。
彼女らが喰らうのは肉ではない。
己の傲慢な欲求を満たす為、愛を喰らい金を喰らう。
そして時には、未来の固まりであるはずの子供の、体一杯に詰まった夢さえも喰らう。
元来「鬼」とは、実体を見せる事なく人々の中に紛れ込み、様々な災厄や災害、病気などを引き起こす邪悪な存在とされていた。
彼女らもまた、我々の中に紛れ、我々と同じような顔をして暮らしている。
鬼女は実在するのである。
記者 牧田龍彦