呼子 [出現地] 各地



山に登って「ヤッホー」などと大声で叫ぶと、反響して声が遅れて返ってくる。
昔の人々はこの現象を呼子(よぶこ)や幽谷響(やまびこ)などの山の妖怪の仕業だと信じていた。

またこれらの妖怪は木の精霊とも考えられており、山から返ってくる声の事を「こだま」と呼ぶが、これには「木の精霊の言霊=木霊(こだま)」という意味があるようだ。

我々の言葉を真似して妖怪が木霊を発していると考えられていたわけである。




しかし私は先日、これとは全く違う性質を持った呼子に遭遇した。
いや、正確に言うとその姿を見てはいないのだが、間違いなくその場には呼子と思しき「何か」がいた。

「マジかよ」というテレビ番組の企画で、呼子の調査をする為とある山に出向いた時の事。




小雨の降る中、私を含む調査員3人とスタッフは山道を歩き、呼子が目撃されたと言われている池に辿り着いた。

聞くところによると、呼子の声に引っ張られ池に引きずり込まれてしまうのだという。

果たしてそんな恐ろしい事をする呼子がいるのだろうか・・・
正直私は半信半疑だった。

ところがレポートを開始して間もなく、その怪異は起こった。




私の後ろにいた2人の調査員が突然池に向かって歩き始めたのだ。





何かに呼ばれるように、ふらふらと池の方へと歩いて行く2人。
私は急いで彼らを制止した。
が、彼らには私の声が聞こえていないようだった。
次の瞬間、私の頭の中に「声」が響いた。

「こっちにおいで・・・」





ヤバい!

頭の中の声を掻き消すようにそう叫びながら、私はスタッフと共にその場を離れた。




闇の中に消えた調査員達は結局戻って来なかった。
それ以来あの2人には会っていない。

2人は一体どこに消えてしまったのだろう。
あの声に呼ばれるまま歩いて行っていたら、私は今頃どうなっていたのだろうか。


日本古来のUMA、妖怪 呼子。
その中には、悪霊ともいうべき邪悪な者が存在するようである。




記者 牧田龍彦