歴史上「経験したことのない」危機的状況
軍事行動というものは、個々の戦闘を組み立てる「戦術」の面では、現場の部隊が見事な働きをして成功を収めることもありうる。 しかし、上層部で大局的な「戦略」を立てる時、間違った決定が下されると、どんなに現場が奮闘しようが、作戦は失敗し兵士の勇敢な戦いも無に帰してしまう。 戦争全体の勝利を最終目標とした正しい戦略が用いられれば、部隊が戦闘で負けても、全体として破局的な敗北に至ることはない。
英米や中国では、そうした「戦略」の研究が行われているのだが、ロシアの上層部ではおろそかにされている。 大局的な戦略というものは、対立する他国との関係のなかで自国の最大限の利害を探る「地政学」的に、どんな結果をもたらすかを精査したうえで決定されなければならないのだが、ロシア軍ではその研究が行われていない。スペシャリストはいるが、軍に登用されることはない。 今回の特別軍事作戦では、初期の段階で戦略的な間違いがあったため、兵士はよく戦っているが、作戦は滞っている。ウクライナ領土のいくばくかは獲得できるかもしれないが、地政学的にはすでに敗北を喫した。 われわれが直面しているのは、ロシアの歴史上、これまで経験したことのない危機的な状況なのだ。
われわれは何をすべきだろうか。どんな戦争でも勝利するのは知性だ。
ハリコフを取ろうが、たとえ沿ドニエストル地方を奪って戦闘に勝利しようが、対立する他国との関係のなかで自国の最大の利害を探るという「地政学的な」戦争では敗北した。 現代の世界には不正や暴力があふれているが、しかしロシアはこのひどい世界の中でも最悪の状態に置かれることになるだろう。 この70年でロシアは、特に技術と社会状態は最悪の状態に落ちる。1937年の大粛清のような抑圧がある。「勝利勝利!」と叫ばされ、「戦争反対」と言っただけで投獄されるような法律はスターリンの時代にもニコライ二世の時代にもなかった。
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CNNの取材に応じた将校は、世界にウクライナ危機の懸念を引き起こした、ロシア西部での大規模な軍備増強に加わっていたという。だが本人はそれについて深く考えていなかった。ロシア南部のクラスノダールに駐留中の今年2月22日、所属していた大隊の全隊員が何の説明もなく携帯電話を預けるよう命じられた際も、あまり深く考えなかった。 その夜、隊員らは数時間かけて軍車両にストライプの白線を塗装したが、その後全部洗い流すよう命じられたという。「命令が変わって、怪傑ゾロに出てくるようなZの文字を描けと言われた」と、彼は当時を振り返った。 「翌日はクリミアに派遣された。正直、ウクライナに行くとは思わなかった。こんなことになるとは全く思ってもいなかった」と将校は言う。 自身の部隊がクリミア――2014年にロシアが併合したウクライナの州――に集まったころ、ウラジーミル・プーチン大統領はウクライナへのさらなる侵攻に踏み切った。2月24日のことだった。 だが将校と仲間たちはそのことを知らなかった。ニュースが自分たちに伝わってこなかったからだ。携帯電話を奪われ、彼らは外の世界から隔絶されていた。
ロシアでは今も新兵募集が行われているという。新兵は将来への展望が少ない貧しい地域の出身者であることが多い。
