観光最終日の朝

今日はあのエッフェル塔から見えた丘。モンマルトルへ行く。
私達が滞在する北駅からそう遠くない場所にあるモンマルトルという街は日本の観光ブックに「危険な場所」と書かれている。スリも多いし事件も多いので近くのホテルには泊まらない方が良いとまで書かれているのだ。

そうとまで書かれている街に私達はなぜ？行くのかというと、それは少し前の話に戻る。

今から数十年前の事、妻のみっちが観光で訪れた頃はこの街は危険とは言われていなかった。
日本からのツアープランにもモンマルトル観光があるため、みっちはこの街を訪れた事がある。
その頃に見たこの街はサクレクール聖堂の階段付近に演奏家や画家達が多く滞在していてとても賑わっていたという。私達は旅行に行く前、当時の写真を見ながら話しているとある日、たまたま家のテレビでやっていた番組でモンマルトルの今の状態を映し出していた。

写真の頃と同じく、今でも演奏家や画家達が映し出されていて当時とほとんど変わらぬ景色がそこにはあった。いったいどこが危険な地域なのかさっぱりわからないが、いつの日からか日本の旅行会社はこの街を敬遠するようになったらしい。

そんな事を思いながらなんの気なしにその番組を見ていると、突然みっちが大きな声を上げた「あ～！」

今、映った画家の絵、写真にもある！

同じ人が書いてるわ！

え？え～！
もう３０年も前の写真に映っていた画家の絵が、今のモンマルトルに存在する。
どういうことだ？
同じ画家がずーっと描いているのか？
もしくはこの絵がずーっと売れずに残っているだけなのか？
まさか息子が継いでいるのか？
もしくは模写か？

自分の家に居るうちは真相はわからない。
これは実際行って確認してみないといけない！

そう思った私達はパリに来たら絶対モンマルトルに行くと決めていたのだ。
その街がどんなに危険になったってかまわない。
面白そう！って思ってしまったのだから、その気持ちは止められないのだ。

という訳で、ついに私達はこの日モンマルトルに向かう事となったのだ。

まずはお決まりのメトロを使う。
パリに来てもう何度もメトロを利用したので大分慣れた。慣れると本当に便利な交通手段だと思う。

そしてパリのメトロにある駅構内は全てデザインが違う。色もイスも雰囲気も全然違うのでとても面白い。

サクレクール聖堂から近いメトロの駅ABBESSESに降りる。
私達は降りた地下から階段で出口を目指しながら上がっていると、壁にとても面白い絵が描かれていた。

へぇ～、なんか面白いな。
螺旋状の階段を上りこれから天国にでも行くみたいだ。

これは楽しみだぞ。

いや～、本当に凄い絵だな。
っていうかいつまで上がるんだ！？

だいぶ上がったけどいつまでたっても先が見えない。

途中で見かけたおばあちゃんとその娘らしき人も、「もうムリ」みたいな事を言っていたぞ。
最初は絵で気を惹かれたけど、これはかなり長い階段だ。

私達は予想もしていなかった突然の長い階段に足下の体力を奪われた。

...まだあるよ、ん？いや出口か？
ついに終わりが見えたのか？

あ～やっと出れた～。
はっきり言って凱旋門の階段よりきつかった～。
かなり油断していたからビックリした。

その後よくよく見ていると違う所にエレベーターがあった。
ああ、そりゃそうか。
なんだかヨーロッパに来てエレベーターやエスカレーターが無い事の方が自然だったから、まさかここにあるとは思いもしなかったよ。先入観という物は恐ろしいね。

それにしても凄い階段だったなぁ。

それでも着いたぞ、ついにモンマルトルに。
新しい街は本当にワクワクする。
果たしてここは天国なのか？それとも危険がつきまとう地獄なのか？

私達はついにサクレクール聖堂へ向かった。

４０話 モンマルトルへ向かう

４０話　モンマルトルへ向かう