さて、ブドゥの製造工程をご紹介しよう。
水揚げされたカタイクチイワシを塩と層にして重ねて、写真にある青いプラシック製のブドゥ樽にいれて半年~2年、そのまま保存。するとカタクチイワシは分解され、褐色の液体が現れる。2年ものの液体となると、たった1滴でも洋服につくとシミになってしまい洗っても取れない。
青空の下に置かれたブドゥ樽。直径2メートぐらい、高さ1メートほどの大きさで、20~30個ぐらい置かれている。
ちなみにカタクチイワシの漁の時期は6~11月のみ。その時期は毎日水揚げされ、毎日仕込みをする。
これがブドゥ樽の中身。深い、深い、褐色。真っ白な布を入れたら、美しいブラウンに染まりそう。ただ匂いは強烈。表面にもろもろ浮いているのは、発酵段階のカタクチイワシ。
イスマイルさんにお願いしてちょっと舐めてみた。
おぉぉ~~、うんまーい!
驚き。全然しょっぱくない。これは、、まさに醤油! それも高級ブランドの醤油のように、旨みたっぷりで甘い。魚の発酵調味料と大豆の発酵調味料、この時点の味はほぼ同じなのね!
次に、この液体に4時間ほどぐつぐつ火をいれて、液体部分だけを濾したら完成。とろっとした形状なので、あまり細かく濾すことはしていないようだ。
そして最後にたくさんのお土産をもらって、工場をあとに。
な~んて、あたかも取材が順調に進んでいるように書いているけど、実のところ、そうではない。というのも言葉がほとんど通じなかった…。
なぜなら、イスマイルさんもエッソさんも英語が話せない。さらにクランタン州のマレー語は独特の言いまわしやイントネーションがあって、わたしのたった3ヶ月だけ習ったカタコトマレー語では、残念ながらまったく通じなかった。同行してくれたマレーシアのテレビ局のアンナさんが通訳してくれなかったら、えらいことだった。言葉はとても大事。これからも言葉についてはよく準備して取材にのぞもうと思う。
写真はエッソさんとアンナさん。アンナさん、メカちっくなドラえもんのTシャツがお気に入り。
最後に。
この原稿を書きながら、まるであのブドゥ工場にまた自分がいるような気分になっている。なぜなら、匂い。あの強烈なブドゥの匂いが甦っているから。まるで鼻の中にブドゥ分子が潜んでいて、原稿を書いていたらむくむくと生き返ったようだ。
匂いと記憶は、イコールなものなのかもしれない。ダイレクトに脳に結びついて匂いは、記憶を呼び戻す力も強烈。だからきっと東海岸出身の人はブドゥが好きなのだ。なぜなら、故郷とつながる匂いだから。