タバンから北へ足を進めると、肌寒かった街中から心地良い日差しが草原一面を照らし、朝早く出てきたわたしに眠りを誘ってきた。
前を歩くレックスの後をついていきながらも、こくりこくりと頭が前に動く。
しかし、それをある臭いが妨げてくれた。
一瞬で冴えた目を前に向ける。
青々とした草原を走る土色の道の先、遠くからでも良くわかるほどに茶色と深緑色が混ざったような汚れた湿原が見えていた。
近づくほどに臭いは強くなるも、鼻を覆うほどではない。でも、鼻にすることは当然嫌だ。
湿原の姿がはっきりと捉えられる距離に来たところで、周りを見渡す。
茶色い岩肌に、これから足を踏み入れる地面までもが厚い苔で覆われていた。
ぬちゃりとした嫌な触感が靴の裏側からでも伝わってくる。また、とても滑りやすい。
とりあえず、リックが選んでくれた品物の中に動きやすい靴があって、それに変えておいたのは正解だった。
しかし、いつ足を滑らせてしまうかわからないほどに不安定な足場である。
それを想像するだけでも背筋が凍りつく。
と、そのわたしのことを察してか、先行するレックスが足場のしっかりとした場所を教えるような合図を送ってきてくれる。
最初は戸惑いつつ、進むことをためらったがフィーザに手を引かれ、その場所に足を置く。
そのおかげで、わたしは想像していた恐れが頭から消え、苦もなく湿原を歩くことができた。
あと道中では魔物にも遭遇したけど、レックスが自らを盾にするようにわたしの前に立ちはだかり、フィーザも護衛するように立ち回ってくれていたおかげで、わたしは何も苦労することはなく進むことができた。
レックスは騎士だから、わたしを守るような行動を取ってくれているのだろう。
しかし、フィーザのほうは、やはり……。
そう思うと、街を出る時に言っていた彼の言葉が、自然と頭の中に浮かんでくる。
「エリルさん、気にすることはない。どうせ、フィーザの奴は気まぐれで動いているだけですよ」
前を歩くレックスはフィーザが少し距離を置くように歩いているところで、そう小さく話しかけてきてくれた。
でも、そう言われるも……。
だけど、わたしはフィーザのことをよく知らない。
今はレックスの言葉を信じていればいいのだろう、と自分の内に言い聞かせ、とにかく進むことだけに専念することにした。
湿原を抜けると、地面がぬかるんだ場所から硬い場所へと変わり、目の前の光景も茶色一色に変化した。
気高い山々に囲まれた大地。
緩やかな傾斜を進むレックスの後を、とことことついていく。
周りには鉱山跡のような場所が目立ち、見える範囲でも数え切れないほどの穴がある。
と、わたしがキョロキョロしているとフィーザが話しかけてくる。
「ここはラグナ鉱山と言って、魔石採掘が行われていた場所です」
「魔石……?」
「魔石とは、魔力を帯びた天然の結晶石のことです。ラグナ鉱山ではよく採れたそうですが……。魔女の出現により、この鉱山での魔石採掘が難しくなってしまい、帝国は手を引くしかなくなってしまいました」
フィーザは訂正に説明をしてくれるも、話し始める直前に小さくため息をついていた。
わたしの記憶喪失について、少し呆れているのだろうか。
「ですから、今はここは廃鉱となっています」
「"ただ"の廃鉱ならいいがな」
前を進むレックスが苦く横槍を入れるも、フィーザは軽く同意するようにうなづいていた。
(どうもです。お久しぶりです。
長く書いていなかったもので、訳のわからないことに(・・;
あとは修正する腕もなくなった気がします。とりあえず、息抜き程度ですが、一応私色の続きになります。
それでは、失礼しました。)