Q:本作に出られるにあたって、ご自身としてはどのような
作品にしたいと思いましたか?
北川景子「今回のオファーをいただく前から純粋に時代劇を
やりたいと思っていましたし、初めての時代劇作品が
藤沢周平さんの作品ということもすごくうれしかったです。
最初に考えたことは、藤沢作品ファンの方たちに納得して
もらえるような作品にしたいということでした。あと、時代劇が
苦手と感じているような若い人たちにも観てもらえる作品に
なったらいいと思っていました。」
Q:初挑戦ということで、現代劇で培ったノウハウが通じない!
と思った瞬間はありましたか?
北川景子「そうですね。動きに制約があったことが、まず
一番大きかったですね。着物を着ているので、ただお茶を
飲みながら話すことだけでも難しかったりしました。
現代劇の場合は、普段と同じようにしていればいいことも
ありますが、時代劇の場合は、湯飲み茶碗の持ち方や
ふすまの開け閉めまで決まっていたので、そのことを頭の
中で整理しながら考えて演技をする必要がありました。」
Q:いわゆる所作と呼ばれるものですね。半年間ぐらい練習
されたそうで、日常にも出そうですね。
北川景子「そうですね。時代劇の所作や殺陣などを半年間
ぐらいけいこしました。はしの持ち方などは、普段食事を
していているときにもできるようになっていました。
■自由恋愛禁止の江戸時代について
Q:本作は、映画人なら誰もがあこがれる藤沢周平原作作品
ですが、改めてその魅力はどこにあると思いますか?
北川景子「藤沢さんの作品をすべて読んだわけではないです
が、いわゆる歴史ものというよりは、日本の美しさである風景
や季節、言葉に出さなくても相手のことを思っている
ような昔の日本人の心など、そういう内側の美しさを丁寧に
描いている作品だと、以登という女性を演じて思いました。」
Q:特に今回は主人公の以登が敵討ちを果たそうとします。
彼女の行動をどう受け止めましたか?
北川景子「一度、孫四郎と剣の試合をして、そこで好きになる。
一目ぼれで、会ってすぐ恋に落ちるという気持ちに共感し
ました。というのは、あの時代のいいなずけは両親が決める
だろうし、自由な恋愛ができない時代。その中で、
さらに身分などがあって、特に女性は男の人に比べて、
できることが少なかった。でも、孫四郎は女性ということで
見下すことをせず、本気で打ち合ってくれますよね。それが
当時の女性にとってはうれしいことだったと思いますし、
衝撃的だったと思います。」
Q:親が決めた相手と結婚するなど、自由恋愛じゃなかった
江戸時代で暮らすことはあり得ないですか?
北川景子「親が決めて、その上一度も会ったことがない人と
結婚することは……ちょっと厳しいですね(笑)。
たまたま以登のいいなずけ(片桐才助)はいい人だったから
良かったですが、そうじゃなかったらと思うと、現代に生きて
いる感覚で考えると怖いですよね(笑)。」
Q:北川さんのあこがれの男性は、ショーン・ペンやダスティン
・ホフマンだそうですね。
北川景子「ショーン・ペンさんやダスティン・ホフマンさんの
演技が好きという意味です(笑)。ショーン・ペンさんは
悪そうな感じがして、彼自身のそういうところも好きですけどね。
父親になっているのに、昔の悪さを忘れていないとか、
ちょっと悪な親父役が似合うので、好きですね。
映画『ミステック・リバー』のキャラクターとか(笑)。
そういうキャラクターを演じている姿を観ることが好きですね。」
■現代人にないのは耐える力
Q:あの時代の女性にあって、今の女性にないものは
何でしょう?
北川景子「耐えること、耐えられる力があることかなと
思います。以登はとてもつらいことがあっても、簡単には人に
相談しないタイプだと思います。自分の中でどうしようか考えて、
決めて、消化してしまう。現代だと、すぐに友達に相談して
しまうのではないかと思います。電話もメールもあるし、
声をひそめて会話する必要もないですよね。困ったことが
あっても、今は人に頼れる環境がある。自分で何とかするため
にひたすら頑張って耐える精神が、女性に限らず、
昔の人々にはあったと思います。」
Q:もし、解決が難しい悩みごとがあった場合に、北川さんは
どちらの時代の女性に近いですか?
北川景子「わたしは、仕事の相談は、誰にもしないです。
そもそも、相談してもわかってもらえない話が多いような気が
するので、最初からあきらめている部分もありますけれどね(笑)。
でも、親には心配をかけたくないし、友達と話しているときにも、
わざわざ仕事の話を持ち出したくないですし。
結局、カメラの前に立つのは自分一人だけなので、