日中にポーランドのリブニクのまちを楽しんだ後は、チェコのオストラヴァに戻って、夜はまたスメタナのオペラを観に行きました。スメタナのオペラ最後の作品、悪魔の壁です!

 

 

 

National Moravian-Silesian Theatre

Bedřich Smetana

THE DEVIL’S WALL

(Antonín Dvořák Theatre)

 

Conductor: Marek Šedivý

Stage director: Jiří Nekvasil

Set designer: David Bazika

Costume designer: Marta Roszkopfová

Choreographer: Gianvito Attimonelli

Movement director: Jana Tomsová

Chorus master: Jurij Galatenko

Dramaturg: Juraj Bajús, Daniel Jäger

 

Vok Vítkovic: Jiří Brückler

Záviš, his nephew: Anna Nitrová

Jarek, knight in service of Vok: Luciano Mastro

Hedvika, Countess of Šauenburka: Veronika Rovná

Michále, the steward of Rožmberk Castle: Jorge Garza

Katuška, his daughter: Kristýna Kůstková

Beneš, a hermit: Martin Gurbaľ

Rarach, the devil: Miloš Horák

 

National Moravian-Silesian Theatre’s opera chorus & orchestra and ballet

 

 

 

(写真)本公演のプログラム。スメタナの人生が投影されたオペラということで、スメタナの肖像画が入ります。

 

(写真)モラヴィア・シレジア国立劇場。大きな2本の木があるのが特徴。計7日間通いましたが、この日の観劇でひとまず見納めとなるのは寂しいものです。

 

 

 

スメタナの最後のオペラ、悪魔の壁!今回はスメタナのオペラをいろいろ観て来ましたが、予習の段階で、もしかするとダリボールと並んで最高傑作なのではないか?と思った音楽が極めて充実した作品。とても楽しみです!

 

 

悪魔の壁のあらすじをごく簡単に。民衆から支持される名君の領主ヴォクはその昔恋をした女性のことが忘れられず、未だに独り身。ロジンベルク城主のミハレクは娘のカトゥシュカを何とかヴォクの妻にできないかと思案します。

 

ヴォクの周りには修道士ベネシュにそっくりな悪魔ララクが控えていて、ヴォクに取り入ろうと画策。そんな中、以前恋をした女性の娘ヘドヴィカがヴォクに保護を求めてやってきます。母親の面影を残すヘドヴィカに惹かれるヴォク。果たして、その運命やいかに?

 

 

 

 

 

第1幕。この後の舞台での主題が交互に現れる聴き応え抜群の序曲!その間、舞台のあちこちにスメタナの肖像画が出てきて、このオペラがスメタナの集大成や人生にシンクロしていることを伝える演出です。

 

ヤレクとミハレクのやりとりの後、ヤレクは名君のヴォクが結婚するまで自分も結婚しないと剣に誓います。この時点では気骨があってとてもカッコいいヤレク。

 

 

全く同じ格好の修道士ベネシュと悪魔ララクの最初の対決のシーン。ベネシュは悪魔は去れ!と命じますが、ララクはどこか涼しい顔でいなします。この公演ではベネシュとララクが背格好そっくりで、なかなか見分けがつかないところがポイントですが、どちらなのか?分らずいささか難儀しました…。

 

カトゥシュカが登場して清らかな歌。ハッとさせる転調も入る美しい旋律にキュンとします。ヤレクとカトゥシュカの二重唱も半音階の進行が陶酔的で素晴らしい!ですが、ヤレクさん、さっきは結婚しないぞ!と剣に誓ったばかりなのに、ノリノリで愛を歌って全く調子の良いこと!笑

 

 

トライアングルも効いたきらびやかな行進曲に導かれて、いよいよ主人公のヴォクが登場。カトゥシュカとヤレクとの顛末の後、ヴォクが過去の恋とそれ以降恋をできなくなったことを懐かしく述懐する最高のアリア!Jiří Brücklerさんの歌が最高!

 

(参考)スメタナ/悪魔の壁から第1幕のヴォクのアリア「ただ一人の女性の美しい顔が」

https://www.youtube.com/watch?v=AvsPpAh0Zq0 (4分)

※歌手Tadeáš Hozaさんの公式動画より

 

 

ヴォクの甥っこのザヴィシュ(ズボン役)はユニークなキャラクター。みんなでヴォクを讃えているシーンで村娘の一人にちょっかいを出しますが、みんながヴォクに求愛するシーンでその村娘もヴォクにアプローチすると心配の表情になるところが可愛い!笑

 

最後はララクが修道服から黒い衣装に早変わりして悪魔の正体を表し、ヴォクの王座に着いて終わりました!ラスボス感満載のララク!この後の波乱の展開を予測させる素晴らしい第1幕!

 

 

 

 

 

第2幕。ヤレクがカトゥシュカを思うめちゃめちゃ甘く切ない歌を歌いますが、ララクがカトゥシュカの幻影を出現させてヤレクを翻弄してしまいます。

 

ミハレクは何とかヴォクとカトゥシュカを結婚させられないか?と思案しますが、その歌がワーグナー/ニュルンベルクのマイスタージンガーのダーフィットのような軽快な歌で楽しい!

 

甥っこザヴィシュがヴォクを勇気づける歌もいいですね~。そして、ヴォクの歌から軽快な5重唱となる流れも素晴らしい!

 

 

いよいよヒロインのヘドヴィカが登場します。その来訪の場面や、気品ある佇まいのVeronika Rovnáさんによるヘドヴィカの登場のシーンが素晴らしく、ヴォクとヘドヴィカのやりとりと二重唱にも痺れます!

 

しかし、ヘドヴィカに大いに惹かれるも、ヴォクは自分の年齢や立場から逡巡してしまい…。ベネシュの意見に従って修道院で修道僧になることを民衆の前で宣言してしまうのでした。第2幕も素晴らしい音楽と歌が沢山ありました!

 

 

 

 

 

第3楽章。いよいよ修道院ができてヴォクとザヴィシュのやりとり。ヴォクは修道院ができて修道僧になると語りますが、同時に(結婚相手が現れれば)ここはチャペルとして開かれている、とも打ち明けます。

 

ザヴィシュはヴォクが修道僧になることを諌める進言をします。とともに、ヘドヴィカがヴォクのことを愛しているのを確信します。

 

 

ベネシュがミハレクに懺悔する、ややコミカルなシーンを挟んで、羊飼いに扮したララクが羊たちを伴ってやってきます。それを見破ったベネシュが火の十字架をもってララクを退散させるシーンは大いに見応えあり!

 

村娘たちがヴォクの花嫁候補としてやってきて、それを村娘の恋人の男たちが辞めさせようとするかなりコミカルなやりとりは、スメタナの小粋な音楽が本当に楽しい!村娘たちが一輪の花とハンカチを使い分けた小粋な演出が光ります!

 

 

いよいよ悪魔のララクが本性を現します!ララクはゴブリンたちを呼んで悪魔の壁を作らせ、ヴルタヴァ川を溢れさせて、修道院を飲み込もうとします!ここでのゴブリンたちの踊りの音楽が何とウィンナ・ワルツ!この凶悪で破綻するウィンナ・ワルツがめちゃめちゃ素晴らしく、スメタナの作曲の妙を感じます!

 

(写真)そのララクがゴブリンたちを呼んで凶悪なウィンナ・ワルツで踊るシーン

※モラヴィア・シレジア国立劇場で配布されていた絵葉書より

 

 

ヘドヴィカがやってきて、ヴォクに修道院に危険が迫っていることを伝えようとしますが、その過程でヘドヴィカはヴォクへの愛に気付きます。ここでのヘドヴィカの歌も素晴らしい!

 

そしてヘドヴィカは築き上げられた悪魔の壁を遂に打ち破ります!最後はヴォクとヘドヴィカ、ヤネクとカトゥシュカの2組が結ばれてハッピーエンドで終わりました!のはずでしたが…。

 

 

なんと、ヴォクに新しい領地が任せられるくだりでは、プラハ国民劇場の模型がヴォクに捧げられました!これはプラハ国民劇場のこけら落としがスメタナ/リブシェだった史実を元にした演出ですね!

 

そして、最後は何とそのプラハ国民劇場の模型から火が出て、ヴォクが頭を抱えて幕になりました!これは一体?

 

これもプラハ国民劇場が開場後しばらくして火事で焼けてしまった史実に基づきますが、ここは演出家がやっちゃった感が?笑 素直にヴォクとヘドヴィカが結ばれてメデタシメデタシで良かったのではないのでしょうか?演出家さん、もう凝り過ぎです!笑

 

 

 

 

 

いや~!スメタナの最後のオペラ、悪魔の壁。素晴らしい公演でした!とにかくスメタナの音楽がまたしても最高!聴きどころ満載の傑作オペラ!歌手のみなさんにも舞台にも魅了されて、存分に楽しめました!

 

 

 

 

 

そして、私はこの悪魔の壁を観たことで…、

 

 

スメタナの作曲した8つのオペラをコンプリート!!!

 

 

やった~!遂に成し遂げました!旅行前の時点で4つのオペラを観たことがありましたが、今回のチェコ旅行で残りの4つも観ることができて、一気に達成!スメタナ生誕200周年の極め付けの思い出となりました!

 

 

(写真)今回の旅でモラヴィア・シレジア国立劇場で観たスメタナの7つのオペラのパンフレット。これらに加えて、2007年にプラハ国民劇場でリブシェを観ているので、8つのオペラをコンプリートです!

 

 

今回オストラヴァのモラヴィア・シレジア国立劇場では、スメタナ生誕200周年を記念して「スメタナ・オペラ・サイクル」を敢行。スメタナの全8オペラをチクルスで上演してくれたんです!もともと全作品をレパートリーとして持っている劇場ですが、それらが一気に上演される機会はとても貴重。今回その機会を捉えて観に行くことができました!

 

 

(ちなみにこの貴重な情報は大親友が教えてくれました。私はこういう最高の友人に恵まれて、とても豊かな人生を送れていると思います。感謝の念しかありません!)

 

 

 

そして、全8作のオペラを観て強く感じたのは、スメタナはワーグナーやR.シュトラウス、あるいはヴェルディやプッチーニに匹敵するような、最高のオペラ作曲家ではないか?ということ。旋律、和声、リズム、楽器の使い方、ドラマの盛り上げ方などなど、極めてレベルが高い!

 

しかもスメタナならではの個性や独創性があり、ドラマティックで重厚なオペラも軽快でコミカルなオペラも、チェコの民族音楽に溢れたオペラもワーグナーを思わせる陶酔的なオペラも、どれも素晴らしい!観客のみなさんの熱烈な拍手を目撃して、チェコで絶大な人気と支持を得ていることが良く分かったのも貴重でした。

 

 

 

 

 

ということで、今回のチェコ旅行での大きな目標「スメタナのオペラをコンプリートする」を無事に達成できました!

 

しかし、実は今回の旅行のハイライト、クライマックスはさらにこの後なんです!この後の2日間、私はクラシック音楽好きの人生で間違いなく頂点の一つとなる最高の体験をします。果たしてどんな出来事なのか?今回の旅行記、残りの怒涛の4記事を乞うご期待!(続く)