今年の東京の美術展で最も注目していたデ・キリコ展。4月27日(土)から始まったので、さっそく初日に東京都美術館に観に行きました。

 

 

 

いや~!素晴らしい!私はルネ・マグリットやポール・デルヴォーなどのシュルレアリスムの絵画が最も好きなジャンルなので、自ずと形而上絵画のジョルジョ・デ・キリコの絵も大好物ですが、キリコの様々な時期の多様な作品が一堂に会していて、新しい発見も多く、もう圧巻でした!特に印象に残ったのは以下の絵です。

 

 

 

(写真)ジョルジョ・デ・キリコ/予言者

※デ・キリコ展で購入した絵葉書より

 

キリコの代名詞であるマヌカン(マネキン)とイタリア広場を描いた作品です。このマヌカンは解説には「世界の観察者、予言者」とありましたが、今回のキリコ展では、キリコがミュンヘン時代にアルノルト・ベックリンやフリードリヒ・ニーチェに影響を受けたり、フェッラーラのまちの家々や雑貨にインスパイアされたことが紹介されていたので、キリコの芸術を象徴する作品と感じました。

 

なお、本展ではキリコの以下の言葉が大きく掲示されていました。上記と重なるので併せてご紹介します。

 

「風変わりで色とりどりの玩具でいっぱいの、奇妙なミュージアムを生きるように、世界を生きる。」

 

 

 

(写真)ジョルジュ・デ・キリコ/不安を与えるミューズたち

 

こちらも全くキリコの独特な絵画を堪能できる作品です。マヌカンと不自然な遠近法(手前の箱!)の不思議な調和!背景はフェッラーラのエステ家のお城で、私は華やかなエステ家の女性たちの悲喜こもごもを暗示している絵のように感じました。

 

 

(写真)ちなみに…、本展のお土産コーナーにビスコッティがあり、こういう特別なお土産にはめっぽう弱いフランツは反射神経で購入してしまいましたが(笑)、パッケージが上記の絵に出てくる箱でした!

 

中身の美味しそうなビスコッティは、取っておきの1980年代のヴィンサント(イタリアの陰干ししたぶどうで造る甘いワイン)があるので、それと合わせてゆっくり楽しもうと思います。

 

 

 

(写真)ジョルジョ・デ・キリコ/谷間の家具

 

キリコがアテネにいた頃、地震があった時に家具を家の外に運び出していたことにヒントを得て、このような非日常の不思議な絵画を描きました。屋外の家具と同時に、背景に小さく見えるギリシャの神殿がとても印象的。

 

このマグリットの諸作品の原点をも思わせる絵、私は好きです。解説には「通常と異なる環境に物を配し、違和感を与えるのは、デ・キリコ作品に一貫した特徴」とありました。これもマグリットに通じます。

 

 

 

(写真)ジョルジョ・デ・キリコ/南の歌

 

この絵は観た瞬間に「うそ~!キリコがこんな柔らかいタッチの絵を残しているんだ!」とビックリしました!上の3作品のように、良く見かけるキリコの絵は、くっきりはっきりした筆致の絵ばかりだからです。

 

解説にはルノワールに着想を得てとあり、納得でした。有名なヘクトルとアンドロマケの絵では独特な緊張感と彫刻的な美しさがありますが、この「南の歌」の絵ではマヌカンながら人間的な温かみと親密さを大いに感じます。

 

 

 

(写真)ジョルジョ・デ・キリコ/自画像のある静物

 

この絵に出会う前に、本展の一番最初のコーナーではキリコの自画像の絵が何作品か展示されていました。いずれもギリシャの彫刻のような、押し出しの強いインパクトありまくりの自画像!笑

 

なので、この「自画像のある静物」の絵でも、右上のキリコの自画像が小さいながらも存在感があり過ぎて、画面一杯に描かれているはずの中央の果物が全然頭に入ってこない面白さ!笑

 

 

 

(写真)ジョルジョ・デ・キリコ/オイディプスとスフィンクス

 

オイディプス王の物語で、スフィンクスに謎かけをされて、考え込むオイディプスを描いています。他の主題の作品では、男女ともマヌカンで描いていますが、この作品のスフィンクスは顔を描いていますね。

 

今回この絵に惹かれたのは、2019年のザルツブルク音楽祭でエネスコ/オイディプスのオペラを観ることができたから。このスフィンクスの謎かけから、オイディプスが見事に解いてテーベを解放して凱旋するエネスコの音楽が、めちゃめちゃ素晴らしかったからです。

 

(参考)2019.8.17 ジョルジュ・エネスコ/オイディプス王(ザルツブルク音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12538044750.html

 

 

 

 

 

デ・キリコ展、観に行く前から楽しみで楽しみでなりませんでしたが、想像を遥かに超えて素晴らしかったです!今年はシュルレアリスム宣言から100周年ですが、そのシュルレアリスムの画家を大いにインスパイアしたのがジョルジョ・デ・キリコの作品です。

 

そのキリコの作品全体を俯瞰できる超好企画をシュルレアリスム生誕100周年に観ることができて、本当に嬉しかったです!図録も購入したので、じっくり読んで、ぜひ2回目も観に行きたいと思っています。8月29日(木)まで上野の東京都美術館にて。全力でお勧めする美術展です!(なお、作品保護のため館内は結構寒いので、上着を持っていった方が無難だと思います。)

 

 

 

 

 

 

 

(追伸)このところいろいろ忙しくて記事にする余裕がありませんでしたが…、前回記事、東京・春・音楽祭の都響のブルックナー/ミサ曲第3番以降も素晴らしいコンサートをいくつか楽しみました。

 

 

特に同じく東京・春・音楽祭のセバスティアン・ヴァイグレ/読響によるR.シュトラウス/エレクトラの公演はもう最高でした!

 

タイトルロールのエレーナ・パンクトラヴァさん始め歌手の皆さまも素晴らしかったですが、とにかくセバスティアン・ヴァイグレさんの指揮が最高!ヴァイグレさん、これまでエレクトラを何回振ってきて、どれだけ作品の魅力と本質を熟知されているんだろう?と思わせる骨太の堂々たる指揮で、それに良く応えた読響も抜群でした!

 

 

そして、もう一つ、感動的だったコンサートが、私の大好きなヴァイオリニスト、ペッカ・クーシストさんが都響に客演して指揮まで披露した公演。特にクーシストさんがヴァイオリンでリードしたヴィヴァルディ/四季が絶品!

 

この方の表現力は底知れないなと改めて感じた、今まで聴いたことないような自由自在かつ感動的な四季!かなり個性的でしたが、コンマスの矢部達哉さん始め都響の弦楽セクションのみなさまがノリノリで合わせていたのが、とても印象的でした。ペッカ・クーシストさん、ぜひまた都響に客演してほしいです!

 

 

 

 

 

さて、このところ忙しかった理由の一つが、このGWのお休みを利用して旅に出るので、その準備をしていたからです。2022年は広島と岡山、2023年は山口と島根と鳥取を楽しんできたGWでしたが、今年はどこに行くのでしょう?

 

そのGWの旅行を内容とする次の記事は5月中旬となる予定なので、本ブログは2週間半ほどお休みとなります。みなさま、良いGWをお過ごしください!