さる4月1日(土)は一日予定が空いたので、フランスの美術展をはしごして、合わせてランチとディナーもフランス料理を楽しんできました。

 

 

 

私はコンサートやオペラが好きで、さらに最近は和の伝統芸能もよく観に行くので、この先一年間、お休みの日の土日は既にほぼ何らかの予定が入っています。

 

しかし、4月1日(土)に限って、たまたまコンサートや観劇の予定が入らず、ぽっかり一日予定が空きました。ならば自分らしく、自分ならではの予定を組んでみよう!と思ってみました。以下、その一日の様子です。

 

 

 

 

 

 

 

まずは、上野の国立西洋美術館で開催中のブルターニュ展を観に行きました。「憧憬の地 ブルターニュ ~ モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」と題された企画展ですが、多くの画家たちがブルターニュに惹きつけられた19世紀後半から20世紀はじめに着目し、その景観や風俗、歴史をモティーフとした作品が一堂に展覧される貴重な機会です。特に印象に残った絵は以下の通りです。

 

 

(写真)クロード・モネ/ポール=ドモワの洞窟

※ブルターニュ展で購入した絵葉書より

 

もしかすると、今まで観たモネの絵の中で最高ではないか?と思った素晴らしい作品!様々な色を使った岩の明るさ、波に揺らめく海の瑞々しさと奥行き、岩場が斜めに展開するダイナミックな構図。本当に見事な絵ですし、モネを触発したブルターニュの海の風景もまた素晴らしい!

 

この絵を観るだけでも、このブルターニュ展に来る価値がある。そんな一枚でした。

 

 

(写真)ポール・セリュジエ/急流のそばの幻影、または妖精たちのランデヴー。

 

ブルターニュと言えばケルト文化。ケルト文化と言えば妖精。ということで、とてもブルターニュらしさを感じさせる絵です。セリュジエではこの絵のほか、ブルターニュ公国最後の女公にしてフランス王妃になった、アンヌ・ド・ブルターニュ女公を讃えた赤の民族衣装があざやかな絵も印象的でした。

 

 

(写真)アンリ・リヴィエール/遺作「ブルターニュ風景」より《ロネイ湾(ロギヴィ)》

 

アンリ・リヴィエールは日本の浮世絵版画に最も心酔した画家。独学で試行錯誤を重ねながら多色刷り木版画の制作に取り組み、遂には10枚以上の版木を組み合わせて、浮世絵のテイストのある版画を制作したそうです。西洋の風景ですが、浮世絵の味わいのある、本当に不思議な魅力の絵です。

 

 

(写真)モーリス・ドニ/水浴

 

ドニによるブルターニュの海遊びの絵ですが、イタリア旅行を経験して、ドニの画風には古典的様相が強まったそうで、陽気な浜遊びに留まらない様式美を感じさせる、これまた不思議な魅力の絵です。解説には、手前にはバッカスの踊りを想起させる人物像が配されている、とありました。

 

 

(写真)久米桂一郎/林檎拾い

 

日本人画家もブルターニュに魅せられて、多くの画家の作品が出されていました。特に黒田重太郎/枯草を運ぶ女、そして、藤田嗣治/十字架の見える風景、に惹かれましたが、もう一点惹かれたのがこのブルターニュならではの林檎拾いの絵。どうしてこの絵をピックアップしたのか?それはこの後のランチにて。

 

 

 

ブルターニュ展、大いに堪能しました!よくぞここまでブルターニュに関する絵画を集めたものだと感心しましたが、絵の描かれた場所が、ブルターニュの様々な場所に散っているのがまた凄い!(本展の中で絵のアイコン入りの分りやすい地図がありました。) それだけ画家を惹きつける魅力的な風景に溢れている、ということですね。とてもお勧めの美術展です!

 

 

 

 

 

さて、ブルターニュ展を大いに楽しんだ後のランチ。単にフランス料理のお店に行くのもいいですが、どうせならこの際、ブルターニュ地方の料理にしようと思い、神楽坂のブルターニュ料理で有名なお店に行きました。

 

 

(写真)ブルターニュ風魚介のスープとシードル(右奥)。シードルはボウルという伝統的なお椀でいただきます。

 

(写真)ガレット・トラディショナルとシードル(ネリオス)。ブルターニュと言えばガレットですよね~。素直に美味しい!そして、このシードルはきめが細かくてシャープ、いい感じの苦味があって、これまでの概念を変えるシードル!

 

(写真)ポム・キャラメルのクレープ、ヴァニラアイスクリーム添えと、ブルターニュ地方のりんごのフィーヌ(ブランデー)。実はリストにカルヴァドス(ノルマンディー地方のりんごのブランデー)もありました。2グラス並べて飲み比べしたくなりましたが、この後に予定があるので、さすがに自重しました、笑。

 

 

 

ということで、シードル、フィーヌ、りんごのクレープと、ブルターニュならではのりんごのお酒や食事を堪能しました!ブルターニュ展でりんごを摘み取る絵を取り上げたのは、これが理由なんです、笑。

 

 

 

 

 

さて、美術展を堪能して、お腹も満たされて、この時点で既に大満足!そのまま家に帰ってゆっくりしてもいいですが、そこは体力のあり余っているフランツ。引き続き、美術展をはしごすることにしました。国立新美術館でちょうど同じフランスのルーヴル展をやっているので、六本木まで観に行きました。

 

「ルーヴル美術館展 愛を描く」は、ルーヴル美術館の豊かなコレクションから選りすぐられた74点の名画を通じて、西洋絵画における「愛」の表現の諸相をひもとく試み。珠玉の「愛」の絵画が一堂に会する貴重な機会です。特に印象に残った絵は以下の通りです。

 

 

(写真)フランソワ・ブーシェ/アモルの標的

※ルーヴル展で購入した絵葉書より

 

この絵には観た瞬間から大いに親しみを感じます。なぜなら、2018年にドビュッシー/喜びの島を弾きましたが、その喜びの島の作曲のきっかけとなった、アントワーヌ・ヴァトー/シテール島への巡礼に相通じるものを感じるからです。

 

喜びの島を、特に冒頭のトリルや6小節目の2発の楔を弾かれたことのある方は、このアモルの絵にきっと共感いただけると思います。

 

絵の上部、ハートに矢が刺さっていたり、恋人を祝福する2つの月桂樹の冠、2羽の白い鳩など注目が行きますが、私が興味を持ったのは絵の下部。アモルが矢を焼いている様子です。

 

これは、男女2人が恋人となったので矢は不要になった、ということなんでしょうか?あるいは、愛が終わってしまったので不要となったのか?はたまた、矢を射る対象となるような男女がいない(恋愛に興味がない)ため不要となった?果たしてどんな意味や寓意があるのでしょうか?

 

2月のヴェルディ/ファルスタッフ(新国立劇場)の記事の中でも書きましたが、会社の若手の後輩たちには男女とも、仕事に加えて、恋愛も頑張ってほしいと思っています。もし自分がアモルになれたら、後輩たちに矢を乱射する気満々、笑。そのくらいの方が人生楽しいですよ!

 

 

(写真)シャルル・ル・ブラン/エジプトから帰還する前の聖家族

 

この絵には大いに感動しました。成長した凛々しい姿のキリストに惹かれたこともありますが、ここに至るまでの物語、つまりキリスト生誕からエジプト逃避行までの流れを、バッハ/クリスマス・オラトリオのバレエを通じて視覚的に体感したことがあり、そのことを思い返したからです。

 

(参考)2019.12.28 バッハ/クリスマス・オラトリオ(ハンブルク・バレエ団)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12566219735.html

 

ヨーロッパで美術館に行くと、ラファエロなどの聖家族の絵画をよく見かけますよね?私はキリスト教徒ではないので、かつてはその良さがよく分かりませんでしたが、バッハ・コレギウム・ジャパンのバッハをせっせと聴きに行って、見方が変わりました。音楽と美術の幸せな相乗効果を感じます。

 

 

(写真)サミュエル・ファン・ホーホストラーテン/部屋履き

 

この絵はオランダ絵画のコーナーにありました。神話や宗教の愛の作品が多い本展の中で一転、人間の写実的な愛を描いた絵がいろいろあって惹かれましたが、その中の一枚。部屋履きが脱ぎ捨てられていて、ドアの鍵が刺さったままですが、解説ではなかなか攻めた解釈がされていました。果たしてどんな物語があるのでしょうか?

 

 

(写真)アリ・シェフェール/ダンテとヴェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊

 

この絵も観た瞬間、ハッとさせられました!特に女性の美しさと表情。そして、女性が地獄をさまようフランチェスカ・ダ・リミニであることを絵のタイトルで知って、さらにおおっ!と唸りました!4月下旬のパーヴォ・ヤルヴィ/N響のコンサートでチャイコフスキー/幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」が演奏されますが、この絵はそのいい導入になりますね。

 

 

(写真)フランソワ・ジェラール/アモルとプシュケ(または、アモルの最初のキスを受けるプシュケ)

 

この絵は本美術展のアイコンになっているので、見かけた方もいらっしゃるかも知れません。とても可愛らしい絵ですが、私が着目したのは解説。プシュケがギリシア語で「魂」を意味することから、神の愛に触れた人間の魂が試練に耐えたのちに幸福を知る物語、と解されるようになった、ということなんだそうです!なお、プシュケには「蝶」という意味もあることから、頭上に蝶々も見られますね。

 

 

 

ということで、ルーヴル展も大いに堪能しました!「ルーヴル」しかも可愛らしい恋愛の絵が沢山あるので、特に若い女性が沢山来ていて大人気。非常に混雑していました!ご覧になる場合、平日の早い時間に行くなど、工夫をされることをお勧めします。

 

 

 

 

 

ルーヴル展も大満足でしたが、この際、今晩のディナーもこの流れで楽しんじゃいましょう!ルーヴルと言えばパリ。パリと言えば小粋なビストロ。ということで、広尾にいい感じのビストロを見つけたので、食べに行きました。

 

 

(写真)白アスパラのソテー トリュフのソース。ワインは珍しいブルゴーニュのソーヴィニョン・ブラン。春といえばホワイトアスパラですよね~。ソースはオランデーズで食べることが多いので、ペリグーは斬新でした。また、春になると爽やかなソーヴィニョン・ブランを飲みたくなります。

 

(写真)厚切りジャガイモのグラタン。ワインはブルゴーニュ・ブラン。ムルソーやモンラッシェ兄弟ももちろん素晴らしいですが、よりお値打ちなブルゴーニュ・ブランは本当に頼もしいです。

 

(写真)桜の香りの仔羊のパネ ジュ・ド・アニョ。ワインはブルゴーニュ・ルージュ(左)と、シャトー・ジスクールのオー・メドック。定石はメドック(ボルドー)ですが、香り高く華やかな仔羊なので、ブルゴーニュもいい感じでした。

 

(写真)クラシックプリン ラム酒のキャラメルソース。食後酒を所望したら、テイラー(ポートワイン)のトゥニーの20年が出てきました!濃厚なプリンとポートワインの素晴らしい組み合わせ!

 

このようにスイーツには必ず、ブランデーやポートワインなど食後酒を合わせるのがフランツ流です。スイーツの美味しさが3倍にも5倍にもなります。ぜひ試されてみてください!

 

 

 

 

 

ということで、この日は、ブルターニュ展 → ブルターニュ料理 → ルーヴル展 → ビストロという流れで、休日の一日大いに楽しみました!

 

一つ一つの美術展やレストランでの食事やお酒ももちろん楽しいですが、こうして組み合わせるとケミストリーにより、もっと楽しくなります。それができるのは東京の芸術文化やレストランの多様性と選択肢の広さ。本当にありがたい限りです。

 

 

 

 

 

 

 

(追伸)今週は5日(水)にアントネッロ・マナコルダ/読響のハイドン&マーラー、6日(木)にウィーン・プレミア・コンサートのヨハン・シュトラウス、そして昨日7日(金)に鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパンのバッハ/マタイ受難曲と、水木金の3日連続でコンサートを楽しんできました。

 

特に水曜にハイドン/交響曲第49番「受難」(やはり名曲!)を聴いた上で、聖金曜日に当たる昨日、バッハ/マタイ受難曲を聴いた流れは非常に感動的でした!(しかもバッハ・コレギウム・ジャパンのマタイ受難曲は、この日がちょうど100回目の演奏なんだそうです!)

 

そして、その感動をさらに高めたのがルーヴル展で観たこの絵。

 

 

(写真)ウスターシュ・ル・シュウール/キリストの十字架降下

 

 

ルーヴル展でこのキリストの受難の絵を観て、その印象が強く残る中、受難→マタイ受難曲と聴いたんです!これは本当に感動しますね!クラシック音楽と美術の大いなる相乗効果を感じました!