(この夏の旅行記の続き) ウィーンのオペレッタ(ウィーン気質)→ ベルリンのオペレッタ(フラウ・ルナ)と楽しんで来た今回のバート・イシュル・レハール音楽祭。トリを飾るのは、ウィーンを舞台にしたフランツ・レハールのレアなオペレッタ、ウィーンの女たちです!
Lehár Festival Bad Ischl
Franz Lehár
WIENER FRAUEN
Musikalische Leitung: Marius Burkert
Inszenierung: Angela Schweiger
Choreografie: Evamaria Mayer
Kostüme: Simone Weißenbacher
Claire, Verlobte von Philip Rosner: Sieglinde Feldhofer
Philip Rosner, reicher Verlobter von Claire: Thomas Blondelle
Willibald Brandl, Klavierstimmer und Ex Verlobter von Claire: Gerd Vogel
Johann Nepomuk Nechledil, böhmischer Musiklehrer: KS Josef Forstner
Fini, eine Tochter des Nechledils: Marie-Luise Schottleitner
Lini, eine weitere Tochter des Nechledils: Elisabeth Zeiler
Tini, eine weitere Tochter des Nechledils: Klára Vincze
Jeanette, Stubenmädel bei Rosner: Magdalena Hallste
Dr. Winterstein: Matthias Schuppli
Frau Schwott: Susanna Hirschler
Ein Sprecher: Matthias Schuppli
Franz Lehár-Orchester
Chor des Lehár Festival Bad Ischl
(写真)バート・イシュル・レハール音楽祭のプログラム冊子。今年の3演目のモチーフが描かれていて、おしゃれな雰囲気でとてもいい。2019年に続き、3演目観劇コンプリート!大のオペレッタ好きとして、光栄の至りです。
(写真)クーアパークのフランツ・レハール像。レハール・ヴィラがあるように、レハールがバート・イシュルに長く住んでいたからこそ、この素晴らしいオペレッタの音楽祭があります。感謝の一言。
(写真)バート・イシュル・レハール音楽祭の劇場クーアハウス。
メリー・ウィドウの作曲家として名高いフランツ・レハールですが、ウィーンの女たちは実際に上演された1作目のオペレッタとなります。後述するように、これがとても1作目とは思えない充実の音楽。高いクオリティの素晴らしいオペレッタです!
あらすじをごく簡単に。クレールは以前、ピアノの先生のウィリバルドに恋していましたが、ウィリバルドがアメリカに行ってしまったため、今は裕福なフィリップの婚約者となっています。結婚式の直前、クレールはかつて聴いたウィリバルドのワルツのピアノが聞こえてきて動揺します。ウィリバルドが帰ってきたんです。
フィリップはボヘミアの音楽教師ネヒレディルに頼んで、ネヒレディルの3人の娘をウィリバルドにアプローチさせます。まんざらでないウィリバルドに面白くないクレール。
最終的に弁護士に調停を頼んだところ、ウィリバルドはアメリカで結婚していたことを告白。しかし既に別れていたため、ウィリバルドは相愛のジャンネッテ(フィリップのお手伝いさん)と結ばれ、クレールとフィリップも元通りとなり、メデタシメデタシという物語です。
まず、マーチ風のウキウキの冒頭から入って、すぐに夢見心地のワルツになる序曲がめちゃめちゃ素晴らしい!さらに、その序曲の後半に差し込む、このオペレッタの物語の鍵となるピアノ・ソロによる別のワルツの旋律が、トキメキと憧れの音楽で何と素晴らしいことか!早くも涙涙…。本当にこれが最初のオペレッタ作品なんでしょうか?レハール、天才としか言いようがありません!!!
(参考)レハール/ウィーンの女たちより序曲。この10分の序曲に、この珠玉のオペレッタの全てが詰まっていると言っても過言ではありません。1:31~2:04が夢見心地のワルツ、6:59からピアノ・ソロが始まって、7:46~8:34がピアノのワルツの旋律。確かにピアノでこの旋律を弾かれたら堪らない!
https://www.youtube.com/watch?v=sWjnRhzS1jM (10分)
※Johann Strauss Orchester Salzburgの公式動画より
序曲の後、冒頭のジャンネッタの歌がとってもいい!ジャンネッタ役はMagdalena Hallsteさん。オーストリアのスーブレットは、ウィーン気質のペピ役のスーブレットのMarie-Luise Schottleitnerさんもそうでしたが、才能のある人がどんどん出てくる印象を持ちます。私はスーブレットのダニエラ・ファリーさんの大ファンなので頼もしい限り。
クレールに結婚を逡巡させるウィリバルド役は、音楽祭でお馴染みのGerd Vogelさん。う~ん、クレールよりもかなり年上に見えるので、正直、今ひとつリアリティが…。だからこそ、そんなウィリバルドでも、ピアノで弾く旋律一発でクレールを魅了してしまう展開は、同じ男性としてとても心強いものを感じます。こら~、フランツ!笑
そして、クレールのワルツの歌がめっちゃいい!クレール役はSieglinde Feldhoferさん。一昨日に観たウィーン気質のガブリエーレ、2018年のパウル・アブラハム/ハワイの花のラヤ姫など、こちらもお馴染み。複数の男性に惹かれて悩む役柄が本当に上手い!フィリップと結婚式を経てこれから、といういいところで、ウィリバルドの弾くピアノが聴こえてきて、クレールが逡巡して幕となりました。
第2幕はフィリップの依頼を受けて、音楽教師ネヒレディルの3人の娘がウィリバルドに積極的にアプローチします。フィリップいい男なので、そんな姑息な手を使わず、男として堂々と勝負すればいいのに?とも思いますが、そこはオペレッタなので面白ければ何でもOK。フィニ、リニ、ティニの3姉妹がそれぞれの方法でウィリバルドにプレゼンをして、私が私が!の主導権争いの競い合いがとても楽しい!
そして、このオペレッタで最も有名なネヒレディル・マーチをネヒレディルが歌って大盛り上がり!マーチの指揮棒を使った際どい演出もありました、笑。パウル・リンケ/フラウ・ルナでの「ベルリンの風」もそうですが、こういうキラーコンテンツ、キラーメロディのある作品は強いですね!会場を巻き込んで、大いに盛り上がりました!
(参考)レハール/ウィーンの女たちよりネヒレディル・マーチ。この曲はオーケストラだけでなく、吹奏楽でも盛んに演奏されているようです。美しい民族衣装による素敵な吹奏楽。
https://www.youtube.com/watch?v=ZOxtIhBUtAg (3分)
※BÜRGERMUSIK SAALFELDENのクラリネット奏者の方の動画より
そして、序曲でピアノで弾かれた旋律をウィリバルドが歌います。ピアノの印象的な旋律に涙しましたが、歌で聴いても感動しますね~!レハールと言えば、ホロリと泣かせる旋律を書かせてピカイチですが、その才能が第1作目からいかんなく発揮されていることを大いに実感します。クレールのローゼン・ローゼンの歌も美しい。最後はクレールの第1幕のワルツの歌からマーチで締め!
第3幕はクレールとウィリバルドのコミカルなデュエットが小粋でとてもいい味出していました。法廷のような場所でウィリバルドが、実はアメリカで結婚していたが、今はまた独身になったと告白します。そこでウィリバルドはジャンネットとあっさり結ばれて、主人公のクレールとフィリップのカップルもあっさり元サヤ。オペレッタのこの終幕に向けての展開の速さには、毎回唖然とするしかありません!笑
最後はウィリバルドのピアノの旋律を全員で合唱で歌ったエンディング。大いに盛り上がりました!そしてカーテンコールはお約束でネヒレディル・マーチ!ネヒレディルがまるでロックスターのようにブンブン腕を振り回して会場を巻き込んで、大盛り上がりとなりました!
いや~、ウィーンの女たち、めっちゃ楽しい舞台でした!この旋律の宝庫とも言うべき珠玉のオペレッタが第1作目とは、繰り返しですが、レハール、天才としか言いようがありません!!!貴重な公演を敢行してくれて、バート・イシュル・オペレッタ音楽祭、最高!!!
終演後は当初の予定では、ザルツブルクに帰ってレストランでディナーを楽しもうかと思っていましたが、今回バート・イシュルで3つのオペレッタを楽しんで、フィニ、リニ、ティニの3姉妹が楽しいオペレッタを観ました。流れは「3」という数字にあるのかな?ということで、まさかの3日連続でボルニ・バーガーを食べに行くことにしました!笑
(写真)バート・イシュルで愛されるボルニ・バーガーのお店(立ち食いハンバーガー屋さん)。2022年の今年、ボルニ・バーガーを3日連続で食べた日本人は、おそらく私だけだと思います、笑。旅先でのこういうノリは本当に楽しい!
(写真)ボルニ・バーガーは1991年に開店したので、昨年が30周年。記念のシールをもらってきました。家宝にします!笑
(写真)ウィーンの女たちにかけて「ハイツェ・シシィ」というエリーザベトの名前を冠したハンバーガーを選択。ビールは既に全2種類試したのでゲシュプリッター(白ワインを炭酸で割った飲みもの)を頼みました。ハンバーガーはとっても美味しかったですが、正直ビールの方が合うと思いました。みなさん、ハンバーガーにはビールです!
そして、帰りも美しいザルツカンマーグートの湖や山の景色を楽しみつつ、バスでザルツブルクへ帰りました。ホテルに帰って、翌朝が早いので、今晩中のチェックアウトをお願いしたら、何とホテルの夜勤担当のスタッフの方が、カードでの支払いの方法が分からないと!なんですと~!笑
ザルツブルクでよく泊まるホテルだったので、お客さんである私がクレジットカードの機械の使い方とレシートの扱い方を教えてあげました。おーい!笑
私、こういう場面に遭遇しても、イライラしたりせず、旅の楽しい思い出と微笑ましく受け止めますが、ここで感じたのは、コロナの影響。おそらく、コロナでお客さんが来ない期間が長かったので、ホテルの業務に慣れたスタッフの方が離れてしまって、新しい方を何とか雇ってギリギリ回している。そんな状況なのかな?と思ったしだいです。
宿泊業や飲食業の方々は特にコロナの影響を受けて、本当に大変でしたね…。早く元に戻ることを切に祈っております。
(写真)オーストリアのビール、カイザー。ホテルに帰ったら、やっぱりビールが飲みたくなって、ハイツェ・シシィに合わせて、締めはカイザー。この日も観光と観劇をたっぷり楽しんだ一日でしたが、そんな一日の最後、ホテルに戻ってシャワーを浴び、その後に飲むビールは最後に美味い!(続く)
(追伸)ところで今年、新国立劇場が開場25周年を迎えました。その記念記事をそのうち書こうかな?と思っていますが、25周年の記念公演として上演された演劇「レオポルトシュタット」を10月に観てきました。これが最高の演劇でした!!!
(写真)レオポルトシュタットの公演パンフ
レオポルトシュタットはウィーンに住むユダヤ人の家族が、1899年、1924年、1938年、1955年という4つの時代の間に、様々な困難に直面する群像劇です。キリスト教に改宗してまでオーストリア人として生きていこうとしても、ナチス・ドイツに併合されたオーストリアでは結局はユダヤ人として財産を没収され、生命まで奪われて…。とてもやるせないストーリーですが最後希望も残され、人生で大切なことを大いに考えさせられる素晴らしい演劇でした。
その時代の音楽や宗教、哲学、思想、政治など、難しい固有名詞がポンポン飛び交う、極めて濃い内容の演劇でしたが、トム・ストッパードさん脚本のいちいち刺さるセリフ、30人もの役者さんたちの大熱演、回り舞台の美しいセットなど、大いに惹かれました!
新国立劇場は近年はオペラを年に3~4回観に行く程度。バレエに至ってはほとんど観に行っていませんが、久しぶりに観て、演劇に非常に惹かれました。気になる演目があったら、また観に行ってみようかな?と思っています。