(この夏の旅行記の続き)この日も夕方からバート・イシュルでオペレッタを観ますが、翌日の目的地への移動を考えて、宿泊先をザルツブルグに移しました。なので、朝一番でザルツブルグに移動した後、ザルツブルグからバート・イシュルに移動します。

 

その移動を鉄道かバスかどちらにするか?かなり考えました。バスは1時間40分の長い道中となるので、コロナのリスクを考えれば座席の移動が容易な鉄道の方が無難ですが、ザルツブルク → バート・イシュルのバス路線の美しい風景も捨てがたい。ここまでの旅で、オーストリアではマスクをしている人がほとんどいないので、大丈夫かな?とトライしてみたくなり、バスを選択しました。

 

 

 

そして乗車したバス。後の人たちが乗りやすいようにと、いつもの習慣で後ろの方に座ったら…、4人のおばちゃまたちが大きな声でおしゃべりに講じていました!中には豪快に咳をする方も…。まるで昨日観たフラウ・ルナのプーセバッハ夫人のよう!たまらず前の方に席を移動しました。

 

でも、おばちゃまたち、めっちゃ元気なので、コロナには一生かからなそうな気も?笑 バスは空調こそ効いていますが、換気はどのくらいでしょうか?しばらくすると、バス停に止まると前方の入口と中ほどの出口が開き、その間に空気の流れができることが分ったので、座席を前に移動して正解でした。念のため、効くのか効かないのか両説ありますが、10分に一度は水を飲むことにしました。

 

 

30分くらい経ったところで、乗ってきたご婦人が私の隣の席に。すると、何も言わずにマスクを付けられました。さて、その理由はなんでしょう?

 

①私がマスクを付けているので、公共機関の中なのでマナーでマスク

②隣が東洋人なので、自分のためにマスク

③隣が(その時点で)世界最多の陽性者数の日本人なので、自分のためにマスク

 

私もマスクを着けているので、外見で一発で日本人とは分からないと思います。おそらく②ではないでしょうか?実は今回の旅では、朝食時に私の席の周りにはあまり人が寄って来ないように感じました。

 

また、ウィーンのまちを歩いている時に、何を言っているのか???でしたが、浮浪者風の方から罵声を浴びせられてびっくりしました。東洋人がコロナを流行らせたと思っていて、きっと「お前らのせいでこんな目に遭って、どうしてくれるんだ!」ということなんだと思います。ウィーンには何度も行っていますが、いつも極めて快適な滞在なので、こんなことは初めてです。

 

 

中国発で世界中に広まり、初期の頃には日本に停泊したダイヤモンド・プリンセス号のことも大きく報道されたコロナ。これから多くの日本人の方が海外に行かれると思いますが、同じような印象を持ったり、訳も分らずに怒鳴られる方も、おそらくいらっしゃると思います。アメリカではアジア人へのヘイトで暴力を受けた方もいるとか…。海外旅行に行かれる方は、それなりに気を付けた方が良いと思います。

 

 

 

コロナのことを気にしつつ、バスはザルツカンマーグートの美しいエリアを走ります。フシュル湖、ザンクト・ギルゲン、ヴォルフガング湖と続き、ヴォルフガング湖の途中では、湖の対岸に2019年に泊まった美しいイム・ヴァイセン・レッスルと教区教会が見えました!大いなる感動!バスを選択してみて本当に良かったです!

 

(参考)2019.8.13 ザンクト・ヴォルフガング観光(イム・ヴァイセン・レッスル)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12527496470.html

 

 

 

 

 

(写真)そうこうしている内にバート・イシュルに到着。まずはバス停近くの美しいイシュル川。このすぐ下流でトラウン川に合流します。

 

(写真)ザルツカンマーグート・テルメ。温泉保養地として有名なバート・イシュルの中心的なスパです。以前にカイザー・テルメだった頃に何度か入ったことがあります。

 

(写真)トリンクハレ。ここで鉱泉水を飲むことができます。観光案内所もあります。

 

 

(写真)まちの巡る観光列車と馬車の車。お子さんたちが遊んでいて微笑ましい光景。

 

(写真)花屋さんには色あざやかな花が沢山並んでいました。日本の花屋さんもいいですが、オーストリアの花は色の明るさとヴァリエーションが多い気がします。

 

 

 

(写真)聖ニコラウス教会。バート・イシュルでおそらく最も高い建物で、とても目立ちます。

 

(写真)聖ニコラウス教会でブルックナーがオルガンを演奏したことを表わすプレート

 

バート・イシュルで中心的な聖ニコラウス教会は、ブルックナーが教会のオルガンを弾いたことを誇りにしています。オーストリア各地を旅すると、ブルックナーがオルガンを弾いたことを伝える同様のプレートをしばしば見かけますが、オーストリアでいかにブルックナーが尊敬されているのか、窺い知れる嬉しいプレートです。

 

 

(写真)聖ニコラウス教会のオルガンの修復の必要性を訴える記事。オルガン修復の募金をしていたので、10Euroですが寄付しました。

 

(写真)聖ニコライ教会の内部(ニコライ教会のパンフレットより)。奥に見えるブルックナーの弾いたオルガンの修復に、私のささやかな寄附が役立てばとても嬉しい。

 

 

 

(写真)レープクーヒェンの広告ですが、観光客にしてみれば、何だか歓迎されている感じがしていいですね。

 

(写真)土産物屋さんの可愛い置き物。オーストリアの素朴な味わいの木工品はいい味出しています。

 

(写真)ウィーンほどではないですが、馬車にも遭遇します。

 

(写真)レハールの住んでいたレハール・ヴィラに行きましたが、改修のため、今年は決められた日しか中に入れない形になっていました…。残念ですが、仕方ありません。歴史のある建物を維持するのは大変ですね。

 

 

 

バート・イシュルのまち歩きを楽しんでいたら、お腹が減ってきました。皇室御用達のツッカベッカライであるカフェ・ツァウナーでランチを楽しむことにしました。

 

(写真)カフェ・ツァウナー。いつもテラスに多くの人がいて賑わっています。

 

(写真)注文したのは、メニューの最後に記載されていて、お店のスペシャリテっぽかった、ほうれん草のクヌーデルンとグリューナー・フェルトリナー(オーストリアの白ワイン)。クヌーデルンにはキノコとチーズのホワイトソースがたっぷり添えられています。かなり美味い!

 

グリューナー・フェルトリナーはさすがはカフェ・ツァウナーということで3種類オン・リストされていましたが、一番高いグリューナー・フェルトリナーにしてみました。これが芳醇でコクもあって、抜群に美味い!

 

 

と、美味しいランチを楽しんでいたら、立派な身なり、胸には沢山の勲章、白い豊かな頬髭を蓄えた立派な男性がご来店!バート・イシュルでたまに見かけますが、フランツ・ヨーゼフⅠ世に扮している方です!

 

そして、食事を始めましたが、将官に扮した方が「お時間なのでそろそろ…」と食事を切り上げるように促しましたが、何と首を振って拒否!そのまま食事を楽しむ姿がめっちゃ愛しい!笑

 

 

 

美味しいランチの後にデザートもほしくなりましたが、来店の人たちが列をなしているので、ささっとお会計。しかし、店を出るところで、テイクアウトで楽しむことを思い付きました。

 

 

(写真)偶然に遭遇したフランツ・ヨーゼフⅠ世に敬意を表してカイザーデザート。甘くてとっても美味しい!トラウン川沿いで楽しみました。ケーキは美味しいし、風景は素晴らしいし、心地良い風が吹いて最高!

 

(写真)しばしトラウン川を眺めていたら、何と浮き輪で川下りを楽しむ人たちを目撃!浮き輪でプカプカ浮かんで、川の流れに身を任せてめっちゃ心地よさそう!でも、橋の橋脚に激突したり、堤防で落下したり、とかは大丈夫なのでしょうか?

 

 

 

 


(写真)お腹も満たされたし、フラフラ散歩を楽しんでいたら、市立博物館にて気になる看板を発見!どうやら美術展をやっているようです。観てみましょう!

 

やっていたのは、ゲルハルト・オリヴァー・モーザー展。オーストリアの農村の風景を水彩画のタッチで素朴に描いた絵の数々に大いに魅了されました。リンツ近郊の絵が多かったですが、バート・イシュルやトラウェンキルヒェンの絵も。ザンクト・フローリアンの絵では修道院の2つの尖塔が描かれていて、以前にそこでブルックナー・オルガンによるコンサートを聴いたのを懐かしく思い出しました。

 

さりげなく、見過ごされてしまいそうな農村の風景に命を吹き込んだ素晴らしい絵画の数々に感動!旅先での偶然の出会いは本当に嬉しいものです。

 

 

(写真)ゲルハルト・オリヴァー・モーザー/冬(2021)

※上記美術展で配布された絵葉書より

 

 

 

この日はバート・イシュルに行くことだけ決めていて、どこに行くかはその時の流れで、としていましたが、結果、かなり楽しむことができました!予め旅程を詳しく決めて楽しむ旅もいいですが、気ままな旅もいいものですね。

 

 

 

そしてこの後は、三度(みたび)、バート・イシュル・レハール音楽祭でオペレッタを観に行きました。1日目はヨハン・シュトラウスⅡ世/ウィーン気質、2日目はベルリン市歌となった「ベルリンの風」が楽しいパウル・リンケ/フラウ・ルナと、まちにちなんだ名前のオペレッタを楽しんできました。

 

実はこの日観るオペレッタも、タイトルに「とあるまち」の名前が入っている、そのまちを舞台にしたオペレッタ。さて、それはどこのまちでしょうか?まちはとても有名ですが、作品自体はとてもレアなオペレッタです。次の記事で!(続く)

 

 

 

 

 

(追伸)ところで、先週は25日(火)・26日(水)・27日(木)と3日連続でサントリーホールでコンサートを聴いてきました。火曜日がシルヴァン・カンブルラン/読響でドビュッシーやヴァレーズ/アルカナなど。水曜日と木曜日がヘルベルト・ブロムシュテット/N響でグリーグ&ニールセン。最高の3日間でした!

 

印象的だったのが、エドガー・ヴァレーズ/アルカナ。初演時にさんざん酷評を浴びた、不協和音のずっと続く現代音楽ですが、カンブルランさんの見通しの良い指揮もあって、私にはほとんど古典のように聴こえて、心地良くすら感じました。初演が1927年と聞いて、(まだ20世紀前半の音楽なので)何となく合点がいったところです。

 

そして、何と言っても、ブロムシュテットさんとN響によるニールセン/交響曲第3番「広がり」!マエストロの至芸、N響の最高の演奏に、ただただ至福の時間でした!第2楽章のソプラノとバリトンのヴォカリーズが加わるところ、第4楽章の主題が長い旋律で帰ってくるところなどを始め、まあ何と素晴らしい曲なのでしょう!2日連続で聴くことができて、大いなる幸せを感じました!

 

 

奇跡の、とも言うべきブロムシュテットさんの今回のN響への客演。私は結局、マーラー9番、シューベルト1番&6番、ニールセン3番(2回)と計4回聴くことができました。足は怪我の影響がまだ残りますが、指揮ぶりはかくしゃくとして全くご健在でした。来年もマエストロの指揮でN響を聴けることを今からとっても楽しみにしています!