今年が生誕200周年となる、セザール・フランクを記念したオルガンコンサートを聴きに行きました。

 

 

ホールアドバイザー 松居直美 企画

セザール・フランク生誕200周年

メモリアル・オルガンコンサート

(ミューザ川崎シンフォニーホール)

 

第1部:梅干野安未(パイプオルガン)

第2部:廣江理枝(パイプオルガン)

第3部:松居直美(パイプオルガン)

 

~ 第1部 フランスのオルガン音楽の系譜とフランク ~

フランク/幻想曲イ長調

クープラン/「修道院のためのミサ」より ティエルスをテノールで

ボエリー/幻想曲とフーガ変ロ長調op.18-6

フランク/前奏曲、フーガと変奏op.18

ルフェビュール=ヴェリー/演奏会用ボレロop.166

サン=サーンス/「7つの即興曲」op.150より第4曲 アレグレット

フランク/祈りop.20

デュリュフレ/「来たれ創り主なる聖霊」によるコラール変奏曲op.4

 

~ 第2部 ドイツ・ロマン派とフランク ~

リスト/コラール「アド・ノス、アド・サルタレム・ウンダム」による幻想曲とフーガ

フランク/交響的大曲op.17

 

~ 第3部 バッハとフランク ~

J.S.バッハ/パッサカリア ハ短調BWV 582

J.S.バッハ/装いせよ、おお、わが魂よBWV654

フランク/3つのコラール

 第1番 ホ長調

 第2番 ロ短調

 第3番 イ短調

 

 

(写真)本公演のチラシ。フランスのサント・クロチルド聖堂で長らくオルガニストの職を務めたフランクを、まるで3人の美女が三位一体で祝福するような、とても素敵なチラシでした。

 

 

 

今年はベルギー出身でフランスで活躍した作曲家セザール・フランク(1822-1890)の生誕200周年。本公演はそれを記念する、フランクのオルガン曲を中心としたオルガンコンサートです。

 

フランクと言えば、オーケストラのコンサートでは交響曲ニ短調、室内楽のリサタルではヴァイオリン・ソナタ イ長調がよく演奏されますが、オルガンコンサートでフランクをこれだけまとめて聴くことは珍しく、とても貴重な機会です。

 

 

 

第1部は梅干野安未さんによる演奏。フランクと同時代の作曲家の小曲をちりばめた、オルガン曲の多様性を大いに感じた演奏でした。

 

特に、梅干野安未さんご自身がこの曲でフランクに目覚めたという、幻想曲イ長調が素晴らしい演奏。真摯な祈りの音楽で最後に明るさを見せるフランク/祈りから、壮麗な最後のデュリュフレ/コラール変奏曲の流れに大いに魅了されました!

 

 

 

第2部は廣江理枝さんによる演奏。リストとフランク、それぞれ30分くらいの大曲という贅沢なプログラムです。どちらも大いに盛り上がる曲で、ホールが壮大なオルガンの大音響に包まれ、圧倒的な感銘を受けました!

 

第1楽章の第2主題が特徴的なフランク/交響的大曲は当然素晴らしかったですが、必ずしもオルガンが専門でなかったリストのオルガン曲もめっちゃ凄い!

 

 

なお、リストのオルガン曲は、ジャコモ・マイアベーアのオペラ「預言者」の成功にインスパイアされて書かれた曲です。このオペラを追っかけてベルリンまで観に行った記憶がよみがえり、アド・ノス、アド・サルタレム・ウンダム(私たちのもとへ、いやしの泉のもとへ)の旋律も懐かしく聴きました。

 

(参考)2018.1.4 ジャコモ・マイアベーア/預言者(ベルリン・ドイツ・オペラ)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12354460466.html

 

 

 

第3部は本公演を企画された、松居直美さんによる演奏。松居直美さんと言えば、サン=サーンス/交響曲第3番ハ短調「オルガン付き」のオルガン演奏で何度もお世話になっています。

 

まず、最初のバッハ/パッサカリアが素晴らしい!パッサカリアと言えば、ブラームス/交響曲第4番第4楽章で有名な様式ですが、オルガン曲で聴くと、特徴がよく分りますね。

 

フランク/3つのコラールは、フランク最晩年の、最後に完成させた曲で、1曲で40分もかかる大曲です。交響曲ニ短調に似た和声がこだまして、いちいちうっとりしますが、全般的にはどちらかと言うと渋めの曲想。バッハの技法を随所に感じ、全曲を通じてコラールが形成される、というフランクの言葉がよく伝わってきます。

 

松居直美さん、この滅多に演奏されない大曲を、雰囲気をよく出して作り上げて、抜群の演奏!この卓越した企画を見事に締めていました!

 

 

 

いや~、フランク生誕200周年を記念する、本当に素晴らしいコンサートでした!14時に始まって17時半に終わる、少し長めのコンサートでしたが、こういう粋な企画のコンサートを実現していただけるのは本当にいいですね!第1部~第3部のコンセプトの描き分けもよく考えられていて、大いに唸りました。

 

フランクのオルガンの世界をたっぷり堪能することができ、フランク生誕200周年の良き思い出となりました!

 

 

 

(追伸)フランク/ヴァイオリン・ソナタ イ長調より第4楽章。フランクと言えば、ヴァイオリン・ソナタ イ長調が名曲中の名曲。特に第4楽章の美しいカノンが有名です。ぜひ聴かれてみてください!

https://www.youtube.com/watch?v=wLhQhRc9mZk (6分)

※Sophie Rosaさんの公式動画より

 

 

 

(写真)フランク/ヴァイオリン・ソナタ イ長調の楽譜と第4楽章冒頭(上がヴァイオリン、下の大きな音符がピアノ)

 

今年はスクリャービン生誕150周年なので、年明けからスクリャービンばかり弾いていましたが、この素晴らしいオルガンコンサートを聴いて、フランクも記念年だし何か弾かなくては!という気持ちになりました。ならば、美しいカノンのヴァイオリン・ソナタ第4楽章が良いでしょう!フランツ、何と感化されやすいことか!笑

 

実は、ベートーベン生誕250周年の2020年に、ベートーベン/ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調「春」を、ヴァイオリンを弾く会社の後輩と合わせようと話していましたが、コロナで残念ながら実現せず…。なので、今年こそ、コロナに終息してもらって、フランクのヴァイオリン・ソナタを合わせることができたらいいなと思います。

 

11ページありますが、スクリャービンの複雑な楽譜に慣れているので、譜面は遥かに読みやすい。ただ、ざっと見たところ、メロディライン以外に入っている重音が難しいかも?

 

いずれにしても、スクリャービンに加えて、フランクを弾ける喜び!好きな作曲家たちと沢山交流でき、今年も楽しい一年になりそうです!