渋谷のBunkamuraはザ・ミュージアムで開催中のフィンランドデザイン展を観て来ました。私は大のつくフィンランド好きですが、その素晴らしいデザインの系譜を追える、とても楽しみな企画展です!

 

 

 

本展は、フィンランドが近代化していく時代のデザインの歩みとその精華を、世界的な影響をもたらしたテキスタイルやガラス工芸作品を中心に、陶磁器や家具類、さらには同時代のさまざまな絵画、写真資料などの作品も合わせて紹介する内容です。

 

フィンランドの自然に立脚した、シンプルかつスタイリッシュで、それにも関わらず豊かさを感じる展示の数々。大いに魅了されました!絵画やポスターを中心に、特に印象に残った作品をご紹介します。

 

 

 

(写真)エルッキ・ホルッタ/フィンランドツーリスト協会のポスター「冬・夏」

※フィンランドデザイン展で購入した絵葉書より

 

これはフィンランドの冬と夏の景色を描いたポスターです。夏は森と湖の国フィンランドの魅力を堪能でき、冬は北欧の厳しい冬を思わせますが、スキーなど冬のレジャーの愉しさも垣間見えます。

 

東京からフランクフルトやウィーンへのフライトでは、途中、フィンランドの上空を通りますが、氷河によって創られた、数多くの大小様々な形の湖を確認でき、フライト中の楽しみの一つとなっています。

 

ちなみに、フィンランドには「1000の湖のある国」というニックネームもありますが、実際には、何と何と、約19万もの湖があるそうです!

 

 

 

(写真)ドラ・ユング/子連れのアヒル

 

子連れのアヒルの賑やかな作品です。実際はテキスタイルの作品で、生地が織り込まれて作られています。落ち着いた色合いがとても素敵。フィンランドには上記の通り、至るところに湖がありますが、綺麗な水の中をアヒルの親子たちが気持ち良さそうに泳いでいるのを、何度となく見かけました。

 

 

 

(写真)キンモ・カイヴァント/PMKコットン広告

 

女の子を船に見立てた、可愛らしいポスターです。フィンランドの6つの大手コットン工場が、マーケティング代理店PMKコットン工場営業所を共同設立し、プロモーションしたポスターのうちの一つです。

 

オットー・ネーベルを思わせる、あざやかな色合いがとても印象的。また、フィンランド語の特徴の一つのウムラウト(aの上に点2つ)を見ると、テンション上がる!笑 Päivää!(こんにちは!)

 

 

 

(写真)トーベ・ヤンソン/クリスマスツリー

 

フィンランドと言えばサンタクロースとムーミン、という方もいらっしゃると思います。そのムーミンの作者トーベ・ヤンソンによるクリスマスツリーの絵。クリスマスの楽しさとともに、荒々しい背景が醸し出す、自然の厳しい雰囲気も感じます。シベリウスのピアノ曲「もみの木」が合いそう。

 

 

 

(写真)トーベ・ヤンソン/アウロラ小児病院壁画 「遊び」のためのスケッチ

 

同じくトーベ・ヤンソンが、ヘルシンキのアウロラ小児病院に飾られる壁画のコンペティションに参加した時に提出した作品です。

 

実際に、小児病院の階段の吹き抜けなどに描かれた魅惑的な生き物たちは、こどもたちの気をそらし、気づかないうちに病院の待合室に移動させる役割を果たしたそう、笑。

 

なお、解説には、ムーミン物語の重要なテーマは、友情、寛容さ、そして自由、という言葉もあって、心に残りました。

 

 

 

その他、数多くのガラスやテキスタイルの作品、さらには雪のコリ国立公園の写真だったり(フィンランドのガラスデザイナーの多くは、フィンランドの寒く凍りついた冬に触発された、とのこと)、マリメッコの独特なデザインの服に目移りしたり、フィンランドにおけるアンフォルメルの画家マウリ・ファヴェンの「船歌」という絵画に魅了されたり、とても楽しめました!

 

 

 

 

 

さて、本展はフィンランドを代表する建築家、アルヴォ・アアルト(1898-1976)に関する展示も、1939年のニューヨーク万博のパビリオンの写真を始め、いろいろとありました。私は2007年にフィンランドを旅した時に、ヘルシンキの北西部にあるアルヴォ・アアルトのアトリエと自邸をガイドツアーにて観て来ました。その様子を、フィンランド旅行と併せて少しご紹介します。

 

 

 

(写真)アルヴォ・アアルトのアトリエ

※私は基本的に旅行時に室内の写真は撮りませんが、ここは撮影可能だったのと、被写体自体が鑑賞対象だったのでOKにしました。

 

まずは、アルヴォ・アアルトのアトリエ。写真は1階の共同スペースで、2階がオフィスになっています。曲線も配した外壁、採光の豊かな窓と個性溢れる照明群、空間に馴染むフォルムの机や椅子、白を基調に茶と緑と黒の落ち着く色彩。もう、さすが!としか言いようがありません!2階もスタイリッシュかつ機能的な空間でした。

 

 

 

(写真)アルヴォ・アアルトの自邸

 

続いて、アルヴォ・アアルトの自邸。有名なゼブラ模様の椅子や段々の照明、サヴォイのガラス瓶など、アアルトのデザインした家具や小物が並んでいて、とても洗練された豊かな空間でした。インテリアが好きな方には堪らないんだと思います。

 

 

 

(写真)ヘルシンキ大聖堂。ヘルシンキを代表する、ランドマークとなる建物です。フィンランドデザイン展のヘルシンキ400年を記念するポスターにも登場していました。目の前の元老院広場ともども、風格のある素晴らしい空間でした。

 

 

 

(写真)ヘルシンキの目抜き通り、ポホヨイスエスプラナーディ通りにあるマリメッコ。ここはフィンランド最大のオンリーショップだそうです。お店の中にも入りましたが、有名なウニッコ柄(ポピーの花柄)の服飾や小物が沢山あって壮観でした。

 

なお、ヘルシンキはまち並みも本当に素敵。とにかくセンスの良さを感じて、歩いていて落ち着きます。ヨーロッパのまちはどこも風情がありますが、その中でも個人的にしっくりきて、特に好きなまちです。

 

 

 

(写真)森と湖の国フィンランドを象徴する写真を1枚。ハメーンリンナ(シベリウスの生誕地)近くのアウランコというまちの森林にある古い塔の上から、フィンランドの素晴らしい森と湖の景色を堪能しました。

 

 

 

(写真)フィンランド旅行のお土産は、イッタラのマグカップとアーリッカの人形。

 

 

 

 

 

以上、今回はフィンランドデザイン展とフィンランド旅行の記事でした。私は冒頭にも書いた通り、フィンランドの大ファンですが、これほど好きになったのは、フィンランドを代表する作曲家シベリウスがきっかけです。

 

特に、交響曲第1番~第7番の深遠な世界、個性溢れる交響詩の楽しさ、ロマンティックなピアノ曲や歌曲に惹かれます。以下、近年にシベリウスのコンサートを楽しんだ記事をいくつか。

 

(参考)2017.5.23 サントゥ=マティアス・ロウヴァリ/タンペレ・フィルのオール・シベリウス・プロ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12277372798.html

 

(参考)2019.2.9 渡邉規久雄さんのピアノ・リサイタル(オール・シベリウス・プロ)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12439025794.html

 

(参考)2019.6.15 ピエタリ・インキネン/ペッカ・クーシスト/日フィルのオール・シベリウス・プロ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12482236232.html

 

(参考)2019.9.26&27 パーヴォ・ヤルヴィ/N響のシベリウス6番&7番

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12529993126.html

 

(おまけ)2017.5.19 フィンランディア(フィンランドのウォッカ)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12276322916.html

 

 

 

音楽がきっかけとなって、その国のことが好きになり、実際に旅をする。旅を通じて、他の芸術や文化にも興味が広がり、ますます、その国のことが好きになる。とても良い循環ですが、この流れは一生繰り返されることでしょう。

 

 

 

フィンランドデザイン展の図録には、菅沼万里絵さんによる「日本の心に馴染むデザイン-日本とフィンランド、ふたつの国の親和性」という素晴らしい解説がありました。その最後に、フィンランドと日本がどうしてお互いに惹かれ合うのか?美意識の共通点について、印象的な文章が載っていたので、それをご紹介して、今回の記事の締めにしたいと思います。

 

 

(以下、菅沼万里絵さんの解説の結び)

 

厳しい気候風土におかれたフィンランド同様、天災地変の多い日本もまた、自然といかに調和するかを問い続けてきた。自然に挑むのではなく、従い畏敬の念を持つという態度。過酷な自然が一方で見せる穏やかな美を決して無駄にせず拾いあげ、日常に取り入れることで安らぎの糧としてきたことが、繊細な感性を育んだのではないか。その心に深く沁み入るフィンランドのフォルムは、この先も日本で愛され続けるに違いない。