三菱一号館美術館で始まったばかりのコンスタブル展、さっそく観に行って来ました。イギリスを代表する風景画家、とても楽しみです!

 

 

ジョン・コンスタブル(1776-1837)は、1歳年上のターナーとともに、イギリスの風景画を刷新し、その評価を引き上げたことで知られています。ロマン主義やバルビゾン派の画家たちにも影響を与えました。生まれ故郷のサフォーク州、家族や友人と過ごしたソールズベリー、ハムステッド、ブライトンなど、愛着のある場所を頻繁に描写しているのが特徴です。以下、特に印象に残った作品をご紹介します。

 

 

 

(写真)ジョン・コンスタブル/ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)

※購入した絵葉書より

 

この絵は本コンスタブル展の一番の目玉と言っていいでしょう。1832年のロイヤル・アカデミー展に出品された、非常に壮麗な作品です!多くの船が集ってロンドンのテムズ河に架かるウォータールー橋の開通式をお祝いします。

 

奥の橋の左側にサマセット・ハウス、橋のさらに奥にはセント・ポール大聖堂が見えますね。非常に大きな絵で、実物は写真よりも、より赤の色彩が印象的で、祝祭感が半端ないです。ぜひ、会場に足を運んで、実物をご覧になられてみてください!

 

 

 

(写真)ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー/ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号

 

1832年のロイヤル・アカデミー展で、上記のコンスタブルの絵に並んで展示されたターナーの絵です。ターナーはおそらく自作よりもサイズが大きく、物語性に富み、暖色を用いたコンスタブルの作品の方が、寒色系でサイズも控えめな自分の海景画よりも、観客の注目を集めるのではないかと懸念し、作品の前景に明るい赤の絵具の塊を置き、ブイの形に仕上げたそうです。

 

コンスタブルは、ターナーが「ここにやってきて、銃をぶっ放していった」と語り、ターナーとコンスタブルのライヴァル争いのエピソードとなった2作品です。この2作品が実際にそろうのは、1832年の展示を除くと3回目で、ロンドン以外では初めてのことなんだそうです!東京、やりますね!

 

実際に2作品を並べて観てみると、個人的には、ターナーが赤いブイを描こうが描くまいが、コンスタンブルの作品の方に圧倒的な感銘を受ける、という印象を持ちました。そして、ターナーの作品は、むしろ赤いブイがない方が、色合い的に絵としては完結しているのではないか?という印象すら持ちました。

 

ターナーの素晴らしい作品も沢山観てきたので、これはこの2作品の比較における、たまたまのことなのでしょう。逆に、そこまでしてしまう、芸術家の逞しさを感じたしだいです。とにかく極めて貴重な2作品並べた展示、ぜひ会場でご自身の目でご覧になられてみてください!

 

 

 

(写真)ジョン・コンスタブル/フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)

 

この絵はコンスタブル展のポスターやチラシでも使われている絵で、コンスタブルが故郷のストゥーア川沿いの風景を描いた、懐かしさや豊かさを大いに感じる絵です。

 

サフォーク州はイングランド東部に位置して、基本的にフラットさがきわだつ農村地帯で、19世紀初頭の画家たちが「ピクチャレスク」な風景として注目することはほとんどなかったそうですが、コンスタブルにとってもは非常に重要な場所。ロンドンのロイヤル・アカデミー美術学校で学ぶようになってからも、毎年夏は故郷のサフォークに戻って地元の風景を描いています。

 

 

 

(写真)ジョン・コンスタブル/マライア・ビックネル、ジョン・コンスタブル夫人

 

コンスタブルが結婚する3か月前に愛妻マライアの肖像画を描いた絵です。マライア宛ての手紙に、「何があっても決してあなたの肖像画を手放したくありません。この絵を見れば、あらゆる苦悩を負った私の心もすぐに落ち着きます。毎朝最初に見て、毎晩最後に見るのがこの絵なのです。」と書いたそうです。

 

このような熱烈な言葉を贈られて、きっとマライアは喜んだことと思いますが、素敵な女性に出逢えて、こういう手紙を書くことのできたコンスタブルも男冥利に尽きると思います。

 

日本の若手の男性諸君には、ここまでカッコイイ展開でなくても、いいなと思う女性には、真摯な気持ちをたっぷり込めて、しっかりアプローチしてほしいものです。みんな頑張れ~!

 

 

 

(写真)ジョン・コンスタブル/ヤーマスの桟橋

 

海辺の風景を描いたコンスタブルの小型作品は、収集家たちに評判が良かったそうで、この作品には3つのヴァージョンが存在することが知られているそうです。コンスタブルの風景画は見事なものばかりですが、イギリスらしく、雲がとても雄弁なのが印象的。

 

 

 

(写真)ジョン・コンスタブル/草地から望むソールズベリー大聖堂のスケッチ

 

コンスタブルはソールズベリー大聖堂の2人の聖職者(ジョン・フィッシャー主教と甥のジョン・フィッシャー大執事)との親しい交流から、ソールズベリーをよく訪れました。1828年に愛妻マライアを亡くした後、ソールズベリーを訪れて描かれた絵が本作です。

 

ウォーター・メドウズ(定期的に河川をせき止めて利用する冠水牧草地)を、馬が引く荷車が水面を進む風景の後ろに、壮大なソールズベリー大聖堂が聳える構図がとても印象的。

 

 

私は2010年にロンドンに行った時に、エクスカーションでソールズベリーを訪れました。高さ123mの尖塔を誇るイングランドで最も背の高い大聖堂の威容に感銘を受けましたが、さらに感銘を受けたのが、ソールズベリー大聖堂には、王権を制限し、法の支配を成立させたマグナ・カルタのオリジナルがあること!「うわ~!これがマグナ・カルタか!」と、めっちゃ感激しました!

 

 

(写真)ソールズベリー大聖堂

 

(写真)ソールズベリーに行った時には、併せて近くのストーンヘンジにも行き、素晴らしい体験となりました。

 

 

 

(写真)ジョン・コンスタブル/虹が立つハムステッド・ヒース

 

コンスタンブルは、ロンドン近郊のハムステッド・ヒースを愛して、たびたびスケッチを描いています。視界いっぱいに広がる荒野(ヒース)とダイナミックに変化する空に惹かれたものですが、本作品はそうした作品の一つ。虹が描かれ、ハムステッド・ヒースには存在したことのない風車が加えられた、とてもロマンティックな作品です。

 

ハムステッド・ヒース!コンスタブルが好んで風景画を描いた場所は、なぜか私がイギリスで旅した場所とシンクロしますが、ハムステッド・ヒースも2019年のロンドン旅行の際に大いに楽しんだ、というよりは、広大なヒースに大いに道に迷ったところでした、笑。そのハムステッド・ヒースを描いたコンスタブルの風景画、めっちゃ親近感を覚えました。

 

(参考)2019.4.29 ロンドン観光その1(ハムステッド・ヒース&ケンウッド・ハウス)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12462719723.html

 

 

 

コンスタブル展、めちゃめちゃ楽しめました!正直に言うと、風景画にはそこまで興味を持っていませんが、今回のコンスタブル展はほぼ全編、風景画で、コンスタブルだけでなく、ターナー始め周辺の画家の風景画も沢山出てきて、大いに魅了されました!

 

5月30日(日)まで、三菱一号館美術館にて。私も図録をじっくり読んでから、再度、観に行きたいと思っています。今は時間指定のチケットを購入する形となります。素晴らしい企画展、ぜひご覧になられてみてください!