6月26日(金)は、夜に東響の素晴らしいコンサートを聴きに行って、大いに感動しましたが、日中は、上野でロンドン・ナショナル・ギャラリー展を観に行ってきました。

 

 

この美術展は、もともと3月3日から6月14日の会期でしたが、コロナの影響でオープンできず、ようやく6月18日から始まり、会期も10月18日まで延長されたものです。三菱一号館美術館と同様に時間指定制でしたが、土日出勤の振り替えで、金曜がお休みだったことを利用して、この日に観てきました。

 

 

ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、実は昨年のGWの旅行でロンドンに2日間滞在した際に、2日とも観に行って、今回の目玉のフェルメールやターナーを始めとした名画を堪能してきたばかりです。しかし、両日とも1時間くらいだったので、全然見切れていません。とても楽しみです。

 

(参考)2019.4.29 ロンドン観光その3(ナショナル・ギャラリーのフェルメール)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12462978872.html

 

 (参考)2019.4.30 ロンドン観光その7(ナショナル・ギャラリーのターナー)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12465366382.html

 

 

 

2時間くらいたっぷり観ましたが、さすがロンドンが誇る美術館の名画の数々、大いに堪能しました!特に惹かれた絵は以下の通りです。

 

 

 

(写真)カルロ・クリヴェッリ/聖エミディウスを伴う受胎告知

※ロンドン・ナショナル・ギャラリー展で購入した絵葉書より

 

「受胎告知」は、私が特に意識して観るようにしている、言わばテーマ絵画です。このクリヴェッリの「受胎告知」は、見た瞬間に「うわあ!」と、そのスケール感に圧倒されました!この絵画の立体感や奥行き、精緻な描写の素晴らしさは一体何なんでしょう?

 

特に聖霊の光がマリアさまに向かって、建物に斜めに入ってくるのが印象的。受胎告知の絵は30作品以上は観ていますが、このようなパターンは初めてです。また、左端や奥で人がその様子に気付いて見ている、というのも珍しいかも?

 

とても美しい絵ですが、気になったのが2階の柵の上に置いてある大きな植木鉢。すぐにでも転げ落ちてしまいそうな不安定な植木鉢が、マリアさまのその後の苦難を暗示しているように思えてきます。

 

この絵では大天使ガブリエルとともに聖エミディウスが描かれているのも特徴ですが、聖エミディウスはアスコリ・ピチェーノの守護聖人、とのこと。アスコリ・ピチェーノ!2018年夏にペーザロでロッシーニの音楽祭を楽しんだ時に、エクスカーションで行くことを検討したものの、時間的に難しく諦めた、憧れのまちです。ここで出逢えて何だか嬉しい!

 

 

 

(写真)ヤコポ・ティントレット/天の川の起源

 

ユピテルがヘラクレスに永遠の命を与えることを企て、眠る妻のユノの乳を飲ませようとする場面の絵です。ユノが目を覚まして、お乳がこぼれて、それが天の川(ミルキー・ウェイ)になった、というスケールの大きな絵です。

 

逆さまの天使も見えて、まるでルーベンスのような大胆な構図のダイナミックな絵。そのユノのこぼれたお乳が既に星のように輝いているのが印象的。星の形は円形で、まるでEUの旗のようですね。

 

 

 

(写真)ジョシュア・レノルズ/レディ・コーバーンと3人の息子

 

この絵は肖像画の並んだコーナーにありましたが、パッと目を惹いた絵でした。母親と3人の子供たちの、豊かさをとても感じさせる絵です。カラフルで大きなオウムもインパクトがありますね。

 

この絵は、ヴァン・ダイクが描いた「慈愛」の擬人像を下敷きにしているそうです。幼児に授乳する女性像として表される「慈愛」は、3人の小さな子供を持つ母親であったレディ・コーバーンを描くにあたり、格好の参照源となった、ということでした。

 

 

 

(写真)バルトロメ・エステバン・ムリーリョ/幼い洗礼者ヨハネと子羊

 

この絵はスペインの絵画のコーナーにありましたが、暗い背景の中、少年ヨハネと子羊の表情に一瞬で囚われた絵でした。無邪気さと賢さを併せ持ったような少年ヨハネの表情が素敵すぎる!

 

解説には、聖人ヨハネを少年の姿で表すことで、全く新しい柔和で感傷的な図像のタイプを作り上げた。子羊はキリストの象徴で、足元の紙片には「見よ、神の子羊」の文言がある、とありました。確かに子羊の表情も、どこか思索に長けた雰囲気で、ただ者(ただ羊)ではない様子です。

 

 

 

(写真)クロード・ロラン/海港

 

この絵にも一見して心奪われました。素晴らしい!明るい未来を感じさせる絵。私の大好きなカスパー・ダーヴィト・フリードリヒのロマンティックな絵を思わせます。ただし、海辺に古代風の建物があると、アーノルト・ベックリンの象徴的な絵も思わせて、少しドキッとします。

 

解説には、クロード・ロランには、古代の理想郷を思い起こさせる、情緒に富んだ「理想風景画」を大成させた、とありました。他の作品もいろいろ観てみたくなります。

 

 

 

(写真)ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル/アンジェリカを救うルッジェーロ

 

騎士ルッジェーロが生贄にされたアンジェリカを海の怪物から救うシーンの絵です。人物だったり、波の描写だったり、アングルらしい非常に精緻な絵!特に解説があった訳ではありませんが、とても惹き付けられた絵でした。ペルセウスとアンドロメダの主題にも似ていますね。

 

アングルは初めてパリに行った時にちょうど企画展をやっていて大いに魅了され、一昨年の冬にもニューヨークのフリック・コレクションで素晴らしい絵画に出逢いましたが、観る絵観る絵に惹かれる、大好きな画家です。

 

 

 

(写真)ピエール=オーギュスト・ルノワール/劇場にて(初めてのお出かけ)

 

若い女性が初めて劇場に行って観劇をする、その初々しい様子がよく伝わってくる絵です。しっかりお洒落していて、とてもいいですね。ルノワールらしい柔らかい絵。

 

ルノワールでは、昨年のコートールド展でも、「桟敷席」という、風変わりな男女の観劇の様子を描いた絵がありましたが、確かに、観劇に来る方々というのは、絵の題材になり得る、いろいろな意味で魅力のある方が多いのかも?(笑)

 

 

 

 

 

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展、名画の数々に溢れた、とても素晴らしい美術展でした!上記のほかに、昨年現地でじっくり観た、フェルメール/ヴァージナルの前に座る若い女性、そしてターナー/ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス、なども来日していて、また観ることができて嬉しい限り。心が豊かになる、素晴らしいひとときでした。

 

(なお、絵画を守ることに加えて、時間指定制で人数が限られる、ということもあってか、館内は非常に寒かったです。上着を持って行かれることを強くお勧めします。)

 

 

 

(写真)ロンドン・ナショナル・ギャラリー

 

(写真)ナショナル・ギャラリーの前のトラファルガー広場。大勢の観光客がいて、様々なパフォーマンスが繰り広げられていて、とても楽しかったです。中央はネルソン提督の像。