今年が生誕100周年のフェデリコ・フェリーニ監督の映画をご案内している、フランツの「家で過ごそう」シリーズ。これまでは「カビリアの夜」「アマルコルド」「甘い生活」と、以前に自分でも観たことのある作品をご紹介しましたが、第4回は私も初めて観る作品。フェリーニの第3作目の映画となる、青春群像です!

 

 

青春群像

(1953年公開)

 

監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ

製作:ジュゼッペ・アマト/アンジェロ・リッツォーリ

脚本:エンニオ・フライアーノ

撮影:オテッロ・マルテッリ/ルチアーノ・トラザッティ/カルロ・カルリーニ

音楽:ニーノ・ロータ

 

モラルド:フランコ・インテルレンギ

アルベルト:アルベルト・ソルディ

ファウスト:フランコ・ファブリーツィ

レオポルド:レオポルド・トリエステ

リッカルド:リッカルド・フェリーニ

サンドラ(モラルドの妹):レオノーラ・ルッフォ

ファウストの父:ジャン・ブロシャール

オルガ(アルベルトの姉):クロード・ファレール

ミケーレ:カルロ・ロマーノ

シニョーラ・ジュリア:リダ・バーロヴァ

モラルドの父:エンリコ・ヴィアリージオ

モラルドの母:パオラ・ボルボーニ

 

 

(写真)青春群像のワンシーン。カフェで寛ぐ、というよりは暇を持てあます?(笑)5人組。

※ウィキペディアより

 

(参考)青春群像のダイジェスト

https://www.youtube.com/watch?v=O85C952ueSU (3分)

※bifest2020の公式動画より

 

 

 

まずはあらすじをざっと。この映画はモラルド、アルベルト、ファウスト、レオポルド、リッカルドの仲の良い若者5人組の片田舎での友情や葛藤を描いた物語です。もういい年なのに定職に就けずにいつもブラブラしている男子5人組。モラルドの妹サンドラはまちのミス・コンテストで優勝しますが、この時既にファウストの子供を宿しており、結婚するサンドラとファウストとの夫婦関係を中心に物語が展開します。

 

 

 

冒頭はそのサンドラのミス・コンテストの優勝、そしてファウストとの結婚までが描かれます。子供ができたことが明るみとなり、ファウストは仕事を探しにミラノに行く、と言い出しますが、どう見ても逃亡にしか見えません?美女で性格も良いサンドラとの結婚なのに、一体何が不満???

 

教会での結婚式では、歌の上手いリカルドがシューベルトを歌って盛り上げます。リッカルド、式の後にファウストのお父さんに一杯どうですか?と誘ったりして、とてもいい奴!ちなみにリッカルド役はフェリーニの弟さんだそうです。

 

仲良し5人組はビリヤードをしたり、海辺を散策したり、いつもブラブラとツルんでいます。夜のまちを闊歩するシーンでは、突如、空き缶でサッカーを始めたり、道ゆく女の人にちょっかい出したり。こういうのはとてもイタリアっぽい!

 

ファウストとサンドラが映画館に行くシーン。ファウストは喜ぶサンドラが隣にいるのに、反対側の隣の席の妙齢な女性にちょっかいを出し、何と退出した女性を追いかけていきます!全くこんなに可愛い奥さんがいるのに、まじでクズ男!そしてそれを察した奥さんを泣かせてしまい…。口から出任せの言い訳も、「全く、どの口が言う!」です。

 

 

フェリーニの映画の常ですが、この作品もニーノ・ロータの音楽が抜群に良い!どこか悲しげでノスタルジックなテーマ音楽もいいですが、ところどころオペラを思わせるロマンティックな音楽が出てきます。聴いたことがあるようで、ギリギリ思い出せないような旋律。これはプッチーニですね。

 

 

カーニバルの劇場のシーンは賑やかでとても楽しいシーン。そして、ファウストはその場で偶然出逢った勤め先の奥さんに、職場でちょっかいを出すクズっぷり。それに気付いた旦那さんは即刻ファウストを首にします。それに懲りずに、退職金がちゃんと支払われていないとして、夜にお店に忍び込んで天使の聖像を盗んで…。ファウスト、久々に見事なまでの最低男を見ました。

 

 

悪事がばれてしまい、サンドラのお父さんから叱られた時のファウストの一言。

 

俺はもう30だぞ。子供じゃないんだ!

 

えっ!???あなた30歳にもなって、こんなに酷いんですか???恥を知れ~!

 

 

夫がお店の奥さんに手を出した、と聞いて、悲しむサンドラを兄貴のモラルドが慰めるのはいいシーン。モラルドは5人の中で一番年下なのに、いつも冷静に社会を見つめています。口数こそそんなにないものの、とても雰囲気のある役柄でした。

 

まちに劇団が来て、その座長のセルジョに、脚本家を志すレオポルドが積極的に売り込むシーン。リッカルドがセルジョ座長に「最近の映画を見ました」と話かけますが、イタリア語では”I due Foscari”(2人のフォスカリ)」と言っていたのが聞こえました!ヴェルディのオペラのファンには嬉しいシーン。

 

レストランで戯曲の朗読を聞いて、レオポルドの戯曲に興味を持ったセルジョ座長ですが、レオポルドの友人達が、途中から入ってきた踊り子たちに夢中になったため、怒ってお店を出て行ってしまいます。そこでセルジョ座長が一言。

 

 

君の友達には、がっかりしたね。

芸術を愛さぬ者は、人生も愛せぬ者だ。

 

 

座長の正論きた~!セルジョ座長とレオポルドは意気投合して、大いに感激するレオポルド。しかし、最後にはセルジョ座長から人気のない夜の海辺に誘われ、困惑するレポポルド!(笑)。

 

その踊り子の一人と逢引して、夜中に帰るファウスト、悲しむサンドラ。翌朝、サンドラは遂に赤ちゃんと家を出て行ってしまいます。心当たりの場所にはおらず、まちの人たちが海辺を探している、と聞いて、必死になって探すファウスト。途中、例の映画館の妙齢な女性とばったり逢いますが、さすがに相手にしません。

 

サンドラは結局、ファウストの実家にいました。早速自分の父親からビシバシと鞭打ちの罰を受けるファウスト。その音を聞いて、いたずらっ子のように笑う、ファウストの年の離れた妹が可愛い!(笑) 今回ばかりは懲りたはずと、サンドラはファウストを赦します。さてさて、果たして雨降って地固まる、となるのでしょうか?

 

そして、ラストはモラルドが仲間たちにも知らせず、人知れず汽車でまちを離れるシーンで終わりました。駅で働く少年グイドとの別れの場面は、とても印象的な、ちょっといいシーン。

 

 

 

いや~、フェリーニの第3作目の作品にして、ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した出世作。フェリーニの作品にしてはとても分りやすく、しかも独特の雰囲気や魅力に満ちて、とても味わい深い作品でした!

 

見終ってよくよく考えてみたら、これは舞台をパリから片田舎に移したラ・ボエームですね?仕事がなかなか見つからず、閉塞感がある中で、貧しく順風満帆ではない人生を歩んでいく若者たち。ニーノ・ロータの哀愁の音楽が、何とも言えない「詩情」をもたらします。

 

 

「道」や「甘い生活」のように、フェリーニの映画の中で一般的にも知られた作品ではありませんが、あの「2001年宇宙の旅」のスタンリー・キューブリック監督は、雑誌のインタビューでお気に入りの映画10本を問われた際、この「青春群像」を第1位に挙げたくらいに、生涯で最も愛した作品だそうです。

 

外出自粛が続く中ではありますが、フェリーニのとても雰囲気のある素敵な映画を観ることができたのは、何だか嬉しい。100分くらいのとても観やすい映画です。良かったら、ご覧ください!(ネットで!)

 

 

最後に、改めて懸命に治療に当たられている医療関係者のみなさまに心から感謝するとともに、新型コロナウイルスの早期の終息を強く願っております。