遂に緊急事態宣言が出てしまいましたね。その前のレベルで収まれば良かったのですが、とても手強いウイルス。ここは懸命に治療に当たられている医療関係者のみなさまに大いに感謝しつつ、1人の日本国民として、政府の外出自粛の要請に従い、しばらくは自宅から出ない生活を送ろうと思っています。

 

 

私は自分でもピアノを弾くので、自宅から出ない生活でも、毎日のように音楽の喜びを感じながら過ごすことができます。3月も土日はほとんど家にこもってベートーベンの練習に集中していました。ピアノ・ソナタやヴァイオリン・ソナタの練習が順調に進み、大きな手応えも感じています。

 

そんな中、緊急事態宣言が出されました。3月と変わらずに、家にこもってピアノをバンバン練習すればいいだけなのですが、アメブロでよく拝見させていただいているブログでは、逆にこの状況の中、家でできること、家にいることが楽しいと思えること、について積極的に書かれている方々もいらっしゃいます。

 

 

私もピアノに加えて、何か音楽以外で、この機会に家にいて楽しめることが何かできないか?

 

それを通じて、家にいることが楽しい、家で過ごすようにしよう、という機運の盛り上げに参加できないか?

 

 

いろいろと考えました。一番手っ取り早いのは、最近はほとんど週末に家飲みなので、好んで飲んでいるウイスキーを記事にするのが一番簡単ですが、少し芸がありません。

 

ウイスキー以外で、何か私ならではの、いい記事の題材がないか?さらに考えたところ、この3月に聴きに行くのをとても楽しみにしていたものの、キャンセルになってしまったコンサートに、以下の公演があったことを思い出しました。

 

 

東京・春・音楽祭

3月27日(金)20:00開演

東京キネマ倶楽部

 

東京春祭NIGHT

フェデリコ・フェリーニ・ナイト(生誕100年記念)

 

出演

ピアノ:林 正樹、ギター:鈴木大介、ベース:鈴木正人、ドラムス:大槻”KALTA” 英宣、サクソフォン:田中邦和、チェロ:五十嵐あさか

 

曲目

ニーノ・ロータ:
《道》、《8 1/2》、《甘い生活》、《アマルコルド》、《カビリアの夜》、《魂のジュリエッタ》、《カサノバ》ほか

 

 

 

エウレーカ!これだ!コンサートがキャンセルになったのは本当に残念でしたが、状況が状況なだけに仕方ありません。ならば、微力ながら私が代わりに、この機会に今年が生誕100周年であるフェデリコ・フェリーニの映画の魅力を少しでも紹介しよう!ファンとして多くの作品を観てきた、フェリーニの映画を改めて観て、その感想記事を書こう!

 

ということに決めました!日本よりもさらに大変な状況にある、イタリアへのエールの意味も込めて。まずはフェリーニの映画の中でも人気の高い、個人的にも大好きな、カビリアの夜からスタートします。

 

 

 

カビリアの夜

(1957年製作・公開)

 

監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ

製作:ディノ・デ・ラウレンティス

脚本:エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネッリ、ピエル・パオロ・パゾリーニ

撮影:アルド・トンティ

音楽:ニーノ・ロータ

 

カビリア:ジュリエッタ・マシーナ

オスカー・ドノフリオ:フランソワ・ペリエ

アルベルト・ラツァリ:アメデオ・ナザーリ

ワンダ:フランカ・マルツィ

ジェシー:ドリアン・グレイ

ジョルジョ:フランコ・ファブリツィ

手品師:アルド・シルヴァーニ

 

 

(写真)2018年にフェデリコ・フェリーニの生誕地リミニを訪れた時に見かけた、カビリアの夜のポスター

 

 

 

(以下、映画を観ての感想。ネットでいろいろな映画を1ヶ月見放題のプランに入りました。)

 

 

冒頭、恋人のジョルジョからバッグを奪われ、川に突き落とされて、溺れるカビリア…。近くのイタリア人たちが大騒ぎしながら、みんなで協力してカビリアを助けるのはイタリアらしいちょっといいシーン。カビリアは恋人から裏切られたショックのあまり、助けてくれた人々にも悪態をついて去っていきます。

 

カビリアは意気消沈してローマ郊外の家に帰ってきましたが、心配する親友のワンダにも当たってしまいます。純粋なのに素直になれないカビリア…。ジュリエッタ・マシーナのまん丸な目が悲しげになると、本当にキュンとしますね。ニーノ・ロータの哀愁の音楽が人生の悲喜こもごもを伝えます。

 

カビリアの仕事は娼婦です。仲間から男に騙されたことを揶揄され喧嘩となり、アッピア街道から高級住宅街のベネト通りへ。そこでひょんなことから、俳優でスターのアルベルト・ラツァリに拾われます。一緒に行ったナイトクラブで、入口のカーテンが塞がって、なかなか部屋に入れないカビリアが可愛い!(笑) マンボを踊るシーンでは、得意の踊りで観客の注目を浴びます。

 

ラツァリの自宅に移動し、まるで動物園のような大豪邸に驚くカビリア。ラツァリはベッドに寝転ぶと、蓄音機からはベートーベン運命の第2楽章が!いい曲だ、と初めて笑顔を見せるラツァリがとても印象的。「変わった音楽ね」、と感想を言うカビリア!(笑)

 

ラツァリから住んでいるところや仕事を聞かれて、ローマの郊外に住んでいて、アッピア街道で仕事をしている。電気とガスと水道のある家に住んでいて、体温計もあるのよ!と自慢するカビリア。可笑しさと哀しさの同居するシーン。

 

ラツァリといい雰囲気になったところで、ラツァリの喧嘩した恋人ジェシーが帰ってきてしまいました!奥の部屋に隠れるカビリアですが、そこにいた子犬がクンクン泣くのをなだめて、二人に気を遣う健気なカビリア。

 

隠れずに出て行って、ぶち壊すこともできたのに、カビリアの素性の優しさを感じさせるいいシーンです。結局ラツァリはジェシーとヨリを戻しますが、それを覗き見たカビリアの悲しい表情と言ったら!帰り際にラツァリから出されたお金を、一度は拒否するところにも凜とした心を感じます。

 

その後の、洞窟に住む人々と物資を支給するボランティアとの出逢い、巡礼やマリアさまにお願いするために人々が教会に殺到するシーンは、その時代のローマに暮らす貧しい人々のリアルな姿を映し出していて、非常に印象的でした。

 

ふと入った手品師の劇場でからかわれるカビリアですが、そこでオスカーと出逢います。出逢いのシーンでは、ブランデーでも、とお酒に誘われますが、イタリア語ではリキュールのフェルネットと話されていました。

 

オスカーとデートを繰り返し、いい雰囲気になるカビリア。心に余裕が出てきて、近所の子供たちの挨拶にも優しく反応します。また騙されることを心配するワンダ。そしてカビリアはオスカーと結婚することとなり、家財道具を全て売り払って、オスカーの元へと行きます。ワンダとの別れのシーンは感動的。

 

そして、ラストのシーン。ここは観てのお楽しみとさせていただきますが、終わり際のニーノ・ロータの感動的な音楽とともに、湧き上がるカビリアの笑顔!心の底からの感動を覚える、素晴らしいシーン!涙なくしては観ることのできない、永遠の名シーンだと思います。

 

 

 

いや~、久しぶりに観たカビリアの夜。やはり素晴らしい作品でした!とにかく、主演のジュリエッタ・マシーナの表情が本当に素敵!悲しみの表情、本当は嬉しいのに素直に喜ばずに口元をちょっとだけ緩める表情、そして満面の笑みの表情、などなど。

 

ジュリエッタ・マシーナは、あの名作「道」のジェルソミーナ役で有名ですが、このカビリア役も文句なしに素晴らしい!ちなみに、カンヌ国際映画祭の女優賞はこのカビリア役で取っています。そして、この悲しくも温かい物語に、何とも言えない味わいをもたらすニーノ・ロータの音楽も絶品です!

 

 

騙されたり、どん底に落とされても、人を信じる純粋で無垢な心がある。カビリアの夜、フェリーニの人気作、まだご覧になられていない方にはお勧めの映画です!

 

(あっ!ただし、しばらくは外出はせず、ネットで観るようにしましょう~!)

 

 

 

こんな風に、外に行かなくても、家で楽しめることは、見つけようと思えば、いろいろあると思います。新型コロナウイルスの終息に向け、お互い頑張りましょう!