9月上旬に始まって、なかなか行くチャンスがありませんでしたが、ようやく東京都美術館で開催中のコートールド美術館展を観に行きました。
このコートールド美術館展は、イギリスの実業家サミュエル・コートールドが収集したコレクションを核にできたロンドンのコートールド美術館から、印象派・ポスト印象派の絵画を紹介する企画です。
セザンヌ、マネ、モネ、ルノワールなどの名画がずらっと並んでいて、とても見応えのある美術展でした!特に印象に残ったのは以下の通りです。
(写真)ピエール=オーギュスト・ルノワール/桟敷席
※コートールド美術館展で購入した絵葉書より
この絵は一見して、もうズキュン!と響きました!まずルノワールらしい美しくふくよかな女性が正面を向くポーズ、そして後ろの男性が、こんな美しい女性がいるにも関わらず、オペラグラスで舞台ではない何かを見ているのが印象的。これは一体、どのようなシーンなのでしょうか?絵の近くに、以下の解説がありました。
女性はルノワールのお気に入りのモデルであったニニ・ロペス。彼女が扮する女性は、身につけた宝石とドレスに相応しい身分の高い既婚女性か、流行に敏感な上流階級の女性か、あるいは高級娼婦なのか、明確にはされていない。
この女性と男性については、もう無数の解釈がありそうな気がします。私の意見は…、やめとこ(笑)。せっかく絵葉書を買ってきたので、今度、友人とお酒を飲む時に、絵葉書を見ながら、ああでもない、こうでもない、と意見交換を楽しみましょうか。
なお、この絵には、収集したサミュエル・コートドールご本人による、「絵画の詩」という見事な詩があって、その展示もありました(場所が離れているので、要注意)。非常にロマンティックな詩で大いに魅了されました!
(写真)エドゥアール・マネ/アルジャントゥイユのセーヌ河岸
一見、セーヌ川の青が美しく、エレガントな印象を持つ絵ですが、解説には、マネは近代化する郊外に見られるレジャーと労働を想起させるモティーフをそれぞれの岸に配し、それらを対比するように描いた、とありました。
私はそのレジャーを示している母親と娘さんの後ろ姿に、対岸の近代化や時代の流れに対する、うら寂しい思いを感じました。
(写真)アンリ・ルソー/税関
今回の美術展は印象派の淡い雰囲気の絵が多いので、そんな中、この絵に出逢うと、明らかに異なる筆致にちょっとした驚きすら感じます。ルソーらしい、非常にきめ細やかに描かれた絵。
20年以上もパリの税関に勤めたルソーが、自らの職場を主題とした唯一の絵画、ということでした。確かに一見、その職場を普通に描いた絵のように見えますが、そこはかとなくユーモアや悲哀も感じられる、マグリットをも思わせる絵、とても印象的でした。
(写真)エドゥアール・マネ/草上の昼食
この絵を観た時、「ええ~!?これもコートールドなの?」とびっくりしましたが、有名なマネ/草上の昼食はオルセー美術館所蔵です。解説には、オルセー作品の制作中、背景の検討のために描いたと考えられる、とありました。
背景の検討のために、こんなに立派な絵を描くなんて!と再び、びっくり!(笑) 先日観たギュスターヴ・モロー展でも、有名な「出現」の絵では、多くの下絵や部分的な絵も展示されていましたが、1枚の名画の背景には、画家の方の多大なる努力があることを改めて理解しました。
(写真)エドゥアール・マネ/フォリー=ベルジェールのバー
この絵はこの美術展のポスターにも使われている絵で、マネの最後の作品、ということです。この絵もいろいろな解釈ができそうですね!私の意見は…、やめとこ(笑)。ただ、女性の物憂げな表情、右端に映っている年配の男性、同じく鏡に映っている観劇に来ている人々、そして、どうしてこの構図でバーメイドの絵を描いたのか?この当たりがヒントになりそうです。
コートールド美術館展、素敵な絵の数々に大いに魅了されました!印象派がお好きな方はご覧になられることをお勧めします。12月15日(日)まで。お楽しみに!