(台風19号により大きな被害が出たのでしばらく控えていましたが、そろそろ続きをアップしていかないと年内に終わらないので、夏の旅行記を続けます。繰り返しですが、被災された方々の生活が早く元に戻るよう、心より祈っております。)

 

 

 

夏の旅行8日目。この日は当初シュネーベルクという山に登る予定でした。ウィーンから1時間半で行ける、標高2,075mの山です。

 

ところが、この日は最高気温23℃、最低気温15℃、風7m/s。ウィーンの気温が30℃の時でも山頂は3℃だったという情報があるので、23℃だと高い気温は望めません。さらに問題なのは風。ウィーンで7m/sということは、山頂はさらに風が強い可能性が高いです。

 

経験上、気温は何とか対応できても、風ばかりはどうにもなりません。この後、大切な観劇がまだ沢山あるので、ここは無理をしないようにしましょう。旅行で最も大切なのは、事前の準備と旅行中のリスク・マネジメントです。

 

 

 

ということで、この日は急きょ予定を変更して、ウィーンでゆっくりすることにしました。まずはカフェ・ラントマン。青山にカフェ・ラントマンの支店があり、たまに食べに行くことがありますが、そのご縁もあって久しぶりに行きました。

 

(写真)カフェ・ラントマン。クリムト、マーラー、フロイトも訪れた1873年創業の由緒あるカフェです。

 

(写真)朝食はフランツ・ラントマン・フリューシュトゥックを選択。ブルク劇場が目の前に見える絶好の席、風がとても心地良かったです。

 

 

カフェ・ラントマンの朝食は素晴らしい時間でした!周りの席でも朝からゆっくり寛いでいる方々が多くて、ウィーンのこういう大人ののんびりした雰囲気って本当に好きです。これは東京ではなかなか実感できなところ。

 

 

 

続いて、大好きな美術史美術館に向かいますが、カフェ・ラントマンからそんなに距離がないので、歩いて向かいました。

 

 

 

 

(写真)ブルク劇場。ヨーロッパの演劇界で最高レベルの劇場。ここの天井画は若きグスタフ・クリムトが描いた「タオルミナの劇場」と「デュオニソスの祭壇」で、以前にガイドツアーで観たことがあります。演目を見ると、ファウストにトスカ、ドン・カルロス、ペール・ギュントなどお馴染みのものが並んでいました。

 

 

(写真)ブルク劇場の目の前はウィーン市庁舎。ここは市庁舎広場でいつも何かしらのイベントをやっています。冬場のクリスマスマーケットも有名ですね。

 

 

(写真)ウィーンということで、よくフィアカーを目撃します。そして落とし物も(笑)。

 

 

 

(写真)ブルク劇場の南側にはフォルクス庭園。ここにはエリーザベトの像があります。品があって美しい!

 

 

 

 

 

 

(写真)フォルクス庭園には沢山のバラが咲いていました。

 

 

(写真)フォルクス庭園の正面には国会議事堂。ここのギリシャ神殿風の建物と彫刻が素晴らしいですが、工事中でした。

 

 

 

(写真)自然史博物館。建物の前には小さなマンモスの像があって、子供に人気でした。

 

 

 

(写真)マリア・テレジア像。とても立派です。おっ!?図ったように、10月11日に静岡でハイドン/交響曲第48番「マリア・テレジア」を聴いてきました。上野でハプスブルク展も始まりましたね。楽しいアコーディオン弾きもいました。

 

(参考)2019.10.11 原田幸一郎/静響のハイドン/マーキュリー&告別&マリア・テレージア

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12534770506.html

 

 

(写真)美術史美術館に到着。2階で絵画を観る機会が多いですが、今回は久しぶりに1階も周って、美術史美術館の至宝、BenvenutoCellini/Salieraも観ました。

 

 

 

美術史美術館を観に行きました。特に印象に残ったのは以下の通りです。

 

 

 

(写真)まずは今年、東京でクリムト展が開催されて大いに盛り上がったということで、入口の階段の上のクリムトの壁画から。「古代ギリシャ」(上)と「エジプト」

※美術史美術館で購入した絵葉書より

 

 

Paolo VeroneseJudith with the Head of Holofernes, 1582

これまで観た中で一番美しいユディット。使用人にそれは(首)どうしたのか?と問われ、毅然としているように見えます。

 

Jacopo TintorettoSt. Hieronymus, 1571/75

聖ヒエロニムスが一心不乱に聖書を読んでいる絵。頭には聖人の黄色の光が。足元に守るようなライオンちゃん。

 

 

 

(写真)Peter Paul RubensThe Assumption of the Virgin Mary, 1611/14-1621

昨日8月15日が聖母被昇天(アッスンタ)の日だったのでこちらの絵を。圧倒的に素晴らしい!マリア様の表情と手を広げるポーズ、マリア様を担ぎ上げるちょいポチャ(笑)の天使たち。ルーベンスの2つの部屋はいつもながらに大迫力で素晴らしかったです!

 

 

 

(写真)Johannes VermeerThe Art of Painting, 1666/68

フェルメール/絵画芸術です。私がフェルメールで最も好きな絵。この絵があるので、美術史美術館には何度でも訪れたくなるのです。繊細な質感、大胆な構図と、やはり圧倒的に素晴らしい絵!

 

 

そして、GWの旅行でフェルメールの周辺の画家も注意して観たいと「今後に向けて」に書いたので、周辺のオランダの絵画もしっかり観てきました。(以下の5点の絵)

 

Pieter de HoochWoman with Child and Maid, 1663/65

母親が赤ちゃんにお乳を上げていて、メイドさんが上の子の手を繋いでいる日常の絵。メイドさんが笑顔で見ていて、いつかは私もと思っているかのよう。人物に対して部屋が大きく感じる構図。

 

Gerard ter BorchThe Apple Peeler, 1660

黒い被り物を被った女性が何とも言えない沈痛な顔でリンゴの皮を剥いている絵。子供が心配そうに覗き込んでいます。ベッドの青の掛けものの質感がいい感じ。

 

Jacobus VrelWoman at the Window, 1654

フェルメールを思わせるような室内から、窓を開けて女性が外を見ている絵。何でもない日常の一風景にも見えますが、壁に掛かっているのが喪服。きっと大切な人を亡くした悲しみにくれているのでしょう。

 

Frans van Mieris d. A.Cavalier in the Shop, 1660

貴族がお店で女性のアゴを上げて、傍若無人な振る舞いをしているように見える絵。背景の男性が冷たい視線。手前の荷物が非常に色あざやか。

 

Frans van Mieris d. A.The Doctor's Visit, 1657

医師が女性の患者を見舞いに来ている絵。脈を取って神妙な表情、女性のすがるような表情が印象的。女性の紫のガウン、背景の濃い緑など色合いも素晴らしい。

 

 

 

Hans III. JordaensCabinet of Curiosities, 1630

大好きな沢山の絵画が壁いっぱいに並べられている絵。

 

Frans FlorisThe Last Judgment, 1565

最後の審判の絵。天使に天国に連れられていく人たちがいる一方、悪魔に手錠をはめられる人、吊されたり、火にくべられたりされて地獄に落ちる人たちが沢山。

 

Hans Suess von KulmbachThe Annunciation, 1513

受胎告知の絵。至って自然体の受胎告知。天使は歩いて来たかのような自然体、マリア様は素朴な表情。頭には金色の輪、本を読んでいます。マリア様の上の光る鳩もまるでモビールのよう。ダイナミックな受胎告知が多い中で静的な絵。

 

 

 

(写真)Tizian“Gypsy Madonna” 1510

ティツィアーノ/ジプシーのマドンナです。マリア様のうつむいた表情。キリストもうつむいています。マリア様の赤と水色の服、緑の壁の背景が印象的。どうしてこの絵に特に興味を持ったのかは、次の次の記事で判明します。

 

 

(写真)Benvenuto CelliniSaliera, 1540-43

こちらは2階の絵画の部屋ではなく、1階の宝物の部屋から。美術史美術館の幕にも掲げられている、美術館の至宝です。素晴らしい!なお、作者のベンベヌート・チェッリーニは今年没後150周年のベルリオーズのオペラにもなっています。

 

 

 

この他、ブリューゲルの部屋、ティツィアーノの部屋、カラヴァッジォの部屋には傑作が多数あって、本当に素晴らしい!美術史美術館は年1回くらいのペースで訪れていますが、いつ観に行っても大いなる感動を得ることのできる珠玉の美術館です。

 

 

 

さて、素晴らしい絵画を沢山観たので、そろそろランチにしましょう。最初は久しぶりにウィーンならではのパラチンケンが食べられるお店に行こうかとも思いましたが、トラムで移動中に、前々から興味のあったジンを売りにしているお店が車窓から見えたので、そうだここを試してみよう!と思い付いて行ってみました。

 

 

 

(写真)Brokers(England/London Dry Gin 47%) & Red Bull Organics Tonic

ジンのお店、ということでジントニックを頼みました。まずはロンドンのジンから。めっちゃ美味い!ボタニックが利いて美味しいジントニック!ただし、グラスはなぜかモエ・エ・シャンドン、笑。

 

 

(写真)Kartoff Oerterreich(Dry Gin 43.5%) & Schweppes Dry Tonic

オーストリアのジンもあったので頼んでみました。こちらは濃厚なロンドンのジンに対して、ピュアなジンという印象。シーザーサラダともよく合いました。

 

 

(写真)木立に隠れていますが、リング(通り)を挟んで、斜め左正面にウィーン国立歌劇場が見える絶好のロケーションです。

 

 

シュターツオーパーを眺めながらの素晴らしい食事。雨が急に降って来ましたが、タイミング良く避難できたおまけも付きました。

 

思えば、今回の旅は羽田空港でジントニックを飲んだところから始まりました。以下はお店のお姉さんとの会話。

 

お姉さん:ジントニックはどうですか?

私:美味しいですね!実は旅の始めに東京の空港でもジントニックを飲んだんですよ。

お姉さん:どっちが美味しい?

私:両方とも素晴らしいけど、ウィーンでジントニックを飲むのは初めてで、思い出になります。

お姉さん:ありがとう!

 

旅行先のちょっとしたやりとりは楽しいものです。

 

(参考)2019.8.8 ジントニック@羽田空港

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12503008649.html

 

 

 

 

 

(写真)このお店の外側に掲げられているユニークな広告。以前から気になっていたので、今日立ち寄ってみたのでした。

 

 

 

(写真)雨上がりのウィーン国立歌劇場。2021年にばらの騎士(音楽監督のフィリップ・ジョルダン指揮)とコジ・ファン・トゥッテ(リッカルド・ムーティ指揮)を持ってきてくれるのが嬉しい!バイロイト音楽祭のニュルンベルクのマイスタージンガーの活き活きとした指揮が見事だったフィリップ・ジョルダンさんは、どんなばらの騎士を振るのか?ムーティさんの十八番中の十八番のコジは果たしてどうか?今から大いに楽しみにしています!

 

 

 

ということで、この日は急きょ予定を変更しましたが、それにしては、かなり楽しめた半日でした。さて、そろそろ観劇の時間が近づいてきたので、次のまちへと移動しましょう。(続く)