久しぶりにモーツァルト/イデメネオを観ましたが、この日のザルツブルク音楽祭の公演はまだ終わりではありません(笑)。20:30からは、日本ではほとんど幻のピアニスト、アルカーディ・ヴォロドスさんのピアノ・リサイタルを聴きに行きました。

 

 

Salzburger Festspiele 2019

Solistenkonzert

Klavier: Arcadi Volodos

Haus für Mozart

 

Franz Schubert

Sonate für Klavier E-Dur D157

Sechs Moments musicaux D780

 

Sergej Rachmaninow

Prélude cis-Moll op.3/2

Prélude Ges-Dur op.23/10

Prélude h-Moll op.32/10

 (Bearbeitung für Klavier von Arcadi Volodos)

Sérénade b-Moll op.3/5

Étude-Tableaux c-Moll op.33/3

 

Alexander Skrjabin

Mazurka e-Moll op.25/3

Caresse dansée op.57/2

Énigme op.52/2

Deux Danses op.73

Vers la flame. Poème op.72

 

 

 

(写真)開演前のハウス・フュア・モーツァルト

 

 

 

アルカーディ・ヴォロドスさんは初めて聴きますが、名前だけは馴染みがありました。2010年のショパン・コンクールで2位になった、個人的に大好きなインゴルフ・ヴンダーさんが日本で来日リサイタルをした時に、モーツァルト/トルコ行進曲(ヴォロドス編曲)というアンコールを弾いたからです。

 

始まったら普通のトルコ行進曲で、あれ!?どうして敢えてトルコ行進曲をアンコールに?と思わせておいて、途中からは超絶技巧のモーツァルト!(笑) 私はてっきりショパンのエチュードの編曲で名高いゴドフスキーのように昔の作曲家(ピアニスト)による編曲と思っていましたが、現役のピアニストによる編曲でした。そのアルカーディ・ヴォロドスさんのリサイタル、遂に聴くことができます!

 

(参考)モーツァルト/トルコ行進曲(ヴォロドス編曲)。そのインゴルフ・ヴンダーさんの演奏。2010年のショパン・コンクールの入賞者のお披露目のコンサートでも、アンコールにこれを弾いて大喝采を浴びていました。いやはや、人間って本当に凄いことができるんですね。

https://www.youtube.com/watch?v=FyLn8VDbTlA (4分)

※Klangraum Musikfestivalsの公式動画より

 

 

 

前半はシューベルト。非常に詩的なピアノ!繊細で弱音を利かせたり、間を取ったり、得も言えないニュアンスを込めていたり、独特な世界を構築していました。楽興の時の最後の曲など、大いなる聴きもの。立ち昇る長調の旋律にはトロけました!

 

会場の照明をかなり暗くして雰囲気たっぷり。えっ!?これで鍵盤が見えるの?とさえ思ったくらい。ヴォロドスさん、超絶技巧でもっとバリバリ弾く方だと思っていましたが、とにかくニュアンスに溢れた素晴らしいシューベルト!リヒテルさんのライヴもこういう雰囲気だったのでしょうか?

 

 

 

後半はラフマニノフから。有名な前奏曲は低音を強調。よく聴く曲ですが、副旋律を強調したり、ここでこの音を強調するの?と思わせるような音を浮き立たせたり、まるで別の曲のよう。素晴らしい前奏曲!3曲目の前奏曲op.23-10はラフマニノフを聴く愉悦でとても良かったです。6曲目の音の絵op.33-3も盛り上がりました!

 

 

そしてスクリャービンへと続きます。最初のマズルカはラフマニノフとのつなぎで入れたと思いますが、同じロシアの作曲家でもラフマニノフとは異なり、スクリャービンは明らかにショパンの系統、後継者ということを伝えます。

 

 

後はめくるめく後期のスクリャービンの世界。これが薄暗いハウス・フィア・モーツァルトの会場に見事に合って、神秘的で独特な世界観。後期のスクリャービンの曲想とものの見事に合います!

 

私は今年の前半にせっせとスクリャービンを練習したように(演奏会用アレグロop.18とピアノ・ソナタ第2番op.19)、大のスクリャービン好きですが、後期のスクリャービンの世界はまだ十分に掴めている訳ではなく、もどかしさを感じていました。

 

しかし、この日のヴォロドスさんのピアノで聴く後期スクリャービンは、暗い会場の雰囲気とも合って、心の中にどんどん響いてきます。遂に後期スクリャービンに開眼したリサイタル!最後の「焰に向かって」は迫力で聴かせ、ラストの神秘和音が一音一音上がっていく場面にはめちゃめちゃ痺れました!

 

(参考)スクリャービン/焰に向かってop.72(オルガン編曲)。このオルガン版は非常に聴きやすいので、ピアノ版への導入として打ってつけです。

https://www.youtube.com/watch?v=isebOgg7cc0 (7分)

※フランスのオルガニストJean-Baptiste Dupontさんの公式動画より

 

 

アンコールはバッハのアレンジ、シューベルト、リスト、リストのアレンジ。ヴォロドスさんの見事なピアノに大いに魅了されました!会場のお客さんたちも、あのヴォロドスが聴けた!という一種異様とも言える雰囲気の盛り上がり。日本にはしばらく来ていない幻の大物ピアニストのリサイタル。本当に素晴らしかったです!

 

 

 

 

(写真)この日も終演時間が遅くて、レストランでは食べることができないので、夕食は軽く。ビールはザルツブルクを代表するビール、ゲッサー。今日もダブルヘッダーでしたが、素晴らしい公演を観て聴いて火照った体のクールダウンには打ってつけです。