ケヴィン・ケナーさんがワルシャワ・ソロイスツと来日したコンサートを聴きに行きました。ショパンとノヴァコフスキというポーランド・プロ、とても楽しみです!

 

 

ケヴィン・ケナー with ワルシャワ・ソロイスツ

~室内楽で聴く、本当のショパン ピアノ・コンチェルト~

(東京文化会館 小ホール)

 

ショパン(ケナー、ドンベック編)/ピアノ協奏曲第1番ホ短調(室内楽版)

ノヴァコフスキ/ピアノ五重奏曲変ホ長調

 

 

 

このコンサートは1990年のショパン・コンクールの覇者で、ショパンの演奏で定評のあるケヴィン・ケナーさんがワルシャワの室内楽と共演すること、そしてショパンのピアノ協奏曲第1番の室内楽版を聴けること、珍しいノヴァコフスキのピアノ五重奏曲を聴けること、つまりはオール・ポーランド・プロであること、以上4点からチケットを取りました。

 

 

前半はショパン/ピアノ協奏曲第1番の室内楽版。以前にヤノシュ・オレイニチャクさんによるピアノ版を聴いたことがありますが、室内楽版(ピアノ六重奏版)は初めて、とても楽しみです。

 

第1楽章。最初の弦楽、いつものオケとは異なるノスタルジックな響きに惹き込まれました。ケヴィン・ケナーさんは第1主題の繰り返しをたっぷり。その後の上下するピアノの展開では、かなり大きく強弱の抑揚を付けていました。とても雰囲気のあるショパンです。

 

第2主題ではピアノとヴィオラとたっぷり聴かせるシーンに魅了されました。第2主題の途中、ピアノが弱くなっていって、最弱音になって浮かび上がる場面は弦楽の幽玄さ!そして、長調で第1主題が戻ってくる前の弦楽の温かさ!いつもとは違う風景、室内楽版の魅力が堪能できます。

 

ただし、刷り込みもあってか、短調の冒頭の旋律に戻る場面は、悲壮感漂うオケの分厚い響きの方がより合うようにも思いました。2回目の第2主題はピアノとチェロと合わさった響きにうっとり!素晴らしい第1楽章!

 

第2楽章。ここは単独の弦楽の生の温かい音色に、幸せな気持ちになります。注意して聴いていたら、ピアノが特にチェロと合わせて、一緒にたっぷりルバートをかけたり、弱音になったり、室内楽ならではの距離感の近さを活かした、より曲想を高めた魅力たっぷりの演奏でした。

 

第3楽章もクラコヴィアクの踊りの音楽が活き活きとして、ピアノと弦楽による愉しい演奏!室内楽版、素晴らしいピアノと弦楽でした!

 

 

全曲聴いて、室内楽版ならではの魅力をたっぷり堪能できましたが、意外だったのが、ケナーさんのピアノ自体はオケと合わせる時と同じような強さや音量だったこと。ケナーさんはオケ版だとピアノが「ダヴィデとゴリアテの闘い」のようにオケに対抗するのは大変と話されているそうですが、室内楽で音量を下げるのかな?と思いましたが、そういう様子は見受けられませんでした。もしかすると長年の「闘い」の習慣なのかも?オケでも全く問題なく聴こえそう(笑)。

 

そして、この素敵な弦楽による室内楽版を聴いた後に思ったのは、「あれっ!?オケ版では木管や金管はどこかで吹かれていたんだっけ?」でした(笑)。室内楽版で十分。むしろより生身のショパン、ショパンが意図した原風景が聴けたような気もした、素晴らしい機会でした!

 

 

 

後半はノヴァコフスキのピアノ五重奏曲。ユゼフ・ノヴァコフスキ(1800-1865)はショパンより10歳ほど年上のポーランドの作曲家。ショパンと親交があったそうです。今回のピアノ五重奏曲は全く初めて聴きます。

 

第1楽章。ハイドンかモーツァルトかと思えるような古典を感じる第1主題から入り、ショパンとの違いを感じます。第2主題は「これこそ第2主題!」と思えるようなとろけるような素敵な旋律!その後のピアノが小刻みに展開する場面は、ショパンのピアノ協奏曲の踊りの音楽を思わせます。

 

展開部ではベートーベンのようなデモーニッシュな音楽も聴かれ、おお~!と思いました。そしてラストでは何とチャイコフスキー4番のラストと同じ追い込む旋律が出て来て楽しい!(笑)

 

第2楽章。とても勢いが良く、いろいろな音が聴こえるスケルツォ。プログラムに「転調が多い」とありましたが、ほとんど気付きませんでした?スクリャービンの官能的で魅惑的な転調ばかり聴いて、感覚が麻痺しているのかも?(笑)

 

ひとしきり忙しい音楽の後は、シューマン風の陶酔的な音楽、ここは非常に印象に残りました。その後にロッシーニ/セヴィリアの理髪師に似た旋律がハッキリ聴こえて、笑いをこらえるのに必死でした(笑)。スケルツォにロッシーニを入れたのだとしたら、ノヴァコフスキ、なかなかやりますね。

 

第3楽章。プログラムにはショパンのノクターンやピアノ協奏曲第1番の第2楽章を想わせる、とありましたが、正にノクターンop.9-2と協奏曲第2楽章をブレンドしたような魅力的な冒頭、痺れました!ピアノの後、ヴァイオリンとチェロが呼応しながら音楽を繋いで行くのも素敵。とろけるような素晴らしい楽章!

 

第4楽章。ここはピアノが大活躍。鍵盤を縦横無尽に展開し、弦楽と素敵なコラボレーション。最後も賑やかに終わりました!ノヴァコフスキのピアノ五重奏曲、これはかなりの名曲なのでは?

 

 

 

ケヴィン・ケナーさんとワルシャワ・ソロイスツによるショパンとノヴァコフスキのコンサート、珍しい曲目を聴けただけでなく、極めて上質で感動的な演奏、とっても良かったです!客席もいい音楽が聴けたという充実感のもと、じんわり盛り上がっていましたね。

 

私は室内楽はほとんど聴きに行きませんが、こういう貴重な機会に立ち会えて、本当に嬉しかったです。オケと違って、室内楽だとお互いの楽器でごくごく音程やタイミングにズレが生じますが、それがまた味わいがあっていいものですね。

 

 

 

今日はケヴィン・ケナーさんのショパンが聴ける!ということで、朝からピアノを3時間練習、帰った後も2時間練習して、計5時間。スクリャービン、ベートーベンと、少しショパンも弾きました(協奏曲第1番の第2主題とノクターンop.9-2)。この3連休はオペラにミュージカルにコンサート、ピアノの練習もかなり捗って、おかげさまで非常に充実した3日になりました。音楽とともにある生活は本当にいいものです。