日フィルを創設した名指揮者、渡邉暁雄さんの息子さん、渡邉規久雄さんのピアノ・リサイタルを聴きに行きました。嬉しいオール・シベリウス・プロです!
日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念
渡邉規久雄 ピアノ・リサイタル
― シベリウスを弾く Vol.5 ―
(東京文化会館小ホール)
シベリウス/
抒情的瞑想op.40
Ⅰ:小ワルツ/Ⅱ:無言歌/Ⅲ:ユモレスク/Ⅳ:メヌエット/Ⅴ:子守歌/Ⅵ:旋律的瞑想/Ⅶ:ロンドレット/Ⅷ:スケルッツァンド/Ⅸ:小さなセレナード/Ⅹ:ポロネーズ
2つのロンディーノop.68
Ⅰ:第1番嬰ト短調/Ⅱ:第2番嬰ハ短調
4つの抒情的小品op.74
Ⅰ:牧歌/Ⅱ:やさしい西風/Ⅲ:舞踏会にて/Ⅳ:故郷にて
6つのバガテルop.97
Ⅰ:ユモレスク/Ⅱ:歌/Ⅲ:小ワルツ/Ⅳ:おどけた行進曲/Ⅴ:即興曲/Ⅵ:ユモレスク
8つの小品op.99
Ⅰ:おどけた小品/Ⅱ:スケッチ/Ⅲ:思い出/Ⅳ:即興曲/Ⅴ:クプレ/Ⅵ:アニモーソ/Ⅶ:ワルツのひととき/Ⅷ:小行進曲
組曲「ベルシャザール王の饗宴」op.51
(作曲家自身の編曲によるピアノ版)
Ⅰ:東洋風の行列/Ⅱ:孤独/Ⅲ:夜曲/Ⅳ:カドラの踊り
交響詩「フィンランディア」op.26
(作曲家自身の編曲によるピアノ版)
(アンコール)
抒情的ワルツop.96a
みなさまはシベリウスのピアノ曲は聴かれたことはありますか?素晴らしい8曲の交響曲や交響詩、ヴァイオリン協奏曲などで名高いシベリウスですが、実はピアノ曲も沢山書いていて、どれもシベリウスの魅力を堪能できる素敵な作品ばかりです。私はピアノ曲ではスクリャービン、ショパン、リスト辺りが最も好きな作曲家ですが、シベリウスのピアノ曲たちもこよなく愛しており、自分でも何曲かレパートリーに入れてよく弾いています。
今日はシベリウス弾きとして評価の高い、渡邉規久雄さんによるオール・シベリウスのリサイタル!しかも、日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念と銘打たれています!同じ時間のサントリーホールの小泉和裕/川久保賜紀/都響のシベリウス&チャイコフスキーのコンサートにも惹かれましたが、聴かなくても素晴らしい演奏になるのは分っていたので(現に信頼できる方のブログを見たら、とても良かったそうです)、私はこちらを選択しました。
前半は抒情的瞑想、2つのロンディーノ、4つの抒情的小品。シベリウスの曲をリサイタルで聴くのは久しぶりですが、シンプルな音の中に豊かな表情や感情、明るい中に宿る寂しさ、どれもチャーミングで慈しみたくなる、何とも言えない味わいのある曲の数々に魅了されました!
渡邉規久雄さんのピアノは、弱音の歌い方、シリアスな場面や重厚な場面での間の取り方など、もうこのテンポ、この強弱、この抑揚しかない、と思わせるような、非常に説得力のあるピアノ。ピタピタッと決まる素晴らしいピアノ、さすがシベリウス弾きの第一人者です。
特に「抒情的瞑想」の「子守歌」の懐かしさ、「旋律的瞑想」の不思議な響き、「ロンドレット」のリズミカルな音楽、「ポロネーズ」の楽しさ、「4つの抒情的小品」の「故郷にて」の昔の恋を思い出すようなダンスの旋律や最後の後奏の何とも言えない含蓄のあるピアノ、などが印象に残りました。
後半は6つのバガテル、8つの小品、組曲「ベルシャザール王の饗宴」 。「6つのバガテル」の「歌」の叙情的な旋律、「小ワルツ」と「おどけた行進曲」のリズミカルなコンボ、「即興曲」の不思議な和声、「ベルシャザール王の饗宴」の「夜曲」のオリエンタルな音色、「カドラの踊り」の2つの踊りと迫力のピアノ、などに魅了されました。
ラストはフィンランディア。シベリウス自身の編曲によるピアノ版です。オケでは何度も聴いていますが、ピアノ版を実演で聴くのは初めて。冒頭からの重厚な場面では、渡邉規久雄さんが小さくルフトパウゼを入れた瞬間に唸りました。長調の主題の始まりは軽やかなタッチで推進力を感じさせます。
フィンランディア賛歌の手前では、アルペジオの一撃の後にかなりの余韻。そして切々と弾かれるフィンランディア賛歌。この旋律はピアノで聴いてもめちゃめちゃ感動的!もう涙涙です…。最後にフィンランディア賛歌が帰ってくる場面はかなり抑揚を付けて大いに盛り上がりました。素晴らしいフィンランディア!
(参考)シベリウス/フィンランディア(ピアノ版)
https://www.youtube.com/watch?v=zkhRCgeYhq4 (8分)
※フィンランドのMiikka Jokelaさんの公式動画より。プロのピアニストの動画もありましたが、おそらくアマチュアのこの方の動画を。ミスタッチや弾き切れていないところも少なからずありますが、抑揚が付けられていて、とても雰囲気や想いのあるピアノ。中でも5:08~のフィンランディア賛歌は感動的。私、こういう演奏大好きです。正確な演奏だけが胸を打つわけではありません。
それにしても、ピアノ版のフィンランディアの超絶技巧っぷり(笑)。そして、ピアノだけでオケにも匹敵するこのスケール感!全国のピアノを練習されているアマチュアのみなさま。私たちは本当に凄い楽器に携わっているんです!練習、頑張りましょう!!!
東京文化会館を出たら、一度止んだ雪がまた降っていました。シベリウスを聴いた後に雪とは何だかいい感じ。めっちゃ寒いものの、心はホクホク。何しろ、アンコールが暖炉のように暖かいワルツでしたから。また一つ特別なリサイタルに立ち会えた、素晴らしい時間でした!
(参考)日本・フィンランド外交関係樹立100周年!ということで、札幌の雪まつりにはフィンランドの首都ヘルシンキの大聖堂が登場!
※さっぽろ雪まつりの公式サイトより