(夏の旅行記の続き)ウキウキのモーツァルト・マチネの余韻の中、軽い昼食を取った後、フェルゼンライトシューレに向かいました。ヘンツェのオペラ/バッカスの巫女を観るためです。

 

 

SALZBURGER FESTSPIELE 2018

HANS WERNER HENZE

THE BASSARIDS

 

(FELSENREITSCHULE)

 

Kent Nagano, Musikalische Leitung

Krzysztof Warlikowski, Regie

Małgorzata Szczęśniak, Bühne und Kostüme

Felice Ross, Licht

Denis Guéguin, Video

Claude Bardouil, Choreografie

Christian Longchamp, Dramaturgie

Huw Rhys James, Choreinstudierung

 

Sean Panikkar, Dionysus

Russell Braun, Pentheus

Willard White, Cadmus

Nikolai Schukoff, Tiresias / Calliope

Károly Szemerédy, Captain / Adonis

Tanja Ariane Baumgartner, Agave / Venus

Vera-Lotte Böcker, Autonoe / Proserpine

Anna Maria Dur, Beroe

 

Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor

Wiener Philharmoniker

 

 

 

(写真)開演前のフェルゼンライトシューレ。サウンド・オブ・ミュージックでトラップ一家が合唱祭で優勝した会場です。

 

 

 

ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(1926-2012)。みなさま、この作曲家のことはご存知でしょうか?ドイツの現代音楽の作曲家。有名な作品には、10曲の交響曲のほか、三島由起夫原作のオペラ「午後の曳航」などがあり、この「バッカスの巫女」はヘンツェのオペラの代表作ということです。

 

さて、観た感想ですが、ケント・ナガノさん指揮のウィーン・フィルがとにかく素晴らしかった!昨年のベルク/ヴォツェックでも唸りましたが、ウィーン・フィルは現代音楽を演奏しても本当に魅力的なオーケストラ、という印象です。

 

ベルクは厳しい不協和音すら柔らかくエレガントに聴こえたところもありましたが、ヘンツェは冒頭から延々と続く厳しい不協和音の音楽を、大いなる緊張感や戦慄を持って聴かせていました。このオーケストラのポテンシャルには、本当に計り知れないものがあります。ケント・ナガノさんのこの複雑な音楽の棒さばきも本当に見事。

 

演出はバッカスの熱狂を踊りを上手く使って、人間の性(さが)をこれでもか、と表現するもの。横に広いフェルゼンライトシューレに多くの群衆を展開させて、非常に見応えのあるものでした。

 

 

しかし!

 

 

いやいや内容的には、残念ながらものの見事に掴めなかった公演。もうコテンパンにやられた感じです(笑)。理由は以下の通りです。

 

 

◯音楽をを十分に予習して観に行かなかった。一度だけ通しで聴きましたが、全くの現代曲だったので、これは予習を重ねても大した効果を見込めない、旋律を覚えて楽しめるような代物ではない。むしろ時間の限られる中、夏の旅行で初めて聴く、他の3つのオペラとオペレッタに時間を割いた方が懸命と判断したからです。

 

(ただし、この優先順位付けの判断自体は、正しかったと思います。)

 

◯ストーリーがよく分からなかった。日本語の資料が全くなく、あらすじを紹介する英語のサイトをコピーして、行きのフライトの中で見て準備をしました。しかし、バッカスとバッカス信仰を止めさせようとするテーバイの王ペンテウスの物語で、ペンテウスが巫女や母親のアガウェーに殺されてしまう物語であることぐらいは分りましたが、それ以上は文や単語が難しくて、十分理解できませんでした

 

◯英語の歌詞がよく聞き取れなかった。また、広~いフェルゼンライトシューレだったので、字幕が小さくて判読が困難だった。さらにたまに読めても何だか観念的な英語(笑)でよく分からなかった。

 

◯さらには、登場人物が誰が誰だか、途中までよく分からなかった。さすがに後半にはだいたい特定できましたが、そもそも物語がよく分らない中、最後まで整理して観ることができなかった。

 

 

これでは、全くお手上げですね(笑)。久々にやってしまった!音楽が難解でも、字幕も出るし、何とかなるかな?と思っていましたが、今回ばかりは甘かった(笑)。私は初めて観る作品や読み替えの演出であっても、かなり意図を汲み取って楽しめている方だと思いますが、こういうこともたまにはあるでしょう。


しかし、この公演を観て思ったのは、私はこういう現代曲よりも、忘れられてしまった、あるいは、あまり上演されない素晴らしい作品、例えば一昨日に観たパウル・アブラハム/ハワイの花のような作品を楽しむことに、力を割いた方がいいのかな?ということでした。

 

現代曲は若い頃に沢山聴いて、苦手意識もなく、それなりに聴けますが、正直に言ってしまうと、聴いていてあまり楽しくないんです…。オケってこういう音が出せるんだ、など発見もあって、それなりに楽しめますが、やはりホロリと泣かせる、耳に心地よい旋律の方が私には合っているように思います。

 

そうであれば、現代曲よりも昔に書かれた、まだ聴いたことのない、魂を揺さぶるような感動できる作品の方こそ、より一層開拓していこう。大いに感動したパウル・アブラハム/ハワイの花と、今回のヘンツェのオペラの上演の2つを続けて体感した上で、そう強く思ったところです。いいきっかけだったのかも知れません。

 

念のため付け加えますが、これはヘンツェの作品が決して劣っている、とかいうことではありません。時間が限られる中での、個人的な優先順位付けと好みの問題です。将来のある若い方や現代音楽がお好きな方は、ぜひぜひヘンツェの音楽の世界を探求されてみてください!全力でお任せしました!(笑)

 

 

 

(写真)終演後は再びフュルストで一息。あれ!?オペラ終わったのに、飲みに行かないの?はい。この日はザルツブルク音楽祭名物、トリプルヘッダー(笑)を組める日なのです。今回の旅の最後を飾る演目。きっと、そう来たか!と思っていただけるはず。次回の記事で!