紀尾井室内管弦楽団の室内楽のコンサートを聴きに行きました。お目当は室内楽によるブルックナー/交響曲第7番です!

 

 

紀尾井ホール室内楽管弦楽団によるアンサンブルコンサート3

バラホフスキーとともにバイエルン放送交響楽団の名手たちを迎えて

ブルックナー 交響曲第7番 室内楽版

 

(バイエルン放送交響楽団メンバー)

ヴァイオリン:アントン・バラホフスキー/ダフィト・ファン・ダイク

ヴィオラ:ベン・ヘイムズ

ホルン:カーステン・ダフィン

 

(紀尾井ホール室内管弦楽団メンバー)

チェロ:伊東

コントラバス:吉田

フルート:野口みお

クラリネット:金子平

ティンパニ・打楽器:武藤厚志

 

ハルモニウム:西沢央子

ピアノ:北村朋幹/中桐

 

バリトン: 萩原潤

 

 

マーラー/さすらう若人の歌

(シェーンベルク編)

 1.恋人の婚礼の日

 2.朝に野原を往けば

 3.ぼくは燃える刃を抱え

 4.恋人の碧い二つの瞳

 

ブルックナー/交響曲第7番ホ長調

(アイスラー/シュタイン/ランクル編)

 

 

 

(写真)本公演のプログラム。色遣いがとてもいい感じ。
 

 

 

紀尾井ホール室内管弦楽団は紀尾井ホールで古典派を中心に素晴らしいコンサートを行っている珠玉のチェンバー・オケです。特に土曜のマチネでは、赤坂見附からホテルニューオータニ辺りの風情のある界隈を楽しめることもあり、大好きなコンサートです。

 

今日は珍しく室内楽。私は室内楽はピアノのリサイタル以外はほとんど行きませんが、曲目がブルックナー/交響曲第7番となると話が違ってきます。室内楽だとどんな風になるかも含め、とても楽しみです。

 

 

まずはマーラー/さすらう若人の歌。弱々しく思い悩む第1曲、自然の美しさに心を踊らせるも、最後は寂しい心持ちとなる第2曲、厳しい歌詞が心に刺さる第3曲、マーラー/交響曲1番第3楽章中間部の音楽が、既にこの世になく浮遊する魂を描くかのような第4曲と、とても聴き応えのある歌と演奏でした!

 

萩原潤さんをソロで聴くのは初めてですが、温かみがあり等身大の人間を表す素敵なバリトンですね!この方はオペラでコミカルな役柄を歌うのを聴く機会が多いように思いますが(R.シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」のハレルキンなど)、表情豊かな歌で、第2曲最後の切なくなる場面など絶品でした!

 

室内楽も素晴らしい。第2曲ではコンマスのアントン・バラホフスキーさんがマーラー/交響曲1番第1楽章の旋律を素晴らしいヴァイオリンで奏でていて魅了されました。オケと室内楽とで、音楽を受け持つ楽器が違うのも楽しいです。ピアノも効果的でしたね。

 

 

後半はブルックナー/交響曲第7番の室内楽版。第1・3楽章がハンス・アイスラー編曲、第2楽章がエルヴィン・シュタイン編曲、第4楽章がカール・ランクル編曲です。

 

第1楽章。冒頭は弦のトレモロとチェロの第1主題。弦楽は弦五部(ヴァイオリン2・ヴィオラ1・チェロ1・コントラバス1)による演奏ですが、バイエルン放送交響楽団の名手たちの豊かな音が、素晴らしいアコースティックの紀尾井ホールに鳴り響きます!この冒頭だけでめっちゃ感動!

 

その後にリズムを刻むホルンもとてもいい感じ。この曲の場合、ホルンはやはり決定的な役割を持っているので、室内楽版とは言え欠かせません。そしてハルモニウムもいい味を出していました。調整が難しいので、リード・オルガンに取って変わったとプログラムの解説にありましたが、リード・オルガンとは一味違った透明感のある優しくひなびた雰囲気の音色です。私は雅楽の笙に近いものを感じました。

 

第1楽章ラストも素晴らしい盛り上がり、アッチェレランドをかけずに、スケールの大きなタップリの演奏!大いなる感動!

 

第2楽章。この楽章は弦楽が中心になるので、五部の弦楽が大活躍。第1楽章の深い響き、第2主題の清々しい旋律に魅了されます。オケとは別の意味で、とても聴き応えのある弦楽の音色と響きが本当に心地良い。

 

3回目の第1主題の頂点を迎える盛り上がり。対位法の妙を感じるヴァオリンの6連符もしっかり入ります。ピアノが効果的に加わり、ティンパニも盛り上げて、素晴らしい聴きもの!とても室内楽とは思えない迫力のトゥッティでした!

 

第3楽章。ここはピアノが大活躍。この編曲では、ピアノはクラリネット以外の木管、ホルン以外の金管の旋律を担ったり、弦楽を裏で支えたり、前面に出るというよりは縁の下の力持ち、という役割でした。北村朋幹さんと中桐望さんがソロで弾いたり、連弾したり、いろいろな形で活躍していました。

 

第4楽章。冒頭はオケだと弦のトレモロで始まりますが、何と意表を突いてピアノのトレモロから!神秘的な雰囲気の入りです。金管がホルン1本だけなので、弦楽の響きが中心の第4楽章。これが何と言うか、とても懐かしい雰囲気を出していい感じ!

 

途中のめくるめく展開もオケを凌ぐほどの響き、充実の演奏が続きます。そして最後は冒頭と異なり、ここで弦のトレモロ!これにはググッときました!そして、ラストも大きな頂点を描いて終わりました!

 

 

また凄いのを聴いた!室内楽によるブルックナー7番!何という素晴らしい演奏!

 

 

いや~、これが本当に感動的!聴く前は、室内楽なので、雅なブルックナー、奥ゆかしいブルックナーになるのかな?と思っていましたが、十分に迫力があって、さらに個々の楽器の生の音色もより体感できた、オケとは別の魅力に溢れた演奏、非常に貴重な機会でした!

 

 

紀尾井ホール室内管弦楽団の室内楽のコンサート、とても楽しめました!もちろん、ウィーン・フィルで聴く分厚い弦楽によるブルックナー法悦は極めて感動的ですが、室内楽も相当にいいと思いました。アーノルド・シェーンベルクが今からちょうど100年前の1918年にウィーンで始めた「私的音楽演奏協会」のコンサートを参考にした、紀尾井ホールならではの企画です。会場もめっちゃ盛り上がっていましたね!

 

 

 

(追伸)ブルックナー7番を次に聴くのは来年10月のサントリーホールの小泉和裕さんと都響の公演です。今年11月のブラームス4番が極めて充実の響きの名演だったので、ブルックナーも今から名演の予感がヒシヒシとします。大好きな曲のライヴは年に1回程度、ここぞとばかりに集中して聴く感じで十分でしょう。本当に楽しみです!