サントリーホールのウィーン・フィル・ウィーク2018のオープニング・コンサートを聴きに行きました。

 

 

ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン2018オープニング

室内楽スペシャル

《ウィーン・フィル オペラを謳う》

(サントリーホール)

 

R.シュトラウス/オペラ『カプリッチョ』より弦楽六重奏曲

ポッパー/演奏会用ポロネーズ(チェロ四重奏)

マスカーニ/オペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』より間奏曲(チェロ四重奏、ハープ)

ワーグナー/オペラ『ローエングリン』より前奏曲(ヴァイオリン・アンサンブル)

モーツァルト/ハルモニームジークによるオペラ・メドレー(オペラ『フィガロの結婚』より)(木管アンサンブル)

 

ワーグナー/『ジークフリート牧歌』(室内アンサンブル)

ワーグナー/『ヴェーゼンドンク歌曲集』より第5曲「夢」(室内アンサンブル)

ビゼー/オペラ『カルメン』より(コントラバス四重奏)

ウェーバー/オペラ『魔弾の射手』より「狩人の合唱」(ホルン四重奏)

バーンスタイン/ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』よりシンフォニック・ダンス(打楽器アンサンブル)

フライベルク/『アウスゼーのファンファーレ』(金管アンサンブル)


 

 

このコンサートはウィーン・フィルのメンバーの室内楽により、オペラの様々な曲を楽しむコンサートです。今回のウィーン・フィルの来日公演の中で、どれか一つを聴きに行こうと思いましたが、私はこのコンサートを選択したものです。

 

なぜなら、ウィーン・フィルとオペラの曲の楽しいコンサート、ということもありますが、

 

曲目に、バーンスタイン/ウエスト・サイド・ストーリー!!!

 

があったからです。ウィーン・フィルのメンバーによるシンフォニック・ダンス!何という素晴らしい企画!


 

 

まずはR.シュトラウス/カプリッチョ。冒頭からの弦の音色にこみ上げてくる感動!短調になる前の余韻たっぷりの響き。激しくなる場面では登場人物の音楽家フラマンの情熱を感じます。最初から飛び切りの素晴らしい演奏!カプリッチョ、いつかウィーン国立歌劇場で観たいオペラです。

 

続いてポッパー/演奏会用ポロネーズ。ダーヴィト・ポッパー(1843-1913)は20代でウィーン・フィルの首席を務めたプラハ出身のチェロ奏者で、チェロ奏者やチェロ学習者にとって欠かせない作曲家、とのことでした。民族的で、途中にロマンティックな旋律も出てくる素敵な曲。4本のチェロの奥ゆかしい音色にメロメロです。

 

続いてマスカーニ/カヴァレリア・ルスティカーナ。美しい響きに魅了されます。ハープが加わって夢見心地に。来年5月にラザレフさんと日フィルで聴く予定ですが、今日の演奏を聴くと、もはや(いい意味で)怖いもの見たさに聴きに行くイメージしか思い浮かびません(笑)。

 

続いてワーグナー/ローエングリン。第2ヴァイオリンのみなさんによる演奏ですが、艶やかで柔らかい弦!ドイツのオケで聴くローエングリンとは明らかに異なります。途中ヴィオラに持ち替える方も。お尋ね者となり、ドイツに帰れなかったワーグナーが初めてローエングリンを聴いたのはウィーンです。大いなる感動!

 

続いてモーツァルト/フィガロの結婚。これは本当に楽しい演奏!序曲、伯爵夫人の歌、フィガロの歌、最後に「もう飛ぶまいぞこの蝶々」。ファゴットがテテテテテテテテ♪とリズムを刻んでいい感じ。そして、何と軽やかなオーボエ!「もう飛ぶまいぞこの蝶々」はドン・ジョバンニの最後に出てくるのと似た雰囲気でした。楽しい!
 

 

 

後半はワーグナー/ジークフリート牧歌から。これも雰囲気のある演奏!かなり抑揚を付けていた印象です。ジークフリートと森の小鳥が喜び勇んでブリュンヒルデの眠る炎の山に向かう、第2幕最後の音楽も聴こえてきて楽しい。ホルンが「愛の決心の動機」を奏でる場面は高まっていいですね!

 

なお、ワーグナーの自宅での初演には、かの大指揮者ハンス・リヒターも参加し、もともとホルンを吹くところ、ワーグナーのためにトランペットに挑戦したそうです!ええ!?ハンス・リヒターって指揮だけじゃないんだ!

 

続いてワーグナー/ヴェーゼンドンク歌曲集より「夢」。冒頭はトリスタンとイゾルデ第2幕の夜の帳が降りて雰囲気が高まる場面の音楽!ソロ・ヴァイオリンでコンマスのフォルクハルト・シュトイデさんが加わりましたが、ずり上げを効果的に使ったり、曲想を大いに高めていました。

 

続いてビゼー/カルメン。珍しいコントラバス4本による演奏。いや~凄いもの聴きました!1幕→3幕→2幕→4幕の前奏曲を弾きましたが、コントラバスがこんなに旋律を見事に弾くなんて!マーラーは交響曲第1番第3楽章のコントラバス・ソロは、コントラバスなのでよちよち歩きのような演奏をイメージしたと聞いたことがありますが、今日の演奏を聴いたら、きっと卒倒しますね!

 

続いてウェーバー/魔弾の射手。これはホルン4本による演奏。円やかで味わいのあるホルン。勇ましい曲ですが、全然威圧的でなく、柔らかくおっとりしたところすらあるホルンはウィーン・フィルならでは。とても魅了されました。

 

 

そしていよいよお待ちかね、バーンスタイン/ウエスト・サイド・ストーリーのシンフォニック・ダンス!5人の打楽器奏者によるアンサンブルです。冒頭から様々な打楽器を駆使して、雰囲気ありまくりの素晴らしい演奏!サムウェアはヴィブラフォンが響いて幻想的!

 

モヤがかかってまだ見ることができないけど、どこかにみんなが幸せに暮らせる土地がある。そんなイメージを持たせるヴィブラフォンの音色で聴くサムウェア!大いなる感動で涙涙…。裏でタンタタン♪タンタタン♪と合いの手を入れるマリンバもいいですね。マンボも見事な演奏!「マンボ」の掛け声もバッチリ決まりました。ウィーン・フィルの打楽器のみなさん、大いに魅せました!

 

プログラムにはウィーン・フィルの楽団長のダニエル・フロシャウアーさんのメッセージが載っていました。「この『室内楽スペシャル』のプログラムは、ヨーロッパとアメリカの音楽伝統の作品の多彩なアレンジから構成されています。その中に、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の歴史の中で最も重要な指揮者の一人である、類い稀なる芸術家レナード・バーンスタインの作品がありますが、今年は彼の生誕100周年でもあります。」と書かれていました。

 

ウィーン・フィルがバーンスタイン生誕100周年をお祝いする、貴重な打楽器アンサンブルによるウエスト・サイド・ストーリーのシンフォニック・ダンス!それを聴くことができて感無量!また一つ、バーンスタイン生誕100周年の思い出ができました。

 

一昨日はブルーノート東京でアメリカのビッグ・バンドによるジャズにアレンジされたウエスト・サイド・ストーリーを聴いて、今日はウィーン・フィルによるウエスト・サイド・ストーリー!東京って、本当に素晴らしいまちです。

 

 

最後はフライベルク/アウスゼーのファンファーレ。ゴットフリート・リッター・フォン・フライベルク(1908-62)は往年のウィーン・フィルのメンバーで、R.シュトラウス/ホルン協奏曲第2番を初演した名ホルン奏者。この曲はウィーン・フィル舞踏会で大統領入場の歳に演奏される恒例のファンファーレ、とのことでした。金管のみなさんがズラッと並んで壮観。金管が大活躍する曲ですが、どこか柔らかく人の温もりがある金管の競演。素晴らしい締めの演奏でした!

 

 

 

室内楽の公演ですが、結局、ウィーン・フィルのほとんどのパートが出演したのでは?まるで11月に京都の南座で行われる、歌舞伎の吉例顔見世興行のよう(笑)。終演後に出演したメンバー全員が舞台にずらっと並んで、会場から大きな拍手。私はこのオーケストラのことが本当に好きです。

 

20日(火)からいよいよサントリーホールでのオーケストラのコンサートが始まりますね。みなさま、どうかお楽しみに!