レニーの愛弟子の佐渡裕さんが指揮する、ウエスト・サイド・ストーリーのシネマティック・フルオーケストラ・コンサートを観に行きました。

 


バーンスタイン生誕100周年記念

ウエスト・サイド物語

シネマティック・フルオーケストラ・コンサート

(東京国際フォーラム ホールA)

 

指揮:佐渡 裕

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 

 

(写真)本公演のプログラム

 

 

午前中にグノー/ロメオとジュリエットを観に行ったのは、夜にウエスト・サイド・ストーリーを観るから、でした。ご存知の通り、ウエスト・サイド・ストーリーはロメオとジュリエットの現代版として制作されたミュージカル。物語がシンクロし、違いを体感するのも楽しいです。

 

 

このコンサートはウエスト・サイド・ストーリーの映画を観ながら、映画に合わせて、オケが音楽を演奏するものです。歌は映画のオリジナルなので、歌以外の音楽だけをオケが受け持つ形となります。

 

 

最初に佐渡裕さんからお話がありました。小学生5年の時、初めてのお小遣いで買ったレコードがバーンスタインのマーラー1番だったこと。6歳年上のお兄さんがカラヤンのレコードを持っていたので、佐渡さんはバーンスタインにしたとのことでした(笑)。

 

1985年に広島でレニーのウエスト・サイド・ストーリーを聴き、全身の全ての細胞から音楽が出てくるような演奏にショックを受け、さらにスピーチにも感銘を受けて、レニーに教えてもらおう、と決意したこと。1990年のPMFに参加し、共に指揮をしたが、それが最後になったこと、など、非常に感動的なお話でした。周りには早くも涙ぐんでいる方が。

 

 

 

さて公演が始まりました。映画の方は20年ぶりくらいに観ますが、最近ミュージカルばかり観ているので、かなり忘れています。冒頭のジェッツとシャークスの2グループの絡みの踊りや、ダンスパーティを楽しみにしているマリアが、試着のドレスでクルクル回ってそのままダンスシーンに移るところなど、映画の技法としても斬新な作りです。

 

「マンボ」はミュージカルよりゆっくりのテンポ。トニーとマリアがお互いに気付く幻想的なシーンで涙…。「チャチャ」はタ~ラッタッタッタッタッの後に指でパチパチが入るのがいい。シンフォニック・ダンスでも入れた方が雰囲気出ると思うのですが?

 

「マリア」では、マリアとの出逢いに、トニーが周りが見えないくらいに魅了された感じがよく出ていました。「アメリカ」ではプエルトリコでなくアメリカを揶揄するセリフが印象的。アニタたちシャークスの女性陣の踊りが素晴らしい!

 

そして「トゥナイト」。これまでの曲を聴くと、ミュージカルの方が上かな?と思っていましたが、ここのシーンは本当に素晴らしい!もう涙が溢れて溢れてたまりませんでした!特にトニーよりの目線でバルコニーの下からマリアを見上げるカット!不朽の名作における永遠のワンカットだと思いました。ナタリー・ウッドのマリア、リチャード・ベイマーのトニー、最高の2人!

 

「クラプキー警部」はジェッツのみなさんの芸が細かくて楽しい!リーダーなのに、みんなから頭をバンバン叩かれいじられるリフ!(笑)愛されているリーダーを描くとともに、この後、殺されてしまう悲劇をより強調します。

 

ジェッツとシャークスの乱闘の打ち合わせにクラプキー警部が入ってきますが、それぞれのグループの憎悪を掻き立てるかのような言動。映画では、少年たちの非行の原因の一端は大人たちにあることを、ミュージカルよりも強調していました。

 

 

 

休憩後、「アイ・フィール・プリティ」は狭い服飾店の裏部屋でマリアを始め4人がキビキビ踊るのが楽しい!そして、マリアがトニーと2人になっての「ワン・ハンド・ワン・ハート」。じゃれ合っていた2人がシリアスになっての静かな感動の歌。

 

そして場面が急に変わっての「トゥナイト5重唱」。いつ聴いても感激するこの5重唱ですが、映画の場合1声ずつ順に切り替えていく形となるので、ここは5声全ての動きと歌が楽しめるミュージカルの方が圧倒的に感動的かも知れません。

 

乱闘のシーンはコンクリートに囲まれた無機質な高速道路の下の映像がリアリティ。リフが刺され、怒りに我を忘れたトニーがベルナルドを刺し…。エニィボディズはトニーを助け、ナイフも持ち帰るお利口さん。

 

トニーを待つマリアに、兄さんを殺してしまった、とトニーが悲しい知らせ…。そして「どこか遠くに行こう」のセリフが出てきて、すぐに涙が溢れてきます。もちろん、この後に名曲「サムウェア」が出てくるから。2人が歌う感動の「サムウェア!そして、このシーンにバレエを持ってきたミュージカルも改めて凄いことを実感しました!

 

「クール」はリフが殺されてみなが動揺する状況を鎮める歌になるので、映画の方がより流れが相応しいと思いました。シャークスの女性陣に比べると出番の控えめなジェッツの女性陣のカッコイイ踊りも素晴らしい!

 

そしてエニィボディズが、チノが銃でトニーを狙っていると貴重な情報をもたらすシーン。よくやったと誉められて仲間に加わったエニィボディズが喜ぶシーンはもう大好きです。

 

そしてアニタとマリアが対決する「ア・ボーイ・ライク・ザット」から「アイ・ハヴ・ア・ラヴ」の流れ。もうこれは涙するしかありませんね…。感動の「アイ・ハヴ・ア・ラヴ」!

 

特に映画だと、最初恐い顔で入ってきたアニタの表情が、マリアの愛を訴える歌に、みるみる内に共感に変わっていく様子がよく分かります。アニタは永遠のアニタ、リタ・モレノ。最後、手を取り合っての2重唱はウエスト・サイド・ストーリーで最も感動的なシーンの一つ。

 

そしてフィナーレ。チノの銃で撃たれたトニーが「サムウェア」を歌いながら亡くなるシーンは本当に泣けます…。そして、トニーの亡骸をジェッツの3人が運ぼうとして、上手く運べないのを、シャークスの2人が助けるシーンにも感動。初めての共同作業。

 

最後、マリアは黒のヴェールを顔に被って去って行きました。ミュージカルではヴェールを撥ねのけた演技が入っていたので好対照です。

 

 

 

いや~、やはり不朽の名作は色あせない。素晴らしい上演でした!最後は周りの席では、すすり泣きだったり、目を真っ赤に腫らした人だったり続出。私もボロボロになりました…。映画の良いところ、ミュージカルの良いところ、午前中に観たロメオとジュリエットとの対比、いろいろ体感できました。

 

オーケストラは映画に合わせなければいけないので、どうしても窮屈な演奏になりますが、それでも生のオケが入るのはやはり贅沢なものです。バーンスタイン生誕100周年に、こんなに素敵な企画を本当にありがとうございました!