サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデンのオール・ドビュッシー・プロの室内楽コンサートを聴きに行きました。

 

 

ドビュッシーと反好事家八分音符氏

(ムッシュー・クロッシュ・アンティディレッタント)

(サントリーホール ブルーローズ)

 

ピアノ:児玉 桃

バリトン:町 英和

ヴァイオリン:鍵冨 弦太郎

チェロ:新倉 瞳

朗読:堀江 一眞

 

ドビュッシー/

『前奏曲集』第2巻より「月の光が注ぐテラス」

チェロ・ソナタ ニ短調

『フランスの3つの歌』より「洞窟」

『フランソワ・ヴィヨンの3つのバラード』より「母の求めにより聖母に祈るために作られたバラード」「パリ女のバラード」

『忘れられた小唄』より「木馬」

『愛し合う二人の遊歩場』より「いとしいクリメーヌよ、私の忠告を聞き入れておくれ」「おまえの顔を見て私はおののく」

『忘れられた小唄』 より 「グリーン」

ヴァイオリン・ソナタ ト短調

 

 

私は室内楽は全くの不案内。コンサートもピアノ・リサイタル以外はほとんど聴きに行っていませんが、このコンサートはオール・ドビュッシー・プロ。今年はドビュッシーの没後100周年なので、いろいろ聴いてみたいと思います。ということで、午後にお休みを取って、マチネの公演を聴きに行きました。

 

このコンサートでは、冒頭や音楽の途中に、俳優の堀江一眞さんによる語りが入り、ドビュッシーの生涯や語った言葉を紹介しながら進みます。「芸術は美しい偽りだ」「音楽はできるだけ余計なものを省いた方がよい」などなど。タイトルの「反好事家八分音符氏」とは、ドビュッシーの音楽評論の中に登場する人物。辛辣な、しかし好奇心を刺激してやまない言葉づかいで、音楽について語ります。堀江一眞さん、とてもいい味を出していました。

 

 

最初は「月の光が注ぐテラス」。私、名曲揃いの前奏曲集第1巻はもちろん好きですが、第2巻の渋い曲たちもかなり好きかも知れません。児玉桃さんによる繊細で神秘的な、とても素敵なピアノでした。

 

2曲目はチェロ・ソナタ。新倉瞳さんは初めて聴きましたが、非常に魅了されました!大きく抑揚を付けて、雰囲気たっぷりにチェロを奏でていきます。音を激しく刻んだり、ピツィカートにしたり、ポルタメントを入れたり、ごくごく弱音にしたり、とても多彩な弓遣い。音楽が本当に活き活きとしています。

 

チェロ・ソナタはドビュッシー最晩年の曲。予習で聴いても音楽がさっぱり入ってきませんでしたが(笑)、新倉瞳さんの素晴らしいチェロで聴くと、ビンビン伝わってきます。特にジャズっぽい響きの第2楽章に惹かれました。また一人、音楽の神様に祝福された、見出されたアーティストに出逢えた喜びを感じます。

 

その後はバリトン町英和さんによる素敵な歌が続きます。浮遊する曲、敬虔な祈りの曲、パリの女性たちのおしゃべりの賑やかな曲、神秘的な和音の曲などなど、本当にいろいろな歌曲が聴かれました。ドビュッシーの歌曲だと、どうしてもオペラ「ペレアスとメリザンド」のイメージがあり、繊細で捉えどころのない歌が延々と続く印象を持ちますが、本当は多彩なんですね。

 

最後はヴァイオリン・ソナタ。聴き込みが足りないこともありますが、かなり自由に遊んでいるような感じの曲で、全然摑みどころがありません(笑)。第2楽章についてドビュッシーは、それまでの主題が「非常に奇妙な変形を経て、自分の尾を噛む蛇のように堂々巡りするひとつの楽想の簡素な動きに帰着し」と説明しているそうです。う~ん、生で聴いてみても、どの辺りが「自分の尾を噛む蛇」なのか、よく分かりません(笑)。

 

鍵冨弦太郎さんによる素敵なヴァイオリンでしたが、私にはこの曲は、チェロ・ソナタよりもっとハードルが高いように思いました。ピアノ曲こそだいたい把握していますが、まだまだドビュッシーの世界は広いようです。

 

 

1時間くらいのコンサートでしたが、ドビュッシーの奥深い世界を体感でき、非常に貴重な機会でした!ソロ及び全ての伴奏を務められた児玉桃さん、さすがのピアノでした。そして、新倉瞳さんという素晴らしいチェリストに出逢えたのも嬉しい。聴きに来て本当に良かった、素敵なコンサートでした!

 

 

(写真)CDの販売があり、いろいろな種類がありましたが、ショパン/チェロ・ソナタが聴きたかったので、このCDにしました。新倉瞳さんご本人の編曲による、ドビュッシー/亜麻色の髪の乙女も入っています。聴くのがとても楽しみです!