シャルル・リシャール=アムランさんのオール・ショパン・プログラムのピアノ・リサイタルを聴きに行きました。
シャルル・リシャール=アムラン ピアノ・リサイタル
(ミューザ川崎シンフォニーホール)
【オール・ショパン・プログラム】
ノクターン第20番嬰ハ短調(遺作)
即興曲第1番変イ長調
即興曲第2番嬰ヘ長調
即興曲第3番変ト長調
幻想即興曲嬰ハ短調
ポロネーズ第6番変イ長調「英雄」
バラード第1番ト短調
バラード第2番ヘ長調
バラード第3番変イ長調
バラード第4番ヘ短調
シャルル・リシャール=アムランさんは2015年のショパン国際ピアノ・コンクールで第2位とクリスチャン・ツィメルマン賞(ベスト・ソナタ賞)を受賞したカナダの若手のホープです。今日はそのショパンのプログラム。何と言っても、後半のバラード全曲が非常に楽しみです!
1曲目は遺作のノクターン。冒頭はやや短めに切って入り、その後、息の長いフレーズに入ります。アムランさんのピアノはリリシズムに溢れて極めて美しい。アンコールでよく弾かれる曲ですが、冒頭でも一気にショパンの世界に引き込まれていいものですね。
2曲目からは4つの即興曲。第1番は迫力を見せ、第2番は途中右手が高音階を巡るところが美しい。第3番はエレガントで美しい音、最後は有名な幻想即興曲ですが、完璧にコントロールされ、粒の立った素敵な演奏でした!
前半最後は英雄ポロネーズ。冒頭の前奏の歯切れの良いピアノ。主題には思わせぶりに弱音から入り、2回目の主題は大きく展開してメリハリが見事。中間部、左のオクターブのダダダダが続くところ。アマチュアのピアニスト泣かせで有名な部分ですが、アムランさんはもっと滑らかに弾けそうなところを敢えてぎごちなく弾いて、逆に推進力を印象付けます。その後のゆっくりの場面の弱音が素晴らしい。主題に戻り、最後は飛翔して終わりました。ブラヴォー!
いよいよ楽しみな後半です。1曲目はバラード1番。構築感があって、非常に立派なバラード1番でした。この曲を聴くと、タイミング的にどうしても羽生結弦くんを連想しますね。国民栄誉賞、本当におめでとう!続くバラード2番は激情の音楽。ただ、1番も2番も、いずれもアムランさんは見事にコントロールしていて、余裕のあるピアノのように聴こえました。
次はバラード第3番。リリシズムに溢れる本当に素敵な曲で、いまショパンで弾いてみたい曲のNo.1です。アムランさんのことだから、繊細でリリカルに演奏するのかな?と思いましたが、冒頭の方の右手のオクターブのラの音を結構強く弾いたり、全体的には叙情的な演奏でありつつも、その内に力強い意思を秘めるような3番、とても惹かれました!
最後はバラード第4番。幻想ポロネーズと並んで、ショパンの最高傑作と疑わない大好きな曲です。この曲は前半から第1主題の世界に沿った大変繊細なピアノ。ニュアンスを沢山込めて寄り道して、というよりは、比較的振り返らずに淡々と進んでいくのが雰囲気があって、またいい!
後半、一番の聴きどころとも言える、2回目の第2主題。美しい流れるようなピアノにうっとりしていたら、アムランさん、突然走り始めました!終結部もこれまで実演を聴いたバラード4番の中でほとんど最速!理知的な演奏のアムランさんとは違う、燃えるような一面を見ることのできた、非常に聴き応えのある4番でした!もしかすると、バラード全体を交響曲のように捉えていて、最終楽章のフィナーレを意識したのかも知れません。
素晴らしい演奏に観客のみなさんも湧いていましたね。帰りにロビーを見たら、CD販売コーナーが長蛇の列(笑)。心を打つ演奏というのは、しっかりと伝わるものなんですね。私も何とかギリギリで購入できました(笑)。
(写真)会場で購入したCD。アムランさんのサイン入り。ピアノ・ソナタ第3番ロ短調と、現在私が(かろうじて)練習中の幻想ポロネーズ変イ長調というお得な内容です。素晴らしかったアムランさんのピアノ。ぜひまた聴きに行こうと思います!
(追伸)ところで、昨日6月2日(土)にて、新国立劇場のベートーベン/フィデリオが千秋楽を迎えて、大変盛り上がったようですね。私も5月27日(日)に観た後の6時間後くらいに、取り急ぎの記事を書きましたが、あれからいろいろと考えが発展してしまって収拾が付きません(笑)。とにかくよく考えられた、興味深い演出だと思いました。別の日を観た友人も、非常に楽しかったと言っていたので、今度、お酒飲みながら、意見交換をするのがめっちゃ楽しみです。カタリーナさん、本当にありがとう!
(参考)2018.5.27 ベートーベン/フィデリオ(新国立劇場)(カタリーナ・ワーグナー演出)