サンテミリオンの最高峰シュヴァル・ブラン、ソーテルヌの最高峰イケムという、極上のワインの試飲会があったので、参加してきました。
シャトー・シュヴァル・ブラン&シャトー・ディケム
スペシャルテイスティング
(ワインショップ・エノテカ丸の内店)
①イグレック2015
②ル・プティ・シュヴァル2005
③シャトー・シュヴァル・ブラン2012
④シャトー・シュヴァル・ブラン2003
⑤シャトー・ディケム2005
シュヴァル・ブランとは「白馬」の意。サンテミリオンいやボルドーを代表する、カベルネ・フラン主体で世界最高峰のワインです。私も大大大ファンで、そのエレガントでしなやかなワインには特別な感情を抱きます。
イケムは甘口の貴腐ワインの世界でNo.1の銘柄。世界に甘口の銘醸ワインは多数あれど、イケムがトップであることにはどこからも異論が出ないくらいに、とてつもなく素晴らしいワインです。
今回は両ワインをただただ畏敬の念を持って味わいたい、その一点の動機だけで試飲会に参加しました。イケムの辛口版のイグレックは、以前にコルンゴルト/死の都と合わせて楽しんだことがあり、死の都の後に飲んだのは、個人的にいい選択だったと今でも思っています。久しぶりで、本当に楽しみです。
(参考)2014.3.15 イグレック・ド・シャトー・ディケム1994
(参考)2014.3.15 コルンゴルト/死の都(新国立劇場)
今回の試飲会に合わせて、シャトー・シュヴァル・ブラン&シャトー・ディケムのCEO、ピエール・リュルトンさんが来日されました。ボルドーの重鎮中の重鎮です!始めに、日本は情熱的にワインを愛している人が多く、成熟したマーケットで大変重要だ、と評価の言葉をいただきました。
①はイグレック。やや緑がかった黄色、銀色のニュアンスも入ります。香りは豊潤な甘い香りですが、以前に香ったイグレックに比べるとまだまだ若く、ソーヴィニヨン・ブランの草の香りもします。でも、確実に貴腐の香りが混じって通常のボルドーブランには出せない香りです!味は香りからくる予想よりも辛口。でも飲み口はふくよかで、後味は口に甘みがいっぱいに広がります。まだまだ熟成が必要なワインですね。あと20年くらいは余裕だと思いました。
リュルトンさんのお話では、イグレックはイケムのセカンドではない。ソーヴィニヨン・ブランの熟したものに、セミヨンの貴腐が加わり、よりソーテルヌ感が出る。ピーチやアプリコットの香り、糖度は7gでほとんどアルザスのよう。アペリティフや魚と相性いい、とのことでした。
②はシュヴァル・ブランのセカンド。セカンド・ワインですが、実力はピカイチです。なお、お値段もピカイチですが(笑)。色は美しい赤紫色、縁にはオレンジのニュアンスがあり、それなりに熟成が進んでいます。香りは甘いドライフルーツやチョコレートのような香り。味は滑らかかつしなやかで旨味がいっぱい。後味にやや酸味を感じます。
リュルトンさん、ル・プティ・シュヴァルは1988年から作っていて、全体の20%、エレガントでタンニンが柔らかく円やか、セカンド・ワインだが、もはや独自のワインと言える、とおっしゃっていました。
③から、いよいよシュヴァル・ブランになります!リュルトンさん、「シュヴァル・ブラン!」と詩を朗読するように声に出してうっとりされました。本当に愛していらっしゃるんですね!ポムロルに近く、テロワールに恵まれている。ペトリュスの荒い粘土質、フィジャックの砂質など、いろいろな特徴を兼ね備えていて、正にモザイクだ。カベルネ・フランが60%と多いのが特徴。メルロに依存していない造りで、このスタイルをずっと維持したい。なぜならそれがテロワールの良さだから、とのことでした。
シュヴァル・ブラン2012は美しいボルドールージュ、中心は非常に濃い色。香りはチョコレートのプラリネのような香りがうわっときます。とにかく甘い香り!若いフランとメルロがぐぐぐっと香ります。味もアマアマ、まだ若くぱつんぱつんの印象でしたが、置いておくと、こなれていい感じになりました。 まだまだ若いワイン、あと15年は余裕で持ちそうです。
④はシュヴァル・ブラン2003。色は熟成が進んで縁は綺麗なオレンジ色、中心もやや薄くなってきています。香りは熟成香、オレンジピールの入ったチョコレート、スモーキー。味はかなりこなれていて、旨みが凄い!しなやか、なめらかで、馴染みます。とても美味しいワインです!あと5年くらいで飲んだ方がいいかも知れません?
リュルトンさんのお話では、9月の涼しい夜がとても重要、寒暖差によりゆっくりゆっくり熟して、それが緻密なタンニンを生む。シルキー、ベルベット、エレガンス、シュヴァル・ブランはカシミアのようなワイン、とのことでした。
さらに、リュルトンさんは先日1947年のシュヴァル・ブランを飲まれたそうです。伝説のシュヴァル・ブラン1947!20世紀の最も偉大な赤ワインとも言われ、ワイン評論家が地球最後の日に飲みたいワインに名前の挙がる、それはそれは素晴らしいワインです。しかし、リュルトンさん、その伝説のワインに対して、もっとよく造ることができたかも知れない、と意外なお言葉。
つまり、完璧なものでなく、未成熟なものが素晴らしい価値を生むことがある。例えば、女性のお化粧も完璧なお化粧より、少し緩いところがあった方が魅力的に感じるように。ちょっとしたミステイクがあった方がユニークだ、こんなお話をされていました。リュルトンさん、深いですね!
最後⑤はいよいよイケム登場。イケムは歴史のある偉大なワイン。トーマス・ジェファーソンがイケムのファンで、1783年には素晴らしいのでワシントン大統領と飲みたいので300本を何とかしてくれ、という手紙がきたそうです。シャトーは小高い丘にあり、ジロンド川と森、小さな川に囲まれている。9月は霧に包まれ湿度があり、午後は乾燥、湿度と気温差が糖度の高いワインを生む。
収穫は9月中旬から始まり、11月に収穫終了。1本のぶどうの木に対して、9月、10月、11月と少しずつ摘んでいくため、200人近くで収穫作業を行う。素晴らしいチームで対応している。ソーテルヌでは決めなければいけないこと多く、常にリスクに直面している。ヴィンテージによって判断が異なるのでいつもチャレンジになる。人の力で非常に手間暇をかけて素晴らしいワインを造っている、というお話でした。
イケム2005。見事な黄金色、素晴らしく調和の取れた色。甘い香り、何かが突出しているのではなく溶け込んで完璧なバランス。甘みと酸味の完全なる調和!イケムを味わえて、ただただ幸せです!用意されたフルム・ダンベールのチーズと見事にマッチしていました!
ただただ期待しかなかった試飲会でしたが、素晴らしいワインたちにひれ伏しました!おもてなし活動は、今回は高額商品ばかりなのでかなりひるみましたが…、せっかくリュルトンさんが来日されている貴重な機会なので、意を決してイグレックを選びました。またいつの日か、コルンゴルト/死の都の後に開けたいと思います。
(写真)イグレック2015。中央の銀色の”Y”の字がワインの名前(イグレック)です。リュルトンさん、サインしながら、これでは「ピエール・イリュルトンだね」と冗談をおっしゃっていました(笑)。家宝にします!