旅行5日目。最高だった前日のパルジファル観劇の興奮が未だ冷めやらぬ中ですが、この日の午前中はバイロイトから列車で1時間のニュルンベルクを訪ねました。ニュルンベルクは過去2回(2013年はフルに観光、2014年はニュルンベルク・ソーセージを食べに)行きましたが、今回は、ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の舞台であるニュルンベルクを、楽劇のシーンの順番に周っていきます。

 

(参考)2013.8.13 ニュルンベルク観光

 

(参考)2014.8.14 ミュンヘン・ニュルンベルク観光

※ミュンヘンはニンフェンブルク城、R.シュトラウスの生家跡など

(写真)ハンス・ザックスの像。詳しくは後ほど。

 

(写真)まずはニュルンベルク歌劇場の前のワーグナー像にご挨拶しました。

 
 

 

 

(写真)エーエカルッセルの泉(Hans Sachs Brunnen)。結婚生活も下段の写真のようなシーンがずっと続けばいいのですが、なかなかそうも行かない、とハンス・ザックスの詩は語っています。

 

第1幕は聖カタリーナ教会ですが、楽劇での物語の前に、ハンス・ザックスに愛妻がいた時代に思いを馳せるため、まずはエーエカルッセルの泉に行きました。ザックスの結婚生活についての詩に基づいて作られた彫刻の噴水です。最初は情熱的で仲睦まじい夫婦ですが、後には妻が夫を尻の下に敷いているような6つのシーン。結婚生活の良い面も悪い面も表している、そんな内容です。う~ん、ザックスがエーファに惹かれながらもためらうのは、ショーペンハウアーの影響による諦念だけでなく、こんなところにも理由があったりして?

 
 

 

 

(写真)聖カタリーナ教会とプレート(17・18世紀にはマイスタージンガーが集ったと記されています。)

 

 

(写真)お隣の図書館にある子供が本を読むオブジェ

 

続いて第1幕の舞台、聖カタリーナ教会。ここでポーグナーによる芸術に最大の価値を置いた提案がなされたり、ヴァルターの未来を切り拓くような、あの「ヴァルターの試演の歌」が歌われることを想像すると、ただただ感動です!しかし、教会自体は残念ながら第二次世界大戦の爆撃で破壊され、今は外観の一部を残すのみ…。戦争の悲惨さを改めて実感しました。いつの日かドレスデンのフラウエン教会のように復活することを祈りましょう!ちなみに、お隣は図書館でした。きっとハンス・ザックスの詩集も置かれていることでしょう。希望の息吹を感じました。

 

 

次に第2幕と第3幕前半の場所、ハンス・ザックスの家(2幕は加えてポーグナーの家とその界隈)を目指します。ところが、事前にそれなりに調べましたが、戦災で壊されてしまって、どこにハンス・ザックスの家があったのか特定できません…。ドイツ語のウェブサイトを丹念に調べましたが、どこにハンス・ザックス・ハウスあったか、ドイツ人が地図や図面をつけて熱心に議論しているサイトをようやく見つけたのが限界でした。そのサイトもさんざん議論した挙げ句、最後の結論は「歴史家の検証に委ねるしかない」でした。お~い!(笑)

 

(写真)ハンス・ザックスの像(全体)。立派な像で威厳があります。

 

(写真)ハンス・ザックス・プラッツ。なぜかスポーツをしている人形が置かれていました。文武両道?

 

なので、ハンス・ザックス・プラッツにあるハンス・ザックスの像にご対面してここはOKにしようと思ったら…、何と!幸運なことに、近くにハンス・ザックスの家の跡地のプレートを発見しました!正に犬も歩けば棒に当たるです!

 

 

(写真)ハンス・ザックスの家の跡地のプレート

 

ここでニワトコのモノローグや迷妄のモノローグ、聖なる朝の夢解きの曲、そして何と言っても、あの超感動の「命名式の5重唱」が歌われることを想像すると胸が熱くなります。

 

ん?ニワトコ?そうだ!せっかくなので、ニワトコの木も探してみましょう!

 

(写真)ニワトコの木?

 

ニワトコの木が夏場に実をつけることは知っていました。先ほどのハンス・ザックス・プラッツにニワトコのような木を発見!でも、ちょっと違うような気も?優しそうなご年配のマダムが通りかかりました。聞いてみましょう。ここは、なんちゃってドイツ語の出番です。

 

私:Guten Tag ! Ist das Holunder? (こんにちは!これはニワトコですか?)

マダム:Nein. Das ist Linde. (いいえ、これはリンデよ。)

私:Wo ist Holunder? (ニワトコはどこですか?)

マダム:Aus der Stadt. (まちの外よ。)

 

ガーン!そうなんだ!ニワトコって、そこらに生えていると思ったのですが、甘かったんですね…。この木はリンデでしたか。リンデン・オーパー(ベルリン国立歌劇場の愛称)のリンデ?ということは、菩提樹のことですね?菩提樹は第2幕でヴァルターとエーファが、ザックスとベックメッサーから隠れた木です。ニワトコではありませんでしたが、これはこれで収穫としましょう!(なお、その後のニワトコとの感動の出逢いは別記事でご紹介します。)

 

 

第3幕4場まで確認できたので、最後の第3幕5場の場所に行きましょう。ところがこの5場、以下のト書きがあるものの、具体的な場所の記載はありません。

 

「広々とした牧場、遠景にニュルンベルクの町が見える。ペグニッツ河が、まがりくねって牧場を通っている。」

 

これだけだとなかなか特定は難しいし、そもそも具体的な場所でなく、ワーグナーの頭の中のイメージでしかない可能性もあります。いろいろ探しても出てこなかったので、自分で場所を推定することにしました。ニュルンベルクの自然のお勧めスポットのウェブサイトや地図とにらめっこして、第3幕5場の場所はニュルンベルク旧市街の外の東側にあるヴェールダー・ヴィーゼという広大な緑地ではないかと推察しました。

 

 

 

 

(写真)ヴェールダー・ヴィーゼと、すぐ脇を流れるペグニッツ川

 

このヴェールダー・ヴィーゼ、広大な緑地で歌合戦の場所として広さは十分です。ニュルンベルク市民から親しまれている場所だそうなので、何かのイベントの時の会場にもピッタリです。そして下流には湖があります。ペグニッツ川が蛇行していて氾濫を繰り返し、最終的に湖になったのではないか?つまり、かつては「まがりくねったペグニッツ河」だったと推察します。何だか、だんだん「ブラタモリ」の様相を呈してきました(笑)。ひょこ!あっ、あそこに段差が!(笑)

 

実際に現場に行ってみると、お天気も良くて、家族連れがピクニックしたり、日なたぼっこしたり、犬が大はしゃぎで走り回ったり、何だかとてもいい感じでした。ヴェールダー・ヴィーゼ、私には第3幕5場の舞台として相応しい場所だと思いました。この際、ここで歌合戦が行われたことにしちゃいましょう!

 

ヴェールダー・ヴィーゼにはビアガーデンがあることも確認済み。本当だったら、ここでニュルンベルク・ソーセージとニュルンベルク・ビールと行きたかったのですが、オープンの時間になっても、お店の準備がなかなか整いません。ゆっくりゆっくり準備するおじさんを無理に急かすわけにも行かず、泣く泣く引き上げました…。

 

 

とにもかくにも、ニュルンベルクのマイスタージンガーの舞台(推定含む)を全て周ることができました!これで気持ち良く夕方からの観劇に入れます。演目は?もちろん、ニュルンベルクのマイスタージンガーです!!

 

※昨日のパルジファル観劇で、隣のドイツ人のマダムに話してウケたのは、このニュルンベルクでの行程のことでした。日本のワーグナー・ファンの熱心さをPRできたものと、この時点では、自分GJとか思っていました。しかし、必ずしもそういう意味でウケたのではなかったのかも知れないと思わせる、衝撃の出来事がこの後に起こります!(続く)