素晴らしかったマーティン・ブラビンズ/都響の南極交響曲。終演後はイングリッシュ・パブでビールを、とも思いましたが、まっすぐ帰り家で飲むことにしました。

 

というのも、今回、南極交響曲の復習は楽しい時間でしたが、実はそのCD、ブライデン・トムソン/ロンドン交響楽団のCDに入っていたもう1曲に非常に心を奪われていて、その曲を聴きながら、イギリスのビールを飲みたかったからです。

 

 

その曲は、ヴォーン・ウィリアムズ/未知の世界へ(Toward the Unknown Region)。

合唱とオーケストラのための歌、13分くらいの曲です。

 

 

これが合唱といい、オケといい、透明感のある響きといい、転調しながら高まっていく音楽といい、めっちゃいい曲なんです!!!最初聴いた時、「何この超名曲!」と思わず叫びそうになりました。近年まれに見る大ヒットです!歌詞も、恐れずに未知の世界へ踏み出して行こう、というような内容の大変勇敢なもので、とても前向きな気持ちになります。例えば、最初の2節をご紹介すると、こんな感じです。

 

Darest thou now O soul,

Walk out with me toward the unknown region,

Where neither ground is for the feet nor any path to follow?

 

No map there, nor guide,

Nor voice sounding, nor touch of human hand,

Nor face with blooming flesh, nor lips, nor eyes, are in that land.

 

南極交響曲は南極点到達に成功したものの、帰途に猛吹雪に巻き込まれて全滅してしまったイギリスのスコット隊の悲劇を描いた曲です。その曲に、この「未知の世界へ」がカップリングされたのは、そういう悲しい出来事があっても、恐れずに前に進んで行こう、未来を切り開いて行こう、という力強いメッセージと取れます。この2曲をCDで組み合わせることを考えた人のセンスには脱帽するしかありません!

 

拙ブログは毎回毎回思いつきで内容のないことばかり書いて、本当にお恥ずかしいしだいですが…(逆にそれでも温かく読んでいただける方には心より感謝しております)、このヴォーン・ウィリアムズ「未知の世界へ」をご紹介するのは、もしかして今までの記事で一番価値があるのではないか?と思っています。まだ聴いたことがない方は、騙されたつもりでぜひ一度聴かれてみてください!元気や勇気をもらえるので、最近は朝会社に行く前によく聴いています。

 

YouTubeで”Vaughan Williams Toward the Unknown Region”で検索しても出てきますが、お勧めは、CHANDOSのブライデン・トムソン/ロンドン交響楽団/ロンドン交響合唱団のCDです。演奏のレベルの高さもさることながら、南極交響曲が終わった後、しばしの沈黙を経て、おもむろに「未知の世界へ」が始まる、その流れがまたいいのです!

 

 

素晴らしかったマーティン・ブレビンズさんと都響、半田美和子さん、新国立劇場合唱団、そして何よりもヴィーン・ウィリアムズに感謝しつつ、勇敢だったスコット隊に敬意と哀悼の意を表し、「未知の世界へ」を聴きながら、イギリスを代表するビール、バス・ペールエールで献杯しました。

 

世の中には沢山の苦労や困難がありますが、それ以上に素晴らしい音楽に溢れています。今チャレンジしている人、苦難に立ち向かっている人、頑張っている人にこの曲を捧げます!

 

 

(写真)バス・ペースエールと南極交響曲&未知の世界へのCD