ヴェネツィアのフェニーチェ劇場は2001年の初来日以降、計3回の引越し公演があったことから、よくご存知の方もいらっしゃると思います。1836年と1996年に火事で全焼し、その都度それこそフェニーチェ(不死鳥)のように蘇った歌劇場です。

 私も2001年の来日公演の際にはささやかながら再建のための募金をさせていただき、2003年の再建後、2005年の来日公演のヴェルディ/アッティラでは、第1幕のフォレストとアクレイアの人々の合唱の「不死鳥のように蘇ろう!」のセリフに号泣しました。再建された歌劇場の中に入り、コンサートを聴けるのは本当に感慨深いことです。

 コンサートは16:00からですが、早めに準備をして、15:00にはヴァポレットでサン・マルコ広場に到着。その訳は…


(写真)ハリーズ・バー


(写真)本家本元ハリーズ・バーのベリーニ


 せっかくヴェネツィアに来たので飲んでおかなければ!と思っていた、ハリーズ・バーのベリーニです。このバーで生まれ、今では日本でも多くのバーで楽しめるプロセッコと桃のピューレによるカクテル。1杯16.5Euroとかなり高いですが…、せっかくなので。飲んでみると濃厚で奥行きのある味わい。大変美味しくいただきました。

 ちなみに、カルパッチョもこのバーが発祥。日本でよく見かける魚でなく、牛肉によるカルパッチョがオリジナルで、それもそのはず、ヴェネツィア派の画家ヴィットーレ・カルパッチョが美しい赤の色遣いが特徴のため、そこから命名されたものなのだそうです。ただし、発祥のハリーズ・バーでいただくと1皿50Euro以上するとか…。今回カルパッチョの赤はアカデミア美術館とスクオーラ・ダルマータ・サン・ジョルジョ・デッリ・スキアヴォーニで十分堪能したので、パスしました。


 さて、いよいよフェニーチェ劇場です。再建された劇場を初めて見て、それだけで感動です!中に入ると、大変きらびやかな空間。非常に美しい劇場でした。


(写真)フェニーチェ劇場


(写真)劇場のシンボル不死鳥


(写真)コンサートの横断幕


 今回聴いたのは12月29日~1月1日まで同じプログラムによる「ニューイヤーコンサート」。ただし、今日は12月31日なのであえて「ジルヴェスターコンサート」をタイトルとしました。指揮・歌手・オケ・曲目は以下の通りです。



Direttore: Diego Matheuz
Lawrence Brownlee - tenore
Carmen Giannattasio - soprano
Orchestra e Coro del Teatro La Fenice


Prima parte

Ludwig van Beethoven
Sinfonia n.7 in la maggiore, Op. 92


Seconda parte

Gioachino Rossini
allegro vivace dall’Ouverture Guglielmo Tell

Giuseppe Verdi - Nino Rota
Grande valzer brillante da Il Gattopardo

Vincenzo Bellini
Casta Diva da Norma

Gaetano Donizetti
Una furtiva lagrima da L’elisir d’amore

Nikolaj Rimskij-Korsakov
Canzone napoletana op. 63, da Funiculì funiculà di Luigi Denza

Giacomo Puccini
Vissi d’arte da Tosca

Ruggero Leoncavallo
Mattinata

Pietro Mascagni
Intermezzo da Cavalleria rusticana

Giuseppe Verdi
Amami, Alfredo da La traviata
Va’ pensiero sull’ali dorate da Nabucco
Libiam ne’ lieti calici da La traviata



 前半がベートーベンの第7交響曲、後半がイタリアの作曲家たち(リムスキー=コルサコフを除く)による主にオペラの名場面集という華やかなプログラム。ベートーベンはヴェネツィアに縁のあるワーグナーがこの曲を「舞踏の神化」と言って評価していたので採り上げたのかと思ったり?後半はイタリアのオペラ作曲家がほぼまんべんなく登場し、最後がヴェルディということで、明らかにイタリアこぞってのヴェルディのお祝いと思われます。フェニーチェが初演のラ・トラヴィアータやイタリア第2の国歌とも言われるナブッコのヴァ・ペンシエーロを聴けるのも嬉しい。

 さて、聴いてみてですが、ジルヴェスターコンサートでガラということもあり、いい意味で気楽に楽しむことができました。前半は改めてベートーベンの素晴らしさを実感。後半は1曲1曲を屈託なく楽しんで聴きました。特にソプラノのカルメン・ジャンナッタージョさんが印象に残りました。この方のベッリーニ/ノルマの「カスタ・ディーヴァ」やプッチーニ/トスカの「歌に生き、恋に生き」は力強くかつ美しい歌で、観客も大いに沸いていました。今後、どんどん出てくると思われます。今年はヴェルディばかり聴いていましたが、改めて聴いてみるとノルマやトスカもいいですね。合唱による感動的なヴァ・ペンシエーロの後、新年に向けて華やかな乾杯の歌で終わり。とてもいいコンサートでした。



 ヴェルディ生誕200周年の最後の最後をヴェルディで締めることができ、大変貴重なコンサートでした。2013年は記念年ということで、ヴェルディそしてワーグナーの偉大な音楽に多く触れることのできた一年でした。今後も私の大きな2つの柱であり続けると思います。素晴らしい音楽を本当にありがとう!


(写真)帰り道のサン・マルコ広場。新年のカウントダウン。


(写真)巨大なカネッラ社のベリーニも出現。今度飲んでみようかな?