ワーグナーとヴェルディをテーマに据えた今年のザルツブルク音楽祭ですが、今晩はその内のヴェルディのハイライト、ドン・カルロを観ます。会場は昨日と同じ祝祭大劇場。指揮・演出・主なキャストは以下の通りです。


  Antonio Pappano, Conductor
  Peter Stein, Director

  Matti Salminen, Filippo II.
  Jonas Kaufmann, Don Carlo
  Anja Harteros, Elisabetta di Valois
  Thomas Hampson, Rodrigo, Marchese di Posa
  Ekaterina Semenchuk, La Principessa Eboli
  Eric Halfvarson, Il Grande Inquisitore
  Robert Lloyd, Un frate
  Maria Celeng, Tebaldo

  Concert Association of the Vienna State Opera Chorus
  Vienna Philharmonic
  Members of Angelika-Prokopp-Sommerakademie
   der Wiener Philharmoniker,Stage Music

 指揮者がアントニオ・パッパーノさん、ドン・カルロがヨナス・カウフマンさん、エリザベッタがアニア・ハルテロスさん、ロドリーゴがトーマス・ハンプソンさん、フィリポⅡがマッティ・サルミネンさん、そしてオケがウィーン・フィルと大変大変大変豪華なキャストで、今年のザルツブルク音楽祭で最もチケット争奪戦が激しかったと言われるのも頷けます。

 で、実際に観た感想ですが、とてもゴージャスな公演でした。歌手はみなビンビン響く歌唱で、パッパーノ/ウィーン・フィルも好演、演出はオーソドックスで音楽の邪魔をせずとても好感を持てました。

 ただし、それで実際に観て聴いて最高に感動的だったかと言うと、恐れ多いところですが、正直に告白するとそこまででもありませんでした。歌手のみなさんはみな押し出しの強い歌唱で、迫力は満点だったのですが、もっと強弱をつけて抒情的な部分は雰囲気を出して歌ってほしいと随所で感じました。(特にアニア・ハルテロスさんはやや一本調子の強い歌唱で隣のアメリカ人とおぼしきご夫妻が何度も首を振っていました。)

 それと、ウィーン・フィル。独特の音色で万人を魅了するウィーン・フィルですが、ヴェルディのオペラだと若干しっくりこない感じがしました。昨日のレクイエムでは全く感じませんでしたが、オペラだと、それこそスカラ座のような明るいストレートな音色の方がヴェルディは合うような気がします。ウィーン・フィルはやはりモーツァルトやR.シュトラウスを聴くのが一番合っているように思いました。

 そうは言っても、個人的にファルスタッフと並んでヴェルディで一番好きな作品。ドン・カルロとロドリーゴの友情の二重唱、スペクタクルな第2幕、フィリポⅡと宗教裁判長のバス対決、エボリ公女の強烈なアリア、ロドリーゴの死にゆくアリアなど、聴きどころ満載で大変楽しめました。ラストではカルロⅤとおぼしき修道士にドン・カルロが捉えられ墓に入る結末の演出を初めて観ることができました。生誕200周年のザルツブルク音楽祭のドン・カルロ。思い出の公演になりました。