今日からザルツブルク音楽祭の観劇に入る。今晩はフェルゼンライトシューレにて、ワーグナー/リエンツィ(コンサート形式)。リエンツィは以前に序曲をコンサートで聴いたことがあるが、全曲は初めて。オペラでなくコンサート形式ではあるが、今回の旅でバイロイト音楽祭と共に楽しみにしていたコンサートだ。指揮・主なキャスト・オケは以下の通りです。

  Philippe Jordan, Conductor
  Jörn Hinnerk Andresen, Chorus Master

  Christopher Ventris, Cola Rienzi
  Emily Magee, Irene
  Georg Zeppenfeld, Steffano Colonna
  Sophie Koch, Adriano
  Martin Gantner, Paolo Orsini
  Robert Bork, Raimondo (Cardinal Orvieto)
  Benjamin Bernheim, Baroncelli
  Oliver Zwarg, Cecco del Vecchio
  Kiandra Howarth , A messenger of peace
  With Members of the Young Singers Project
  Concert Association of the Vienna State Opera Chorus
  Gustav Mahler Jugendorchester
  Members of Angelika-Prokopp-Sommerakademie
   der Wiener Philharmoniker,Stage Music

 このリエンツィという曲、以前に序曲を聴いた時には「いい曲だけど金管が鳴りまくって、とても賑やかな曲だなあ」くらいにしか正直思っていませんでした。ところが、今回の予習で全曲版を聴いたところ、こんなに凄い曲があったんだ!と驚くぐらいに聴きどころ満載の魅力的な曲でした。グランド・オペラということもあるのか、何となくドン・カルロに似ている印象を持ちましたが、聴こえてくるフレーズにはタンホイザーやローエングリンの響きが感じ取れます。

 あらすじを簡単にまとめると、14世紀半ばのローマで、貴族の暴政に不満を持った民衆からリエンツィが指導者として乞われ、護民官となります。しかし、その慈悲深い治世が仇となり、その後に貴族や教皇から弾圧され、最後は民衆からも反感を抱かれ、死を迎えます。そこに貴族の息子アドリアーノとリエンツィの妹イレーネの恋愛が絡み合うストーリーです。

 さて、実際に生で全曲を聴いてみての感想ですが…、めちゃめちゃ良かったです!とにかくフィリップ・ジョルダンさんの指揮がグスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団をぐいぐい引っ張り、メリハリのついたドラマティックな音を引き出して、興奮することこの上なしでした。歌手のみなさんも素晴らしく、特に、アドリアーノ役のソフィー・コッホさんが絶賛されていました。新国立劇場の影のない女で皇后を好演したエミリー・マギーさん、ニュルンベルクのマイスタージンガーですぐ脚立に登りたがるベックメッサーがおかしかったマーティン・ガントナーさんもとても良かったです。

 有名な第5幕のリエンツィの祈りも良かったですが、何と言っても聴きどころは第2幕全般。特に女性2人の重唱から行進曲風のラストへ怒涛のように進んでいく場面では、ジョルダンさんの指揮が煽りまくり、フェルゼンライトシューレは興奮のるつぼと化しました!

 ワーグナーが独自の道を歩み出したのは、さまよえるオランダ人からで、リエンツィはまだ個性が見えず、「マイアーベーアの最高傑作」と称されることもあると聞きましたが、どうしてどうして。様式はともかく、音はワーグナー以外の何物でもないと思いました。この記念年にまた一つワーグナーの素晴らしい作品に出会えて、本当に感激です。日本に帰ったら、「妖精」「恋愛禁制」も聴いてみたいと強く思いました。


ピアノ好き生活

             (写真)開演前のフェルゼンライトシューレ

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              (写真)終演後のザルツブルクの夜景