ナックルは少し不満でした。
長い休みに入る前自分だけに宿題が出たからです。
「ここに種が四つあります。
ナックルが育ててみてください」
一つはコロリとまあるい種です。
「この種にマールという名をつけよう。
友だちのマールに、似てるから」
マールは小さくて甘えん坊。
「まん丸マール!泣き虫マール!」
ナックルが からかうとすぐ泣きます。
もう一つは赤くて細い種。
「この種はアカーム」アカームは髪の毛が赤くって、ひょろりとのっぽな女の子です。ナックルはアカームのおさげを引っ張り「みんなと違う髪の色!アカーム変な子
赤い髪」とはやしました。
三つめは三角で硬い種。
「うんうん、これはミミタにそっくり」
ミミタはナックルの親友です。
いつもふたりでマールやアカームに意地悪
をして楽しんでいます。
ミミタといるとナックルは自分が強くなった気になります。
ミミタがいないと、とっても退屈。
ミミタがいないとつまらない…。
四つめの種はしましま模様。
「あれれ?この種僕みたい」四つの鉢に
土を入れ、種を入れていきました。
おんなじ場所に鉢を置き、おんなじだけの水をやり、双葉が出るのを待ちました。
一番始めに芽を出したのは、コロリと
まあるいマールでした。続いてアカーム
そしてミミタが三角の双葉を出しました。最後にやっと芽吹いたのはナックルに
良く似た種でした。
「みんな同時に植えたのに?」おんなじように育てたつもりの、四つの違った
種たちは、おんなじようには育たなくってナックルをとても困らせました。
日にあてた方がいいものや、日陰を好む細い葉や、水の量や、水やりの時間、それぞれみんな、違っていました。とても面倒だと思いながらも、ナックルは せっせと世話をしました。
それぞれをちゃんと育て上げ、それぞれの花を見たかったからです。
やがてアカームが咲きました。細長い
葉っぱが沢山ついて、赤い花をひきたてています。
遅れてマールが咲きました。
白くて丸くて小さな花は、とても
優しい香りがします。
続いてナックルが咲きました。
あまり冴えない花だったけど、ナックルはとても満足でした。
最後にミミタが咲きました。
やっとこさっとこ咲きました。
あまり咲くのが遅いので挫けそうになったけど「僕はミミタを諦めない」と、
ナックルは誓っていたのです。
やがて花は実を結び、新たな種が出来るでしょう。
「種が出来たら、マールやアカーム、
そしてミミタに分けてやろう……」
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