今日もまた日曜日が終わっていく。何も変わらないまま、たんたんと粛々と。
月曜日なんて一生来なきゃいいのに。
お呼びじゃないよ。
早くどっか行ってよ。
そう心の中で叫んでも必ず一週間は廻っていく。月曜日が来たら火曜日。火曜日が来たら水曜日。水曜日が来たら木曜日。そうやって毎日は過ぎていく。
ベッドの上で横になりながら小柄な体を抱きしめた。窓の外はもう夕暮れだ。今が何時なのか分からない。そんなの時計を見れば済む話なのだが、日曜日の夕方は極力時計を見たくなかった。時間の進みを気にしたくない。ただぼんやりとしていたかった。
明日が来たら、また、僕は頑張らなきゃいけない。
誰とも会話しない教室。
透明な僕。
ひとりぼっち。
誰かの笑い声。
悪口。
陰口。
消えろ。
ばか。
汚い。
うるさい。
怖い。
やだ。
嫌われたくない。
明日のことを考えるとどうしても憂鬱な気分になってしまう。ぎゅっと目を閉じ暗闇の中に思考を落とす。それはまるで深く暗い海の底に潜るかのように。魚なんていないほどの深い海の底。光も届かない。見えるのは真っ暗な世界と真っ黒な自分自身。
その時。誰かが僕を呼ぶ声がした。誰だろう。母や父は夜勤のはずだし。辺りを見渡すと、部屋の真ん中に白く光る扉が現れたことに気が付いた。
これは夢の中?
いや、違う。部屋は暑苦しいし、窓の外は見慣れた夕焼けだ。体を預けているベッドだっていつもの感触。これが妄想なら僕はとんだ芸術家だ。
しかし、扉は動かない。目を擦っても消えない。それはいつの間にか現れ、それでいて、ずっと前からそこにあったみたいな、そんな扉。僕はむくりと起き上がり、それに近づいた。間近で見れば見るほど、扉は現実のものになっていき、恐々とドアノブを触ってみると、それが妄想ではないのだと実感できた。
どうしようか。開けてみようか。でも。開けたら怒られるかもしれない。誰に。分からない。開けてみたい。躊躇しながらも、結局僕は扉を開けた。
すると、そこには見慣れぬ丘が広がっていた。金色の空の下に青々とした草が生え揃っており、それらが月に照らされている。僕は草の上に裸足で一歩を踏み出した。なんとも言えない感触が足裏に伝わる。しかし、丘の上はとても静かで心が落ち着いた。体を全て扉の内側へ持ってくると、扉は自動的に閉まり、その姿を消した。跡形もなく扉は消え去ってしまった。部屋へはもう帰れないのか。帰るにはどうしたらいいのだろう。僕は不安な気持ちになりながらも目の前の景色に目を向けた。
見渡す限りの青い芝生。頭上には無数の星が輝いている。けれど、何の音も聞こえない。平穏で静寂な世界。すごく寂しくて、そこにずっと留まっていると不安になってきてしまう。そんな場所だった。
その時、また、声が聞こえた。後ろの方から聞こえる。丘のもっと上の方だろうか。振り向くと、そこには教会が立っていた。クリーム色の少し古びた小さな教会だ。僕は声のする方へと進んで行った。