私はおじいちゃんの顔を知らない。



父が小学生のころ、


おじいちゃんは、W不倫をして


おばあちゃんは、父と叔父を連れ家を出た。



今も遺影の横に飾られている、家を出たばかりの頃のおばあちゃんの写真。


二人の子供の肩に手を回し、虚空を睨んだ表情にはっきり写る


強い意志と、深い悲しみ。


大正生まれの強い女の決断。



私は、ずっとおじいちゃんが不倫相手を選んで、


おばあちゃんや父を捨てたのだと思っていた。



つい先日、父が言った言葉に衝撃を受けた。



「オヤジは別れたくなかったんだよ。

お前が産まれた後、一度オヤジに会った時、言ってたよ。」と父。


”俺はアイツと別れたくなかったんだよ。そうだろう。


アイツと別れて○○と一緒になったって、俺何もいい事ないだろう。


お前らとも会えなくなるし。俺の家庭はそこにないんだから。


だからアイツに、必ず○○と別れるから


もうしばらく待ってくれ、って言ったんだよ。それをアイツは


冗談じゃない、って聞かなかったんだよ”



・・・・・



晩年、祖母はある俳優さんがとてもお気に入りで、


その人がCMに出る度に、「素敵ねぇ。」と笑っていた。


ある日ポツリと


「あの俳優さんね、アンタのおじいちゃんに似てるのよ。」


と私に言った、祖母の顔を見て、


「あぁ、この人はまだおじいちゃんのことが好きなんだ。」



と思った。


おばあちゃん、、、二人の息子を独りで育て上げたカッコいい女だけど。


その時、もう少しだけ素直になってたら、


あの俳優さんのCM、おじいちゃんと一緒に観てたかもしれなかった。



もう、この世にいない二人の悲しいすれ違いに涙が出た。