この記事では、競泳という競技としてのスピードについて書いています。
しかし、スイミングスクール人口全体から見ると、ジュニアの選手コース所属は超少数派です。水泳自体は身近なスポーツなので、「水泳ってどんなスポーツ!?」となることはありませんが、なまじよく知られているだけに、話が噛み合う日は永遠に来ないということは頻繁に起こります。
例えば、Kさん(高2)は、選手生活が10年になったこともあって慣れたものです。いろんなバージョンがあります。
「水泳部なんだー!私も昔やってたんだ、バタフライまでいったんだよ〜」
「えーすごいね(ニッコリ)」
「水泳部なんだー!私やってたんだけど、平泳ぎで辞めたんだよね。バタフライ、泳げる?」
「一応ね。得意じゃないけどね〜(ニッコリ)」
「何の種目で出るの?100メートル自由形!?自由形って何?あ、クロールなんだ。え!100メートルも泳げるの!?!?すごっ!」
「ありがとー(ニッコリ)」
たまに、周りがツッコんでくれることはあります。
いやいや1フリは短距離種目だから!
競泳選手からすると、ナンカチガウ感はすごいのですが、10年選手はすっかり慣れたもので、いちいち説明したりはしません。
というわけで、大手スイミングスクールの進級表を見てみましょう。全国チェーンなので、周りにこのスクールに在籍していた子は、中学も高校もたくさんいます。

スイミングスクールを「卒業」する第1段階は3級だと思います。学校の体育ではバタフライはしないので、平泳ぎの泳ぎ方を習得した時点で、目的達成→退会という流れです。
しかし、バタフライは「ビジュアル枠」なので、バタフライが泳げる!ということにステータスや需要があります。また、最後まで続けた達成感もあるので、1級が次の辞め時ということになります。
Kさんの体感でも、バタフライまで合格した子は、それを言う傾向が強いようです。
さらに続ける子は、少数派になるので、思い出をわりと熱く語ってくれることがよくあります。「タイムチャレンジ級」に進んだ子は、学校の体育で選抜され、小学校代表として記録会に出た経験もあったりします。
しかし、上の表を見てわかる通り、メドレー以外の種目は、25メートルのタイムです。だから、「何秒?」と聞かれるときは、たいがい25メートルのタイムを指しているということに、Kさんは中学生くらいで気づき始めました。Kさん自身は25メートルのタイムで進級という経験が無く、ジュニアの競泳選手のタイムに、25メートルという概念は、練習中しかありません。
「25メートルのクロールかな?14秒だよー」
たいがいめちゃくちゃびっくりしてくれるそうです。
ちなみに、競泳選手としては特に速くないです。
そこで、次に出る話題は
「じゃあRってこと!?」
R級というのは、異次元の速さだと思われがちです。
R1ともなれば、R1の人っているんだ!?と驚かれるレベルです。

25メートルではなく、50メートルか100メートル、メドレーも200メートルがあります。
R級にたどりついた人は、普通に考えて「めちゃくちゃ水泳が得意な人」です。Kさんは、中高通じて、このスクールに通った同級生でR級だった人を、男女1人ずつしか知りません。
しかし、中高生の競泳選手は、R1を超えている人が大多数です。超えているというか、大幅に上回ります。
Kさんでも、100メートル自由形は10秒以上、200メートル個人メドレーは15秒以上上回っています。
以下は、日本水泳連盟の競泳の資格級です。
15〜16歳女子自由形50〜200m
クラス | 50m | 100m | 200m | |
---|---|---|---|---|
AA | 15 | 24.86 | 54.08 | 1:57.10 |
14 | 25.25 | 54.84 | 1:58.57 | |
13 | 25.64 | 55.61 | 2:00.05 | |
12 | 26.03 | 56.37 | 2:01.53 | |
11 | 26.42 | 57.14 | 2:03.01 | |
A | 10 | 27.26 | 59.01 | 2:07.17 |
9 | 28.11 | 1:00.88 | 2:11.33 | |
8 | 28.95 | 1:02.76 | 2:15.50 | |
7 | 29.80 | 1:04.63 | 2:19.66 | |
6 | 30.64 | 1:06.51 | 2:23.83 | |
B | 5 | 31.49 | 1:08.38 | 2:27.99 |
4 | 32.33 | 1:10.25 | 2:32.15 | |
3 | 33.18 | 1:12.13 | 2:36.32 | |
2 | 34.02 | 1:14.00 | 2:40.48 | |
1 | 34.87 | 1:15.88 | 2:44.65 |
女子15歳のR1級は34秒2なので、2級のタイムを超えていません。
前の記事で、
「たとえ1級でも、資格級を得られるスピードというのはけっこう速い」
と書きましたが、この大手スイミングスクールのほぼR1級だと考えれば、いかに速いかイメージがつかみやすいと思います。競泳は、純粋に中学校で部活動として取り組むより、クラブチームの選手コースで練習している生徒が、中学校の名前で出場するケースが多いです。中学校に水泳部があるのは、住まいの都道府県では珍しいので、全国中学が来年で最後なのは、そういった実情も踏まえています。
スイミング自体は人気の習い事なので、選手コースならではのおもしろさも、伝わればいいなと思います。