コイバナ
恋花

「絡まった糸を解くように」



私の薬指で
静かに輝いていた
見えない指輪が


愛しています
結婚してください

と言う言葉と同時に
形になり


それはまた


私の薬指へ
結婚の約束の証として
差し換えられ
新たな輝きを放ち始め
ました



私はこの時
あなたの色に染まりたい
心から思いました




**




新しい春を迎え
私は教職ではなく
企業への道を選び
社会を歩き始めていました


いろいろと考え
社会を知ってからでも
教職の道は遅くはないと
思いました



彼との手紙のやり取りも
そのまま続けています

夜8:05の電話は
企業に就職した私の
帰宅時間が遅いので
土曜日の夜と
日曜日にかけてくれる
ようになりました


電話や手紙で伝えるのが
難しいことは会った時に
話すことにして
いました



私には
心に絡まっている糸があり
それを解がなければ
結婚へ進めない気持ちが
ありました


次に会った時に
話せたら…
そう思いました



**



彼が
形にして差し換えて
くれた指輪は

いつも私の薬指で
小さな虹を作って
輝いていました



彼がこれからの事を
一つ一つ
決めて行こうと言いました


私は
心に絡まった糸のことを
話すことにしました



私「あのね、私、
結婚して、もしも
あなたと喧嘩をしても
帰る実家がないと
思うの。」


彼「うん。
ほかには?」


私「もしもね、
赤ちゃんが産まれても
友だち皆んなのように
お里帰りすることが
できないと思うの。」


彼「うん。
それから?」


私「だからね、
私はあなたと結婚したら
たとえ喧嘩しても
赤ちゃんを産んでも
ずっとあなたのそばに
いることになるの。」


彼「うん。
そうだね。」


私「だから…
困らない?」


彼「なんで困るのか
逆に分からないよ。

俺は京子ちゃんが
家出したくなる様なことは
絶対にしない。

赤ちゃんが産まれて
くれたら
俺が休暇を取って
産後の世話をする。

もし難しいようだったら
必ず他に良い方法が
あるはず。

だから、京子ちゃんは
ずっと俺のそばにいる。

夫婦だよ、
それが当たり前の事
だと思うよ。


彼はそう言いました


私は既に結婚をしている
多くの友だちから
よく実家に帰る話しを
聞いていたので

お嫁に行っても
そういうものだと
思っていました。


だから
私の母が再婚をすることに
なったことで
私には帰る所がないと思い
彼に迷惑をかけるのでは
と思ってしまいました


でも彼の言葉に
心の中で絡まっていると
思っていた糸が
するすると解けて行くのを
感じていました


そして気付きました
糸を絡ませているのは
私だということを。


彼は言いました


「なぜ駄目なのか
どこが悪いのか
そこばかりを考えるよりも

だったら
どうしたら良いのか
どうしたら良くなるのか
そこを考えよう。

俺は
京子ちゃんを幸せにしたい
だから幸せにするために
どうしたら良いかを
必ず考えるから
絶対に一人で悩まないで。

前にも言ったよね。
俺のいない所で
一人で泣いたり
傷ついたりしないで欲しい
って。
それと同じことだよ。」


と、言いました



私は彼の言葉に
とても素直に頷き

「ありがとう」

と、言いました





つづく







**・*・*・*・*・**


一人で考えると
大きく感じることでも

二人で考えると
とても小さい
何でもないことのように
思えてくるのね

不思議ね




女はであれ
賢く優しいとなれ

**+.° °.+**









一瞬


一生