コイバナ
恋花
「初めてのデート」
私の手のひらに
そっと置かれたのは
白い水中花
でした
「あ、水中花!
白いお花とっても嬉しい!
ありがとう」
私は、驚きながら嬉しくて
こんな風に言ったと
思います
すると彼は満面の笑みで
もう片方のポケットから
また何か取り出すと
「もう1つあるんだ」
そう言って
私の手のひらの
白い水中花に重ねて
置きました
少し小さな
白い水中花でした
そして
こう言いました
「色んな花があって
迷ったんだけど
京子ちゃんを思うと
白い花
そんな感じがするから」
私は
とても嬉しかった
あの人混みの中で
お店を見つけてくれて
私を思って
選んで買ってくれた
きっと
どの色にしようか
京子ちゃん喜んでくれるかな
そう思って大切な時間を
使ってくれたのね…
玄関先、小さな声で
話しているけれど
愛犬のバニーちゃんが
気付いて吠え始めた
すると彼は急いで
「そんなに喜んでもらえて
本当に良かった!
じゃあ、また明日、
初めてのデートだよね!」
そう言うと
「おやすみ!」と言って
優しい笑顔を残し
走って行きました
彼は
ニ軒先の角を曲がる前に
振り向いて
まだ私が見ていることを知り
手を振りました
**
私の机の上に置いた
白い水中花
少し大きな白い花と
少し小さな白い花とが
水に揺れながら
ゆっくりゆっくり
花を開いてゆく
まるで
少し大きな花がMくん
少し小さな花が私みたい
仲良く花開く様子を
微笑ましく
とても嬉しく
時の経つのも忘れて
じっと眺めていました
**
次の日、日曜日
約束の時間に
駅で待ち合わせ
サークル活動で会っていても
2人のデートは初めて
彼は先に来ていて
「おはよう!」と
明るい笑顔で迎えてくれた
「昨日はありがとう
2つの白い水中花
綺麗に仲良く
花を開いてくれたの」
私も笑顔でそう言う
彼は「良かった!
京子ちゃんが嬉しいと
自分もすごく嬉しい!」
いつも
そう言ってくれる彼
そして
「今日は映画を観て
バンドの皆んなと時々行く
フォーク喫茶に
一緒に行きたいと思ってる
どうかな?」と彼は
楽しそうに聞きました
私「うん!すごく楽しみ」
と言いました
**
博多中洲の映画館
洋画、邦画
沢山のポスターが貼られ
大きな看板は
まだ手描きでした
今では
とても信じられませんね
2人でどの映画を観ようと
見ていると
Mくんが「卒業」どうかな
サイモン&ガーファンクルの
サウンド・オブ・サイレンス
挿入歌だよ
主役は
ダスティン・ホフマン
その映画に決めて
飲み物とポップコーンを
買って映画館に入り
ました
優秀な青年の苦悩と心の葛藤
恋に気付き
純愛を貫くことが
出来るか…
私はドキドキしながら
観ておりましたら
隣りでスースーと寝息…
昨日、秋まつりで
あの人混みの中を
私のために水中花を探して
とても疲れたのね…と
思いました
クーラーが効いていて
腕を組んで眠っていたので
そっとハンカチを掛け
ました
彼が言っていたように
いくつかの
挿入歌もとても素敵で
とても心に残る映画となり
ました
彼は途中で目が覚めた様で
映画館を出てから
照れながら「ありがとう」
とハンカチを返して
くれました
**
それから歩いて
天神にある彼の好きな
フォーク喫茶「照和」に
行きました
甲斐よしひろさん
チューリップ
海援隊
長渕剛さんなどを
生んだライブハウスでした
彼は「ここでライブを
させてもらうのは
凄く難しいんだよ。」
いろいろな事を
目を輝やかせながら
楽しそうに話してくれます
彼のおすすめの
「エビピラフ」を
食べました
私は、気付きました
「彼が嬉しそうで
楽しそうにしていると
私もとっても嬉しい」と。
彼は
まつげがとても長くて
二重まぶたの綺麗な目が
話しながら時々パチパチと
瞬きをするところ
なんだか可愛いなとも
気付いた
初めてのデートでした
つづく
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ひゃくにちそう
百日草
(ジニア)
花の中心にある
黄色のもう1つの花
筒状花
昼咲き月見草
柔らかな色の4枚の花びら
細く十字の形をした
めしべ
優しいクリーム色の
おしべ
昼咲き月見草が
「私も百日草のように
立派な筒状花をもった
綺麗な花になれるかな…」
花は
人間みたいに
そんな事は思わない。
自分に与えられた
力の全てを尽くして
懸命に生きる
だから
どの花もとても美しく
とても愛おしい存在に
なれる…と思う
女は花であれ
賢く優しい花となれ
**+.° ♡ °.+**
恋は一瞬
愛は一生