コイバナ
恋花
「白い水中花」
秋まつり賑わう通り
人の波に押されながら
「大丈夫?!」
「うん…ありがとう」
Mくんの手のぬくもりを
初めて知りました…
しばらく黙って歩いて
いましたが
Mくんに何か見たいもの
ないの?と聞かれて
私は
「水中花が見たいの」と
答えました
Mくんは
「えっ?!なに?」
賑やかで聞こえない様で
耳を傾けてそう言いました
私はもう一度
「水中花が見たいの!」と
もう少し大きな声で
言いました
Mくんは
「すいちゅう…何?」
私
「すいちゅうか!」
Mくん
「すいちゅうか?
それ何?」
私
「水の中で開く花なの」
Mくん
「ああ!薄い紙みたいなので
出来てる花
あれ、すいちゅうかって
言うんだね
うちにもあるよ」
こんな感じで話していると
背中をトントンされて
サークルの友だちが
「リーダーが左の休憩所に
行くよ、って」
と伝えてくれました
人混みをかき分ける様に
休憩所に向かうと
最初は皆んなで一緒に
歩いていたのに
徐々にばらばらに
なってしまっていたようで
集まるのに少し時間が
かかりました
参道に並ぶ700店もの露店
1週間で100万人を超える
大きな秋まつり
スマホもない時代
はぐれると大変です
みんなを待つ間
女の子たちは
楽しくおしゃべりして
います
しばらくして
サークルのリーダーが
「1番混む所を抜け出たから
これからは
それぞれ自由に見て回ろう
10時に駅集合!」
と言いました
サークルで仲良しの
女の子たち6人
「京子ちゃん行こう!」と
言ってくれたので
私はそっとMくんを
見ました
するとMくんも
私を見てくれていて
目が合うと
にっこりとうなずいて
くれました
沢山の露店を見てまわり
途中でカキ氷を食べたり
焼き立ての
梅ヶ枝餅うめがえもちを
食べたり
気が付くと
おしゃべりしながら
食べてばかり
いました
私の見たかった水中花の
お店は分からずに
とても残念でしたが
集合時間も近いことから
「今年は諦めよう…」と
思いました
でも、皆んなで賑わう
秋まつりは
とっても楽しかったと
思いました
駅に着くと既にリーダーや
他の人たちも数人
集まっていて
MくんもRくんたちと
楽しそうに話をして
いました
全員が集合して
電車に乗り込みます
みんなが座席に着くと
リーダーが
「ビールでも飲みたい所だが
帰り着くまで
がまんしてくれよ
特にSとYは
隠れて飲むなよ〜!」と
また楽しいことを言って
皆んなを
笑顔にしてくれます
私の隣りに座っている
密かにリーダーに憧れる
友だちはにこにこと
リーダーを見ています
海のゴミ拾い
公民館の掃除
野良猫、野良犬の
里親探し
夏休み冬休み小学生の
レクレーション等々
18才–25才までの独身で
(学生、社会人)
ボランティア活動に
喜んで参加している人たち
私はこのサークルの
メンバーが大好きでした
私はここで
人の優しさや思いやり
喜びも悲しみも分け合う絆
与える幸せなど
学んだように思います
**
駅に着きました
家まではMくんが歩いて
送ってくれました
何を話したのかは
覚えていませんけれど
きっと
楽しいこといっぱい
話したのだと思います
もうすぐ私の家と
いう所で
「水中花の店、見つけた?」
とMくんが聞きました
私は
お店を見つけられずに
水中花は見られなかったと
言いました
すると
「そうか…残念だったね…」
と言いながら
ポケットから何か取り出すと
手をグーにして
「はい。プレゼント。
手を出して」
Mくんはいたずらっぽく
笑っています
私の手のひらに
置かれたものは
「白い水中花」でした
つづく
・**・*・*・*・**・
彼岸花
しろばなまんじゅしゃげ
(白花曼珠沙華)
花言葉
思うは
あなたひとり
女は花であれ
賢く優しい花となれ
**+.° 🤍 °.+**
恋は一瞬
愛は一生