コイバナ
恋花

「秋まつり」



友だちが私に見せた写真は
私がお付き合いを
始めたばかりの
Mくんだったのです


友だちは心臓に悪いよと
言いながら胸を撫でて

「んー、これは難しいけど
本当のことを言うしかない
だって、京子の彼氏なんだよ
ね⁈ そう!
どんなに好きでもさ
仕方ないんだから。
写真返して、私がちゃんと
言うからね
心配しないで、ね!うん!」


友だちはこんなような事を
いろいろと言いながら
自分で自分に
返事をしていました


私はMくんにこの事を
言った方が良いのか
それとも何も言わない方が
良いのか迷いました


どちらにしても
Mくんの住所を勝手には
教えられない、と
思いました


Mくんに会う日曜日までに
考えようと
思っていました


**



翌日のこと
学生課で用事を済ませて
歩き出したとき
後ろから「こんにちは」と
声がしました


T子さんでした。


T子さんは友だちと
アルバイト先が同じで
友だちの友だちで
顔は知っているけれど
今まで挨拶程度でした


T子さんは
「Mくんとあなたのこと
聞いたよ
なんで、あなたなんだろ」


私は返す言葉がなくて
黙っていました


T子さんは
「私より綺麗だったら
諦めもつくけど
なんかすごく腹が立つの」


私は
ますます何も言えずに
黙ったままでした


そこに学食で会うはずの
友だちが来ました
「京子、何してるの?」と
私の正面側から
T子さんの後ろからという
形です


友だちの方に振り向いた
T子さん


私は友だちの顔を見たとたん
涙が込み上げてしまい…

友だちは驚いて
「京子、どうした⁈」と
私に駆け寄りました


友だちは
「T子、何を言ったのよ!」
と言い
その後の話しは
覚えていません


**


学食の自販機で
熱いコーヒーを買ってくれた
友だちは
「京子、ごめんね
今日、T子のこと話そうと
思っていた所だったのに」


友だちは
写真を返しながら
Mくんと私のことを伝えると
T子さんは写真を握り締めた
ということでした…
でも「分かった」と言い
その後、黙ったままで
友だちはとても
いやな感じがして
気になったという事でした


でも…私は
確かにT子さんは美人で
とても綺麗ですから


ほんと…そうですね、と
素直に思いました



**



土曜日
夜はサークルの皆んなで
秋まつりに
行く事になっていました


大きく広い参道が
人でいっぱいで
押されて歩けないほどです


Mくんは参加できないと
言うことでしたが
用事が急遽日程変更になり
一緒に行けるように
なりました


サークルの男の人たちは
女の子たちを守るような形で
前や横、後ろと囲んで
歩きました



夜の露店の電球が
所狭しと並ぶ店先を
賑やかに照らしています


今と違って
何を見ても
珍しいものばかりの
時代でした


露店を見るだけでも
とても楽しくて


私は水中花のお店を
人の隙間から覗くように
探していました


すると
後ろから急に押されてしまい
倒れると思った瞬間に
手をぎゅっと引っ張られて
倒れずに済みました


見上げると
Mくんでした
「大丈夫⁈」

「うん…ありがとう」


Mくんは握った手を離さず
そのまま歩きました


Mくんの大きな手と
ぬくもりを
初めて知った秋まつり
でした






つづく





・**・*・*・*・**・

彼岸花

静かで何もない道に
燈りが見えた
そんな感じがするね






女はであれ
賢く優しいとなれ

**+.° ❤️ °.+**














一瞬


一生