コイバナ
恋花

「写真の人…」



Mくんは真剣な表情で
そう言うと
紙袋を差し出し
ました



私は…



まるでコスモスの花を
もらった時のように
両手を出して
受け取りました

「ありがとう」



キラキラと
眩しい光を浴びて
小さな恋の花が開いた
瞬間かも知れません



流星群を観に行った
あの夏のキャンプで
大雨というハプニングが
なければ…


Mくんの
タータンチェックのシャツを
借りることもなく
話すこともなかった
でしょう



御縁というものは
本当に不思議なものだと
思います




Mくんは
「ああ、良かったー!
ありがとう!」と
言いました



 それから
しばらく無言で歩いて
いましたが
急に立ち止まると


「付き合ってください」と
前を向いたまま
そう言いました


いきなりだったので
私は「……」


するとMくんは
「返事、急がなくていいです」

「でも…毎日待ってる」

そう言いました。



私は
ちょっと笑いそうに
なりました



「本当に私?
私でいいの…?」


Mくん
「はい。京子ちゃんが
好きです!」と
きっぱりと言われて


私は
その言葉で急に胸が
ドキドキしてしまいました
顔が真っ赤になるのも
自分で分かりました


私は
「お返事、
今でもいい?」


Mくん
「はい!」




よろしくお願いします」
と言いました


Mくん
飛び上がるように喜んで
また走り出して…
まるでマンガのようだと
思いましたけれど



秋なのに
まるで春みたいに
風が優しくて
心があたたかくて


いつまでも
忘れられないシーンです



**


Mくんは
私の家の玄関前で
「また、連絡します!」
そう言って
走って帰りました


やっぱり
よく走る人…笑



翌日
友だちにMくんと
お付き合いすることを
話しました


友だちは
お昼に食べていた
パンのマンハッタンを
喉に詰まらせそうなくらい
驚きました


Mくんのことは
話しようがなくて
何も話していませんでした
から


友だちは
「だからブルーさんのこと
ときめかなかったのね」
そう言いました


私は
「そうじゃなくて
Mくんとブルーさんは
何も関係なくて…」
と言いながら

自分で
「え⁈そうなの?私」
「いや、やっぱり違う」
と自問自答しました


友だちが
「いや、いいの、いいの!
京子に彼氏が!
とにかく良かった!」
まるで
姉のように喜びました


友だち
「ね、写真ある?」

「写真は持ってないよ」

友だち
「どんな人?カッコイイ?」

「それとも性格がいい?」

「ちっとも分からないから
情報ちょうだい!」


「ほんと、そうだものね
もしかしたら
学祭に来てくれるかも
知れないけれど」

友だち
「それはいいね!
絶対に紹介してよ
約束だよ!
ああ、楽しみー!」
というような事を言ったと
思います


**


それから
2、3日後のことです


友だち
「京子、ちょっと写真
見てくれない?
T子のなんだけどさ
高校生の時からずっと
好きだった人で
話しを聞いていたら
京子の地域と同じみたい
なのよね

渡したい物があって
住所を知りたいらしいの
知ってるかなと思って」
そう言いながら
1枚の写真を私に渡し
ました



その写真には
体育館のような所で
白いスーツを着て
グランドピアノを
弾いている人の姿が写って
いました



顔が小さく写っているので
分かりにくい…
けれど


まさか?!
Mくんに
似ています


私は友だちに
「名前は聞いてる?」

友だち
「Mくんって言ってたよ」


心の中で「やっぱり…!」

私が黙っていると

友だちが
「やっぱり知らない?」


「写真の人…知ってる」



本当にウソみたいな偶然に
何とも言いようのない
思いでしたが


友だちに話すと
「京子と話すと
驚かされ過ぎて
心臓に悪いよー」
と言いました





つづく





・**・*・*・*・**・


ランタナ

5月に咲き始めて
秋も咲いている
可愛い花**



少し愛して

長く愛して






女は花であれ
賢く優しい花となれ

**+.° ♡ °.+**










一瞬

一生