コイバナ
恋花


「コスモスの花粉」






私の心は
甘く優しい恋の風
ゆれているよう
でした…



でもそれは
とても
ほのかに…静かに…




キャンプに行った時
青い空の
日が沈むのを見ながら


その青が次第に
濃くなり
綺麗なロイヤルブルーに
見えたとき


ふっ…と
あの方を思い出して
しまったのです…



でもそれは
すぐに
濃紺の夜空になり


数え切れない流れ星が
降り注ぐように流れては
消えて


願い事もせず
その美しさに
ただ
見入っていただけの
私でした







お盆が過ぎて
その頃は
まだ精霊流しがあり
海岸の清掃を
サークルですることに
なっていました




私はMくんに借りた
ボタンダウンのシャツを
キャンプから帰るとすぐに
洗濯をして
いつもよりも
丁寧にアイロンを当て
綺麗に包んで
返す日を待ちました




海岸清掃が終わり
ミーティングをするので
そのまま公民館へ



ミーティングが始まるまで
時間があるので
私はMくんに
お礼を言ってシャツを
お返ししました



Mくんは
シャツを受け取ると
「新品みたいになってる!」
と大げさに言って
笑いました


なんて明るい人なのかしらと
私も一緒に笑ってしまい
ました



するとMくんが
「朝の列車、いつも2両目に
乗っていますよね」と
いきなり言いました


私は
「あ、そうね…」


するとMくんは続けて
「いつも白いキャンバスを
抱えていますよね」



私は
「だいたい毎日かな、
どうして知ってるの?」


Mくんは
「僕は3両目で改札口の前
なので
見えるんです」


私は
「ああ、そうなのね」


Mくんが
「R先輩が幼なじみって」


「そう、Rくんとは
小学校から一緒なの」



Mくん
「R先輩が京子ちゃんって
呼んでいるの聞いて
サークルに入る前から
名前を知っていたんです」

「高校生の時から
ずっと見ていたんですよ
気付かなかったでしょ?」


「ああ…
そうだったんだね…」

言いようがなくて
言葉がそれ以上には
出て来ませんでした



するとMくんは
「流れ星の願い事
やっぱり叶った!
こんな風に
話してみたかったから
ずっと前から」


「それに大雨のオマケまで
付いていて
僕のシャツを借りてくれた
すごく嬉しかったんです」


Mくんが
とても楽しそうに話すので
まるで
誰か他の人のことを聞いて
いるみたいな感じがして
なぜか私もつい笑顔に
なっていました



でもこれは
もしかしたら
告白されているの?



そう思うのに
時間がかかりました



まさか
1つ年下の人に?
高校生の時から?
全く思いもよりません
でした



それに私は
自慢できないけれど
綺麗でも
モテるタイプでも
決してないのです



きっと私の聞き間違い
思い過ごし。




やがて
ミーティングが始まり
秋まつりの内容などが
リーダーから説明されて
作業割り当て等が
話し合われました…




ミーティング後に解散となり
私は友達と話しながら
歩いていると


そこへMくんが
「京子ちゃん送りますよ!」
オレンジ色の
自転車に乗って
来ました



友だちが
「京子、せっかくだから
送ってもらいなさいね」
と笑って言いました




私が戸惑っていると
リーダーが
「こらこら!
2人乗り禁止じゃ!」
と言って下さいました


Mくんは
「やっぱりダメですか!」と
明るく笑いました





それから数日が過ぎた
ある日


「玄関にお友だち?が
来てるけど…」と

裏庭で
愛犬バニーちゃんの
ブラッシングをしていると
 母が呼びにきました



急いで玄関に行くと


そこには
白や淡いピンクの
コスモスの花を
いっぱい抱えたMくんが
立っていました



「Mくん…」



Mくん
「コスモスが
いっぱい咲いたから…
好きかなと思って」と
照れたように
言いました





彼の
白いスニーカーの先には
コスモスの
黄色い花粉が
たくさん着いていました








それを見た

私の胸は・・・







つづく







・**・*・*・*・**・


コスモス

薄紅の秋桜が秋の日の
何気ない陽溜りに
揺れている…

明日嫁ぐ私に苦労はしても
笑い話しに時が過ぎるよ
心配いらないと言った




さだまさしさん作詞作曲
山口百恵さん
秋桜(コスモス)



とても好きな歌です








女は花であれ
賢く優しい花となれ

**+.° ♡ °.+**











一瞬


一生